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宅地建物取引士の事務「37条書面への記名」について詳しく解説!

宅地建物取引士の独占業務「37条書面への記名」について

宅地建物の取引に関する契約が成立しても、その契約の内容が不明確であれば、後日になって当事者間で紛争が生じる可能性があります。
このような事態を防止するために、成立した契約の内容のうち主要なものを書面に記載させることによって、契約内容の明確化を図り、また購入者などにも注意を喚起させようとするものです。
この書面を宅建業法第37条書面といい、いわゆる売買契約書のことを指します。

37条書面は、先の重要事項説明書の内容との整合性を確認する目的もあり、どのような内容にしなければならないかを確認しておきましょう。
今回は、宅地建物取引士の事務の1つ「37条書面への記名」について、お話し致します。

書面の交付義務

【宅地建物取引業法第37条第1項】
① 宅地建物取引業者は、宅地建物の売買または交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
② 宅地建物取引業者は、宅地建物の売買または交換に関し、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方および代理を依頼した者に、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
③ 宅地建物取引業者は、宅地建物の売買または交換に関し、媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

【宅地建物取引業法第37条第2項】
① 宅地建物取引業者は、宅地建物の貸借に関し、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方および代理を依頼した者に、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
② 宅地建物取引業者は、宅地建物の貸借に関し、媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

宅地建物取引業法第37条の規定に基づき交付すべき書面は、同条に掲げる事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができます。

また、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づく宅地建物取引業法の改正により、2022年(令和4年)5月18日以降は。書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、書面を交付すべき相手方の承諾を得たうえで、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であって宅地建物取引士の記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することも可能となりました。

売買や賃貸借は、不要式の諾成契約です。
そのため、契約書等の書面を作成しなくても、当事者の意思の合致さえあれば契約は成立します。
しかし、宅地建物取引業者に対しては、契約の成立後その内容を書面に作成し、相手方などに交付することを義務付けています。

参考:宅地建物取引業法第37条(書面の交付)【e-GOV】

書面を交付しなければならない相手

(宅建業者の立場) 自ら売買・交換の当事者になった場合
(説明すべき相手) その相手方当事者 (※注1)

(宅建業者の立場) 売買・交換の代理をした場合
(説明すべき相手) その相手方当事者および代理を依頼した者

(宅建業者の立場) 売買・交換の媒介をした場合
(説明すべき相手) 両当事者

(宅建業者の立場) 賃借の代理をした場合
(説明すべき相手) その相手方当事者および代理を依頼した者

(宅建業者の立場) 賃借の媒介をした場合
(説明すべき相手) 両当事者

※注1
売買契約において買主となる宅建業者は、重要事項説明書の作成・交付の義務は負いませんが(自己に対するものになるため)、本条による書面交付義務は負うことになります。
決定事項を記載した契約書に買主の宅建業者の表示、宅地建物取引士の記名があれば、これを売主に交付することで足ります。

交付すべき時期

書面の交付は、宅地建物の売買または交換の当事者となった場合、売買や交換の代理または媒介をした場合においては、契約の成立後、遅滞なく行わなければなりません。
一般的な売買取引のように、売買当事者や媒介業者が一堂に会して契約締結を行う場合は、契約書に法定事項が全て記載され、宅建業者の表示と宅地建物取引士の記名があれば、この契約成立時に書面の交付も完了したことになります。

宅地建物賃借の代理または媒介をした場合においては、書面の交付について「遅滞なく」との規定はありませんが、契約書の交付による場合は。貸主・借主の署名押印など必要な手続きを経て、可及的速やかに交付しなければなりません。

宅地建物取引士の記名

宅地建物取引業者は、交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければなりません。

宅地建物取引士は、宅地建物取引に関する実用的な知識を有すると認められる有資格者であるため、売買や貸借の契約の内容やその法律上の効果を熟知していなければなりません。
こうしたことから、宅地建物取引士に、重要事項説明とならんで契約成立後における契約の内容について責任を持たせることとし、結果的に誤りのない適正な契約関係の成立を期そうとしています。

書面に記載すべき事項

宅建業法第37条第1項と第2項で掲げられている事項は以下のとおりです。

参考:宅地建物取引業法第37条(書面の交付)【e-GOV】

売買(交換)の場合に記載すべき事項

(1) 当事者の氏名(法人にあつては、その名称)および住所
(2) 物件を特定するために必要な表示
(3) 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
(4) 代金または交換差金の額、その支払の時期および方法
(5) 物件の引渡しの時期
(6) 移転登記の申請の時期
(7) 代金および交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額ならびに当該金銭の授受の時期と目的
(8) 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
(9) 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときは、その内容
(10) 金銭の貸借(ローン)のあっせんに関する定めがあるときは、ローンが不成立のときの措置
(11) 不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
(12) 契約不適合責任またはその責任の履行について講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容
(13) 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

業法の解釈・運用の考え方

1 共有持分の特定
区分所有建物の所有持分を分譲する場合には、購入者が取得することとなる共有持分を契約書その他の書面において特定しなければなりません。
これを怠る場合には、本項の規定に違反することとなります。

2 買換え
買換え時において、依頼した物件の売却が行われないときの措置について、本条の規定に基づき交付すべき書面に明記することが望ましい。

3 新規物件にかかる工事竣工図の交付など
戸建住宅については、購入者への当該住宅の引渡し後すみやかに、当該住宅にかかる工事竣工図などの関係図書(給排水、電気、ガスなどの設備に関するものを含む)を当該購入者に交付します。

区分所有建物については、購入者への当該建物の引渡し後すみやかに、当該建物にかかる工事竣工図などの関係図書(給排水、電気、ガスなどの設備に関するものを含む)を当該建物の管理事務所、営業所その他の適当な場所において、購入者が閲覧できるようにしておきます。
この場合、当該工事竣工図などの関係図書がこれらの場所で閲覧することができる旨を本項に規定する書面等に付記しておきます。

4 宅地建物を特定するために必要な表示
宅地建物を特定するために必要な表示について書面で交付する際、工事完了前の建物については、重要事項の説明の時に使用した図書を交付することにより行います。

5 既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分などの状況について当事者の双方が確認した事項
当事者の双方が確認した事項は、原則として、建物状況調査など、既存住宅について専門的な第三者による調査が行われ、その調査結果の概要を重要事項として宅建業者が説明したうえで契約締結に至った場合の当該「調査結果の概要」とし、これを本条の規定に基づき交付すべき書面に記載します。
これ以外の場合については、当事者の双方が確認した事項は「無」として書面に記載します。
ただし、当事者の双方が写真や告知書などをもとに既存住宅の状況を客観的に確認し、その内容を価格交渉や担保責任の免責に反映した場合など、既存住宅の状況が実態的に明らかに確認されるものであり、かつ、それが法的にも契約の内容を構成していると考えられる場合には、当該事項を当事者の双方が確認した事項として書面に記載して差し支えありません。

6 担保責任または当該責任の履行に関する措置
本号の規定により、契約時に交付する書面に記載すべき宅地建物の担保責任または当該責任の履行に関して講ずべき措置の内容については、次に掲げる事項とされています。

(1) 担保責任の内容について定めがあるときは、宅地建物の構造部分、設備、仕上げなどについて、その範囲、期間などの具体的内容

(2) 規則第16条の4の2第1号から第3号までに掲げる担保責任の履行に関する措置を講ずる場合には、次に掲げる事項
 ① 保証保険契約または責任保険契約にあっては、当該保険を行う機関の名称また商号、保険機関、保険金額および保険の対象となる宅地建物の契約不適合の範囲
 ② 保証保険または責任保険の付保を委託する契約によっては、当該保険の付保を受諾する機関の名称または商号、保険期間、保険金額ならびおよび保険の対象となる宅地建物の契約不適合の範囲
 ③ 保証委託契約にあっては、保証を行う機関の種類およびその名称または商号、保証債務の範囲、保証期間および保証の対象となる宅地建物の契約不適合の範囲
※当該措置の内容を記載することに代えて、当該措置契約の締結などに関する書類を別添することとしても差し支えありません。

(3) 規則第16条の4の2第4号に掲げる担保責任の履行に関する措置を講ずる場合には、次に掲げる事項
 ① 住宅販売瑕疵担保保証金の供託をする供託者の表示および所在地
 ② 特定住宅瑕疵担保保険の履行の確保等に関する法律施行令第7条第1項の販売新築住宅については、同項の書面に記載された2人以上の宅建業者それぞれの販売瑕疵負担割合の合計に対する当該宅建業者の販売瑕疵負担割合の割合

(注意)
「消費税等相当額」は代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ代金、借賃にかかる重要な事項に該当します。
代金の額、借賃の額について37条書面への記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課される消費税等相当額」を明記します。
また、交換については、「交換差金の額」に関する事項として、「当該交換につき課されるべき消費税等相当額」を明記します。

賃貸の場合に記載すべき事項

(1) 当事者の氏名(法人にあつては、その名称)および住所
(2) 物件を特定するために必要な表示
(3) 借賃の額とその支払の時期・方法
(4) 物件の引渡しの時期
(5) 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額ならびに当該金銭の授受の時期と目的
(6) 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
(7) 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときは、その内容
(8) 不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容

業法の解釈・運用の考え方

定期借地権設定契約である旨の書面化
(1) 定期借地権設定契約のうち、一般定期借地権にかかる更新などしないための特約は、公正証書などの書面によって、また事業用借地権の設定契約は必ず公正証書によってしなければ、取引当事者の意図に反して普通借地権と扱われてしまいます。
そのため、代理または媒介を行う宅建業者は、取引当事者に対し、その点の注意を喚起しなければなりません。
宅地譲渡特約付借地権については、書面によらずとも特約は有効ですが、将来の紛争を防止する観点から、宅建業者は、取引当事者に、書面化等するよう指導、助言しなければなりません。

(2) 宅建業者の代理または媒介により定期借地権設定契約が成立したときは、当該定期借地権などの内容を宅地建物取引業法第37条に規定する書面に記載することが望ましい。


(注意)
「消費税等相当額」は代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ代金、借賃にかかる重要な事項に該当します。
代金の額、借賃の額について37条書面への記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課される消費税等相当額」を明記します。
また、交換については、「交換差金の額」に関する事項として、「当該交換につき課されるべき消費税等相当額」を明記します。

電磁的方法による37条書面の提供

「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づく宅地建物取引業法の改正により、2022年(令和4年)5月18日以降は。書面の交付に代えて、電磁的方法による37条書面の提供ができるようになりました。

ただし、① 政令で定めるところにより、書面を交付すべき相手方の承諾を得たうえで、② 電磁的方法であって宅地建物取引士の記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供しなければなりません。

承諾の取得方法や電磁的方法による提供の場合に満たすべき基準その他の留意事項については、重要事項説明書を電磁的方法により提供する場合とほぼ同様の規制があります。

終わりに

今回は、宅地建物取引士の事務の1つ「37条書面への記名」について、お話し致しました。

37条書面は、後日になって当事者間で紛争が生じるような事態を防止するために、成立した契約の内容のうち主要なものを書面に記載させることによって、契約内容の明確化を図り、また購入者などにも注意を喚起させようとするものです。

宅地建物取引士は、宅地建物取引に関する実用的な知識を有すると認められる有資格者であるため、売買や貸借の契約の内容やその法律上の効果を熟知していなければなりません。
宅地建物取引士には、重要事項説明とならんで契約成立後における契約の内容について責任を持たせており、誤りのない適正な契約関係の成立を期そうとしています。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。

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