
昨年2024年1~3月期の大阪府、そして大阪市の不動産市況についてのレポートに基づいて、本ブログで私見を述べました。
あれから1年ほど経ちましたので、改めてレポートを参照し、分析してみましょう。
なお、昨年同時期の大阪府の不動産市況の特徴として、地域による格差の広がりがみられました。
中古マンションの取引平均価格が、大阪市(3,909万円)、大阪府北部(3,238万円)、大阪府東部(1,986万円)、大阪府南部(1,854万円)でした。
中古住宅の平均成約価格は、大阪府北部(3,681 万円)、大阪市(3,366 万円)、大阪府東部(2,128 万円)、大阪府南部(1,869 万円)でした。
土地の平均成約価格は、大阪市(4,520 万円)、大阪府北部(3,481 万円)、大阪府東部(2,245 万円)、大阪府南部(1,931 万円)でした。
また、昨年同時期には、住宅購入のための借入れの大半を占める変動型住宅ローン金利には上昇圧力がかかるが、既に変動金利を利用している購入者の負担は当面変化せず、新規利用者の金利は上昇する可能性が高まると、予想されていました。
そして、追加利上げの際は、既存利用者の変動金利も上昇し始めるが、利上げ幅は極めて小さく金融機関の貸出競争も続いており、当面の変動金利は1%未満の水準にとどまると予想されていました。
1年経過し、現在ではどのような見込みとなっているでしょうか。
今回は、2025年1月~3月期の大阪府の不動産市況について振り返り、お話し致します。
大阪府の中古マンション市場

2025年1~3月期における近畿2府4県の中古マンション(専有面積350㎡未満)成約報告件数は、5,483件と前年比で24.6%の大幅増となり、6期連続で前年同期を上回りました。
新規登録(売り出し)件数は、18,234件で前年比で2.7%増加し、9期連続で前年同期を上回りました。
前期比でも10.8%増加しました。
2025年1~3月期の平均成約価格は、3,150万円と前年比で5.3%上昇し、2020年7~9月期から19期連続で前年同期を上回りました。
前期比でも2.5%上昇しました。
新規登録価格は、3,005万円と前年比で7.9%上昇し、9期連続で前年同期を上回りました。
前期比でも5.2%上昇しました。
2025年1~3月期の中古マンション成約件数は、対象12地域中すべての地域が前年比で増加し、増加エリアは前期比で5地域増えました。
大阪府南部以外の11地域は2ケタ増となり、京都市は7期連続、大阪府北部は5期連続で前年同期を上回りました。
近畿圏全体に占める各エリアの取引シェアは、
1. 大阪市(29.3%)
2. 神戸市(12.0%)
3. 大阪府北部(11.4%)
4. 阪神間(11.2%)
5. 京都市(9.1%)
6. 大阪府東部(6.8%)
7. 大阪府南部(6.5%)
8. 兵庫県他(4.2%)
9. 奈良県(4.0%)
10. 滋賀県(3.3%)
11. 京都府他(1.6%)
12. 和歌山県(0.6%)
の順となりました。
前期比では大阪市のシェアが拡大する一方、大阪府北部や京都市の縮小が目立ちました。
成約価格は12地域中9地域が前年比で上昇し、上昇エリアは前期比で3地域増えました。
大阪府東部と兵庫県他、和歌山県は2ケタ上昇となり、大阪市は2015年10~12月期から38期連続で上昇し、中古マンション価格の強含み傾向は続いています。
一方で、神戸市は2020年4~6月期以来19期ぶりに前年同期を下回り、一部で変化もみられました。
エリア別の2025年1~3月期の平均価格は、
1. 大阪市(4,151万円)
2. 京都市(3,392万円)
3. 大阪府北部(3,333万円)
4. 阪神間(3,113万円)
5. 神戸市(2,840万円)
6. 滋賀県(2,426万円)
7. 大阪府東部(2,227万円)
8. 京都府他(2,071万円)
9. 奈良県(1,989万円)
10. 大阪府南部(1,931万円)
11. 兵庫県他(1,821万円)
12. 和歌山県(1,526万円)
の順となりました。
なお、近畿圏平均は、3,150万円です。
件数に価格を乗じた2025年1~3月期の成約報告ベースの近畿圏の取扱高は、前年比で31.3%拡大し、7期連続で前年同期を上回った。
12地域中すべての地域が拡大し、拡大エリアは前期比で3地域増えました。
すべての地域が2ケタの拡大となり、大阪市と京都市は7期連続、神戸市は5期連続で前年同期を上回りました。
中古マンションは市場拡大
中古戸建市場や土地市場と比べても、中古マンション市場の市場拡大は明らかです。
特に、近畿圏全体で約3割の成約件数がある大阪市が増加していることから、近畿圏の平均価格を押し上げています。
しかし、神戸市が前年同期比で下回る結果となっており、一過性の問題かどうかは今後の経過を見定める必要があるでしょう。
【成約価格の前年同期比】
1. 和歌山県(+27.5%)
2. 兵庫県他(+22.2)
3. 大阪府東部(+12.2)
4. 阪神間(+9.7)
5. 京都市(+8.5)
6. 大阪市(+6.2)
6. 奈良県(+6.2)
8. 大阪府南部(+4.1)
9. 大阪府北部(+2.9)
10. 京都府他(-1.6)
11. 滋賀県(-3.9)
12. 神戸市(-7.1)
売り出し件数も増加している
成約件数は増加し成約価格も上昇していることから、売り出し件数の増加がうまく市場拡大に繋がっています。
売り出し件数の増加は投機的な目的からではなく、実需の所有者が高齢化や相続などの事情から件数が増えていることも考えられ、今後も増加していくと考えられます。
経済事情の変化などにより需要が落ちたとしても、供給数は経済事情の変化とは関係なく増加していくことが考えられるため、今後の推移には注視していく必要があるでしょう。
大阪府の中古戸建市場

中古戸建住宅(土地面積50~350㎡未満)の2025年1~3月期の成約件数は、3,587件で前年比19.4%の2ケタ増となり、9期連続で前年同期を上回りました。
新規登録(売り出し)件数は、13,505件と前年比で9.6%増加し、9期連続で前年同期を上回りました。
2025年1~3月期の平均成約価格は、2,400万円で、前年同期と同水準となりました。
なお、前期比は3.6%上昇しました。
新規登録価格は、2,548万円と前年比で6.1%下落し、5期連続で前年同期を下回りました。
なお、前期比も1.5%下落しました。
成約・新規登録件数はともに増加が続いていますが、成約価格は横ばい、新規登録価格は下落率が拡大し、特に売り出し価格の低下が目立ちました。
2025年1~3月期の中古戸建住宅の成約件数は、12地域中すべての地域が前年比で増加し、増加エリアは前期比で3地域増えました。
増加エリアのうち、神戸市と滋賀県以外の10地域は2ケタ増となり、大阪府南部と兵庫県他は9期連続、大阪府北部と京都市、京都府他7期連続で前年同期を上回りました。
近畿圏全体に占める各エリアの取引シェアは、
1. 大阪府南部(14.1%)
2. 大阪府東部(10.4%)
3. 兵庫県他(9.3%)
4. 阪神間(9.1%)
5. 大阪市(8.6%)
6. 京都市(8.3%)
7. 大阪府北部(8.1%)
8. 奈良県(8.0%)
9. 神戸市(7.0%)
10. 滋賀県(6.7%)
11. 京都府他(6.7%)
12. 和歌山県(3.7%)
の順で、前期比では大阪市や阪神間のシェア拡大が目立ちました。
成約価格は、12地域中8地域が前年比で上昇し、上昇エリアは前期比で1地域増えました。
兵庫県他は6期連続で前年同期を上回る一方、大阪府北部は7期ぶりに下落するなど、件数が増える中で価格の動きには地域差がみられました。
2025年1~3月期の平均成約価格は、
1. 大阪市(3,624万円)
2. 大阪府北部(3,404万円)
3. 阪神間(3,319万円)
4. 京都市(3,206万円)
5. 神戸市(2,659万円)
6. 大阪府東部(2,136万円)
7. 京都府他(2,072万円)
8. 滋賀県(1,903万円)
9. 大阪府南部(1,786万円)
10. 奈良県(1,747万円)
11. 兵庫県他(1,536万円)
12. 和歌山県(968万円)
の順となりました。
なお、近畿圏平均は、2,400万円です。
2025年1~3月期の近畿圏の中古戸建の取扱高は、前年比で19.5%拡大し、12期連続で前年同期を上回りました。
12地域中滋賀県以外の11地域が拡大し、拡大エリアは前期比で2地域増えました。
大阪府南部と兵庫県他は9期連続、大阪府北部は7期連続で前年同期を上回りました。
中古戸建住宅は件数の増加が続くが価格は横ばい
また、売り出し件数も、13,505件と前年比で9.6%増加しました。
なお、昨年同期でも同様の動きとなっています。
中古戸建住宅の2024年1~3月期の成約件数は、3,003件で前年比21.1%の増加でした。
また、売り出し件数も、12,317件と前年比24.5%の増加でした。
中古戸建の成約件数、売り出し件数は、ともにかなり伸び続けています。
中古戸建市場は、活発であるとみてよいでしょう。
しかし、成約価格は、前年同期と同水準となりました。
なお、昨年同期も、ほぼ横ばいの数字で推移していました。
これは新築戸建の価格が上昇しているため、中古戸建が選ばれているとも考えられます。
後述しますが、建築コストが上昇し続けていることから新築戸建の価格も上昇しており、取引件数が減少しています。
一方で、中古戸建の成約価格は、横ばいの数字で推移しています。
中古戸建が成約している理由は、価格による影響が大きいと考えられます。
中古マンションと同様に、中古戸建も実需の所有者が高齢化や相続などの事情から件数が増えていることも考えられ、今後も増加していくと考えられます。
このまま、新築戸建の価格が上昇するようであれば、相対的に手ごろな価格の中古戸建が選ばれるようになるでしょう。
ただし、市場経済がインフレの状態である一方で成約価格が横ばいということは、実質的には評価は下がっているということになります。
新築戸建住宅は件数は減少しつつ価格上昇
これは中古マンションと同様の結果となっています。
しかし、成約件数では、中古マンションとは逆となっており、特に昨年2024年期は新築戸建住宅は大幅に減少しています。
市場経済がインフレになっている影響を受けて、建築コストが大幅に上昇しているためと考えられます。
また、特に新築戸建住宅は、断熱基準や耐震基準などの基準値が重視される傾向が強く、その傾向は今後もさらに強まると考えられます。
質の良い住宅を得ることが望ましいことはいうまでもありませんが、それに対するコストが大きくなっていることから、取引件数は今後も減少するものと考えられます。
大阪府の土地市場

土地(50~350㎡未満)の2025年1~3月期の成約件数は、2,166件で前年比23.6%の大幅増となり、6期連続で前年同期を上回りました。
新規登録(売り出し)件数は、9,749件と前年比で5.1%増加し、9期連続で前年同期を上回りました。
2025年1~3月期の平均成約価格は、2,528万円と前年比で5.9%上昇し、6期連続で前年同期を上回りました。
なお、前期比は1.2%下落しました。
新規登録価格は、2,592万円と前年比で3.3%上昇し、9期連続で前年同期を上回りました。
なお、前期比は0.1%下落しました。
成約件数が増加する中で成約価格も上昇が続き、土地市場は堅調に推移しています。
2025年1~3月期の土地の成約件数は12地域中、京都市と滋賀県以外の10地域が前年比で増加し、増加エリアは前期比で1地域増えました。
増加エリアはいずれも2ケタ増となり、兵庫県他は9期連続、和歌山県は7期連続で前年同期を上回りましたが、京都市は9期ぶりに前年同期を下回りました。
近畿圏全体に占める各エリアの取引シェアは、
1. 大阪府南部(13.7%)
2. 大阪府北部(10.3%)
3. 兵庫県他(10.3%)
4. 阪神間(10.1%)
5. 大阪府東部(8.5%)
6. 京都市(8.5%)
7. 奈良県(8.3%)
8. 大阪市(7.6%)
9. 滋賀県(7.1%)
10. 京都府他(7.0%)
11. 神戸市(5.7%)
12. 和歌山県(2.8%)
の順で、前期比では大阪市や大阪府北部などのシェア縮小が目立った。
成約価格は、12地域中6地域が前年比で上昇し、上昇エリアは前期と同数となりました。
阪神間と兵庫県他、京都市は2ケタ上昇となり、京都市は4期連続で上昇しましたが、神戸市は6期ぶりに下落するなど地域差もみられました。
2025年1~3月期の平均成約価格は、
1. 大阪市(4,649万円)
2. 京都市(3,897万円)
3. 大阪府北部(3,402万円)
4. 阪神間(2,965万円)
5. 神戸市(2,777万円)
6. 大阪府東部(2,432万円)
7. 京都府他(2,041万円)
8. 大阪府南部(1,903 万円)
9. 奈良県(1,592万円)
10. 滋賀県(1,574万円)
11. 兵庫県他(1,446万円)
12. 和歌山県(1,015万円)
の順となりました。
なお、近畿圏平均は、2,528万円です。
2025年1~3月期の近畿圏の取扱高は、前年比で30.9%拡大し、6期連続で前年同期を下回りました。
12地域中滋賀県以外の11地域が前年比で拡大し、拡大エリアは前期比で2地域増えました。
拡大地域はすべて 2ケタの拡大となり、兵庫県他は9期連続、京都市と和歌山県は7期連続、神戸市と大阪府北部・東部は6期連続で前年同期を上回りました。
成約価格、新規登録価格ともに堅調
また、売り出し件数も、9,749件と前年比で5.1%増加しました。
なお、昨年同期でも同様の動きとなっています。
土地の2024年1~3月期の成約件数は、1,752件で前年比11.8%の2ケタ増でした。
売り出し件数も、9,276件で前年比13.0%の2ケタ増でした。
平均成約価格も、2025年1~3月期は2,528万円と前年比で5.9%上昇しました。
また、新規登録価格は、2,592万円と前年比で3.3%上昇しました。
なお、昨年同期でも同様の動きとなっています。
土地の2024年1~3月期の平均成約価格は、2,387万円と前年比で6.8%上昇しました。
新規登録価格も、2,509万円と前年比で3.4%上昇しました。
近畿圏全体としては、成約価格、新規登録価格ともに上昇が続いており、堅調に推移しています。
ただし、近畿圏全体としては成約価格は上昇していますが、上昇した地域は12地域中6地域であり、半分の6地域は成約価格が下落する結果となっています。
阪神間と兵庫県他、京都市は2ケタ上昇しましたが、神戸市は6期ぶりに下落するなど地域差もみられました。
【成約価格の前年同期比】
1. 京都市(+19.7%)
2. 兵庫県他(+14.0%)
3. 阪神間(+11.3%)
4. 大阪府東部(+8.3%)
5. 大阪市(+2.9%)
6. 和歌山県(+0.9%)
7. 奈良県(-1.0%)
8. 京都府他(-1.1%)
9. 神戸市(-1.2%)
10. 大阪府東部(-1.4%)
11. 大阪府北部(-2.2%)
12. 滋賀県(-6.8%)
大阪府でも北部や東部では下落しています。
近畿圏で12地域中3地域が2ケタ増もあって全体として前年比で5.9%上昇しましたが、大阪市から大阪府北部までの7地域は前年同期比で上下3%以内で推移しています。
今後も上昇傾向が続くかどうかは不透明な状況です。
終わりに

2025年1~3月期の近畿圏市場近畿レインズのレポートによると、金利環境について言及し、以下のように報告しています。
日銀は、2024年3月のマイナス金利解除以降、政策金利を0.5%まで引き上げてきたが、米国の金融・経済政策が日本経済に与える影響が見通しにくく、更なる利上げを含めた金融政策の行方は予断を許さない。
日米金利差とそれに伴う為替の変動は著しく、企業収益の見通しも立てにくいことから株価は乱高下している。
従来より都心を中心とした不動産価格と株価の連動性は高いとの指摘があるが、外部環境の急速な変化を受けて不動産市場も影響を受ける可能性が出てきた。
投資需要に加え、実需においても賃金を大幅に上回る物価上昇や金利上昇が顕在化すると、取得能力や購入マインドの低下から住宅市況の下押し圧力が高まる。
今回お話ししましたとおり、現状では中古住宅市場は堅調に推移しており、住宅ローン金利も変動型を中心にまだ低位を維持しています。
そのため、上記の影響が即座に市場に波及することは考えにくいですが、その傾向はみられるようになってきており、当面は物価と賃金の動向や日銀の金融政策の方向性を注視する展開が続くでしょう。
執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。