
一般的に、相続に関わる不動産の悩みは、亡くなった被相続人の自宅の扱いでしょう。
残った現預金よりも自宅の方が評価が高い場合、自宅を共有して相続することが考えられます。
共有することになった場合、売却や建て替えを行うときには共有者全員の同意が必要となります。
単独で判断することができなくなり、支障が生じる可能性が高くなります。
また、配偶者がいる場合は、相続によって自宅を得たとしても、現預金が別の相続人に渡してしまうと生活が困難となる可能性があります。
このようなことは、多くの家庭でも考えられることであり、他人事ではありません。
相続が起こってからではなく、事前に準備できることがありますので、早めに検討しましょう。
今回は、よくある不動産と相続の悩みについて、お話し致します。
財産のほとんどが不動産の相続の場合

「私の相続人は、同居している長女と遠くに住んでいる次女の2人です」
「財産は自宅とその近所にある賃貸住宅、現預金です」
「自宅と賃貸住宅はできれば長女に引き継ぎたいが、次女には現預金しか残せません」
子どもたちがもめないように分けたいが、どのような方法があるか。
2人の子がもめないためには、できるだけ法定相続分に近い割合で財産を公平に分けなければなりません。
法定相続分による場合、例えば、「長女が次女に対して代償金を支払う方法」、「賃貸住宅を売却し、現預金で分ける方法」、「賃貸住宅を共有で相続する方法」などが考えられます。
相続後に子どもたちが揉めないように、できるだけ生前に親子3人で検討しましょう。
そして、決めた分割方法は、必ず遺言書に記載しておきましょう。
「財産は自宅とその近所にある賃貸住宅、現預金です」
「自宅と賃貸住宅はできれば長女に引き継ぎたいが、次女には現預金しか残せません」
子どもたちがもめないように分けたいが、どのような方法があるか。
2人の子がもめないためには、できるだけ法定相続分に近い割合で財産を公平に分けなければなりません。
法定相続分による場合、例えば、「長女が次女に対して代償金を支払う方法」、「賃貸住宅を売却し、現預金で分ける方法」、「賃貸住宅を共有で相続する方法」などが考えられます。
相続後に子どもたちが揉めないように、できるだけ生前に親子3人で検討しましょう。
そして、決めた分割方法は、必ず遺言書に記載しておきましょう。
法定相続分を考慮した分割プラン
例えば、財産が以下のとおりであったとします。
・自宅 3,000万円(時価)
・賃貸住宅 1億円(時価)
・現預金 3,000万円(時価)
財産合計 1億6,000万円(時価)
【長女】
・自宅 3,000万円(時価)
・賃貸住宅 1億円(時価)
【次女】
・現預金 3,000万円(時価)
法定相続分に応じて分割する場合、以下の3つの分割プランが考えられます。
① 「長女が不動産を取得して、次女に対して代償金を支払う」
長女が、次女に、5,000万円を支払います。
この場合、長女は多額の金銭が必要です。
② 「賃貸住宅を売却して金銭で相続」
賃貸住宅を1億円で売却し、金銭を確保します。
そして、長女は自宅と現預金5,000万円、次女は現預金8,000万円を相続します。
この場合、資金は不要ですが、長女の収入に心配があります。
③ 「賃貸住宅を共有で相続」
賃貸住宅を共有し、長女は自宅、次女は現預金3,000万円を相続します。
この場合、共有になるため売却等を行うときに制約が生じます。
・自宅 3,000万円(時価)
・賃貸住宅 1億円(時価)
・現預金 3,000万円(時価)
財産合計 1億6,000万円(時価)
【長女】
・自宅 3,000万円(時価)
・賃貸住宅 1億円(時価)
【次女】
・現預金 3,000万円(時価)
法定相続分に応じて分割する場合、以下の3つの分割プランが考えられます。
① 「長女が不動産を取得して、次女に対して代償金を支払う」
長女が、次女に、5,000万円を支払います。
この場合、長女は多額の金銭が必要です。
② 「賃貸住宅を売却して金銭で相続」
賃貸住宅を1億円で売却し、金銭を確保します。
そして、長女は自宅と現預金5,000万円、次女は現預金8,000万円を相続します。
この場合、資金は不要ですが、長女の収入に心配があります。
③ 「賃貸住宅を共有で相続」
賃貸住宅を共有し、長女は自宅、次女は現預金3,000万円を相続します。
この場合、共有になるため売却等を行うときに制約が生じます。
長女が不動産を取得して、次女に対して代償金を支払う
長女は、次女に対して、代償金を支払うための多額の資金が必要となります。
長女が、相続のときに自己資金が用意できる場合は問題ありませんが、もし代償金の資金が足りない場合は、以下のような方法が考えられます。
1. 不動産を担保に金融機関から借り入れを行う
2. 賃貸住宅による家賃収入から代償金を分割で支払う
長女が、相続のときに自己資金が用意できる場合は問題ありませんが、もし代償金の資金が足りない場合は、以下のような方法が考えられます。
1. 不動産を担保に金融機関から借り入れを行う
2. 賃貸住宅による家賃収入から代償金を分割で支払う
賃貸住宅を売却して金銭で相続
賃貸住宅の経営状況にもよりますが、長女が経営に前向きでない場合や、賃貸住宅に空室が多く、管理が行き届いていないなどの場合は、賃貸住宅を売却した資金でバランスよく分割することを検討してみましょう。
なお、賃貸住宅の売却によって利益が発生した場合は、譲渡所得税がかかるため注意しましょう。
また、贈与税の課税を避けるため、遺産分割協議書には不動産を換価(売却)して分割する旨を必ず明記しておきましょう。
なお、賃貸住宅の売却によって利益が発生した場合は、譲渡所得税がかかるため注意しましょう。
また、贈与税の課税を避けるため、遺産分割協議書には不動産を換価(売却)して分割する旨を必ず明記しておきましょう。
賃貸住宅を共有で相続
賃貸住宅所有者として、経営している長女とは別の他者(次女)の名義が入ることになります。
長女と次女の仲が良い間はいいですが、もし仲違いをしてしまったり、さらに相続が発生し、次女の子や孫が名義人となった場合には、共有名義人の関係性が希薄になり、トラブルが生じやすくなります。
また、賃貸住宅の売却や建て替えをしたい場合には、共有者全員の同意が必要となります。
そのため、長女の賃貸住宅経営に支障が生じる可能性があります。
不動産の共有状態を作ると、後に紛争に発展する可能性が非常に高く、現に紛争に発展している事例が多くあります。
長女が相続後に困らないよう不動産の共有状態は避けることが望ましいです。
長女と次女の仲が良い間はいいですが、もし仲違いをしてしまったり、さらに相続が発生し、次女の子や孫が名義人となった場合には、共有名義人の関係性が希薄になり、トラブルが生じやすくなります。
また、賃貸住宅の売却や建て替えをしたい場合には、共有者全員の同意が必要となります。
そのため、長女の賃貸住宅経営に支障が生じる可能性があります。
不動産の共有状態を作ると、後に紛争に発展する可能性が非常に高く、現に紛争に発展している事例が多くあります。
長女が相続後に困らないよう不動産の共有状態は避けることが望ましいです。
賃貸経営の引継ぎ

「相続後は、私が所有している賃貸物件の経営を、親族の誰かに引き継いで欲しいと考えている」
万が一に備えて準備を始めておきたいが、正直なところ何から手を付けたらいいか分かりません。
まずは後継者を決め、後継者に賃貸物件を引き継ぐ内容の遺言書を作成しましょう。
次に、相続後の賃貸経営に必要となる情報(各種連絡先や支払先など)を後継者と共有します。
また、後継者が困らないように、ほかの相続人との調整や税金の支払、遺留分侵害額請求に対応するための資金確保などが必要です。
万が一に備えて準備を始めておきたいが、正直なところ何から手を付けたらいいか分かりません。
まずは後継者を決め、後継者に賃貸物件を引き継ぐ内容の遺言書を作成しましょう。
次に、相続後の賃貸経営に必要となる情報(各種連絡先や支払先など)を後継者と共有します。
また、後継者が困らないように、ほかの相続人との調整や税金の支払、遺留分侵害額請求に対応するための資金確保などが必要です。
何も準備せずに相続が起こるとどうなるか
相続が発生すると、金融機関があなたの口座を凍結します。
そのため、賃貸経営に次のようなトラブルが発生する可能性があります。
1. 賃貸経営に必要となる水道光熱費などの支払ができなくなる
2. 賃料を適時に受け取れなくなる
3. ローンの支払いが滞り、最悪の場合は不動産を差し押さえられる
4. 火災保険料が引き落とされず、保険適用期間に空白ができてしまう(その間に火災等が発生しても補償を受けることができない)
そのため、賃貸経営に次のようなトラブルが発生する可能性があります。
1. 賃貸経営に必要となる水道光熱費などの支払ができなくなる
2. 賃料を適時に受け取れなくなる
3. ローンの支払いが滞り、最悪の場合は不動産を差し押さえられる
4. 火災保険料が引き落とされず、保険適用期間に空白ができてしまう(その間に火災等が発生しても補償を受けることができない)
賃貸経営をスムーズに引き継ぐためには
このような事態が生じないように、早期に後継者を決定し、後継者に賃貸物件を引き継ぐ内容の遺言書を作成しましょう。
また、相続が発生すると、後継者は速やかに次のような手続きをしなければなりません。
情報を共有し、よく話し合っておきましょう。
1. 賃貸事業に関する関係各所(管理会社など)に直ちに連絡
2. 水道光熱費や火災保険の名義変更などの手続
3. 賃借人に対する所有者変更の通知
4. 賃借人に対する振込先口座変更の通知
5. 相続登記、税務申告などの不動産を相続したことに伴う手続
6. (ローンが残っている場合)金融機関への連絡
後継者を決めておかないと、「誰が賃貸経営を引き継ぐか」、「誰が賃貸経営に必要な手続をするか」が定まりません。
また、後継者を決めておいたとしても、必要な情報が共有されていなければ、後継者が適切なタイミングで対応することができません。
また、相続が発生すると、後継者は速やかに次のような手続きをしなければなりません。
情報を共有し、よく話し合っておきましょう。
1. 賃貸事業に関する関係各所(管理会社など)に直ちに連絡
2. 水道光熱費や火災保険の名義変更などの手続
3. 賃借人に対する所有者変更の通知
4. 賃借人に対する振込先口座変更の通知
5. 相続登記、税務申告などの不動産を相続したことに伴う手続
6. (ローンが残っている場合)金融機関への連絡
後継者を決めておかないと、「誰が賃貸経営を引き継ぐか」、「誰が賃貸経営に必要な手続をするか」が定まりません。
また、後継者を決めておいたとしても、必要な情報が共有されていなければ、後継者が適切なタイミングで対応することができません。
資金確保やローンの引継ぎも大切
賃貸物件以外にめぼしい財産がない場合は、ほかの相続人から遺留分侵害額請求を受けたり、税金を支払う資金がないなど、後継者が困ってしまうことがあります。
保険に加入するなどして、資金を確保するように対策しましょう。
また、債務(ローン)は、各相続人が分割して相続します。
そのため、1人の後継者に賃貸物件と債務を合わせて引き継ぎたいと思っても、金融機関が認めてくれない限りできません。
金融機関は、後継者だけが債務者となってもきちんと弁済できるかを審査し、弁済するだけの視力があると判断した場合に、後継者は1人で債務を承継することを認めることとなります。
保険に加入するなどして、資金を確保するように対策しましょう。
また、債務(ローン)は、各相続人が分割して相続します。
そのため、1人の後継者に賃貸物件と債務を合わせて引き継ぎたいと思っても、金融機関が認めてくれない限りできません。
金融機関は、後継者だけが債務者となってもきちんと弁済できるかを審査し、弁済するだけの視力があると判断した場合に、後継者は1人で債務を承継することを認めることとなります。
賃料は誰がもらえるか
遺産分割協議によって1人の後継者が不動産を取得することが決まっても、それまでに発生した賃料収入は、合意がない限り、各相続人が分割して取得します。
相続人の1人が善意で管理を行っていた場合には、不公平に感じることもあるでしょう。
また、管理のために支出した費用が経費として認められるかなどについて、紛争に発展するケースもあります。
相続人の1人が善意で管理を行っていた場合には、不公平に感じることもあるでしょう。
また、管理のために支出した費用が経費として認められるかなどについて、紛争に発展するケースもあります。
不要な相続不動産はどのようにすればよいか

「先日、母が亡くなった」
「相続財産の中に、聞いたこともない地名の山がありました」
私たち相続人は、誰もそのような山はいらないのですが、どうすればいいでしょうか。
山の土地が、もし「相続国庫帰属制度」の要件に当てはまれば、相続をしたうえで山を国に引き取ってもらうことができます。
ただし、山林は境界の確認ができないことが多く、この制度の要件を満たすかどうか、よく確認をする必要があります。
また、相続放棄をして、山を含むすべての財産を相続しない方法もあります。
その場合は、相続から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
「相続財産の中に、聞いたこともない地名の山がありました」
私たち相続人は、誰もそのような山はいらないのですが、どうすればいいでしょうか。
山の土地が、もし「相続国庫帰属制度」の要件に当てはまれば、相続をしたうえで山を国に引き取ってもらうことができます。
ただし、山林は境界の確認ができないことが多く、この制度の要件を満たすかどうか、よく確認をする必要があります。
また、相続放棄をして、山を含むすべての財産を相続しない方法もあります。
その場合は、相続から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
相続土地国庫帰属制度
2023年(令和5年)4月27日から、相続した不要な土地を国に引き取ってもらうことができる「相続土地国庫帰属制度」の利用が始まりました。
一定の要件があり、また負担金の納付が必要ですが、相続などによって土地の所有権または共有持分を取得した人が法務局に申請すれば、その土地の所有権を国庫に帰属させることができます。
※例:国庫に帰属させることができない土地
1. 建物がある土地、土地の管理や処分を阻害するものが地上または地下にある土地
2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
3. 他人の利用が予定されている土地
3. 土壌汚染されている土地
4. 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
5. 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
一定の要件があり、また負担金の納付が必要ですが、相続などによって土地の所有権または共有持分を取得した人が法務局に申請すれば、その土地の所有権を国庫に帰属させることができます。
※例:国庫に帰属させることができない土地
1. 建物がある土地、土地の管理や処分を阻害するものが地上または地下にある土地
2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
3. 他人の利用が予定されている土地
3. 土壌汚染されている土地
4. 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
5. 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
相続放棄の選択は慎重に
今回のケースでは、相続放棄をすることで、山を含めた全ての財産を承継せずに済みます。
しかし、山以外の相続財産が一定程度ある場合には、相続放棄をしてしまうと、それらの財産を承継する権利も失います。
相続放棄をするか否かは、相続財産全体を確認したうえで、慎重に決定しなければなりません。
相続放棄も含め、相続の方法には次の3つの方法があります。
しかし、山以外の相続財産が一定程度ある場合には、相続放棄をしてしまうと、それらの財産を承継する権利も失います。
相続放棄をするか否かは、相続財産全体を確認したうえで、慎重に決定しなければなりません。
相続放棄も含め、相続の方法には次の3つの方法があります。
① 単純承認
積極財産(現預金など金銭的価値のある財産)も消極財産(借入金等の負債)も含めて、被相続人の全ての財産を相続することです。
負債が積極財産を上回る心配がない場合などに、一般的に用いられます。
負債が積極財産を上回る心配がない場合などに、一般的に用いられます。
② 相続放棄
積極財産も消極財産も含めて、被相続人の全ての財産の承継を拒否し、相続する権利を放棄することです。
負債が積極財産を上回る場合や、相続財産の有無が全くわからない場合などに用いられます。
原則として、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
ただし、相続財産の調査が完了しない場合などには、家庭裁判所に申し立てることにより延長できます。
相続放棄した場合でも、放棄のときに相続財産を占有している場合には、その管理を続けなければなりません。
注意しましょう。
負債が積極財産を上回る場合や、相続財産の有無が全くわからない場合などに用いられます。
原則として、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
ただし、相続財産の調査が完了しない場合などには、家庭裁判所に申し立てることにより延長できます。
相続放棄した場合でも、放棄のときに相続財産を占有している場合には、その管理を続けなければなりません。
注意しましょう。
③ 限定承認
積極財産も消極財産も含めて被相続人の全ての財産を承継するが、負債について、承継した積極財産の範囲内でしか責任を負わない方法で相続することです。
積極財産や消極財産の額が正確にわからない場合に用いられます。
相続を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続放棄の場合と同様に、申立により延長できます。
また、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。
譲渡所得税が課される可能性があるため、選択する際には慎重に検討しなければなりません。
積極財産や消極財産の額が正確にわからない場合に用いられます。
相続を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続放棄の場合と同様に、申立により延長できます。
また、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。
譲渡所得税が課される可能性があるため、選択する際には慎重に検討しなければなりません。
相続財産清算人
相続人の全員が相続放棄した場合や相続人がいない場合、利害関係人での申立てにより相続財産清算人が選任され、相続清算人が相続財産を管理することになります。
相続財産清算人による相続人の調査等によっても相続人が見つからず、また特別縁故者からの申し立てもないなどの場合、相続財産は国庫に帰属することになります。
相続財産清算人による相続人の調査等によっても相続人が見つからず、また特別縁故者からの申し立てもないなどの場合、相続財産は国庫に帰属することになります。
単純承認したとしてみなされる場合
相続放棄や限定承認をしたいと思っている場合であっても、相続財産を使ってしまったり、処分してしまったりした場合には、単純承認したものとみなされ、相続放棄や限定承認をすることができなくなってしまう可能性があります。
うっかり相続財産を使ってしまったり、返済してしまったりしたことで、莫大な負債を負ってしまう可能性もあります。
特に負債が存在する可能性が高い場合には、相続財産には触らないように十分注意しましょう。
うっかり相続財産を使ってしまったり、返済してしまったりしたことで、莫大な負債を負ってしまう可能性もあります。
特に負債が存在する可能性が高い場合には、相続財産には触らないように十分注意しましょう。
配偶者に安心して住まいを残す方法

「私の相続人は、妻と前妻との間のこの2人です」
「相続財産は、私名義の自宅と預貯金だけです」
「前妻の子にも相続分があるので、私の相続後に2人が揉めたときに、妻が自宅から追い出されないか心配です」
何か今のうちに手を打っておくことはできないでしょうか。
生前にできる対策としては、妻に自宅を相続させる旨の遺言の作成や、妻への自宅の生前贈与が考えられます。
また、遺言で妻に配偶者居住権を遺贈し、妻を自宅に住み続けさせることもできます。
「相続財産は、私名義の自宅と預貯金だけです」
「前妻の子にも相続分があるので、私の相続後に2人が揉めたときに、妻が自宅から追い出されないか心配です」
何か今のうちに手を打っておくことはできないでしょうか。
生前にできる対策としては、妻に自宅を相続させる旨の遺言の作成や、妻への自宅の生前贈与が考えられます。
また、遺言で妻に配偶者居住権を遺贈し、妻を自宅に住み続けさせることもできます。
遺言や生前贈与を活用
まず、もしものときに備えて、妻に自宅を相続させる旨の遺言を作成する方法が考えられます。
ただし、前妻の子の遺留分を考慮しておかなくてはなりません。
また、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、配偶者へ居住用不動産等を贈与する場合の贈与税については、基礎控除110万円のほかに、最高2000万円までを控除出来る配偶者控除の特例があります。
この特例を活用し、妻に自宅を生前贈与する方法も有効です。
なお、このような贈与財産は、通常は遺産分割協議で特別受益として持ち戻されます。
しかし、民法改正により、一定要件を満たす配偶者への贈与は持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される(贈与財産を相続財産に含めない)ことになりました。
要件としては、「婚姻期間が20年以上」、「受遺者が配偶者」、「居住用の建物またはその敷地の遺贈または贈与の場合」です。
もっとも、あらかじめ。特別受益の持ち戻し免除の意思表示を書面で行っておくことが望ましいでしょう。
また、遺留分侵害請求があった場合の遺留分の算定にあたっても、贈与財産の金額が考慮されます。
ただし、遺留分の算定にあたって考慮される相続人に対する贈与は、相続開始前10年間になされたものに限定されます。
ただし、前妻の子の遺留分を考慮しておかなくてはなりません。
また、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、配偶者へ居住用不動産等を贈与する場合の贈与税については、基礎控除110万円のほかに、最高2000万円までを控除出来る配偶者控除の特例があります。
この特例を活用し、妻に自宅を生前贈与する方法も有効です。
なお、このような贈与財産は、通常は遺産分割協議で特別受益として持ち戻されます。
しかし、民法改正により、一定要件を満たす配偶者への贈与は持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される(贈与財産を相続財産に含めない)ことになりました。
要件としては、「婚姻期間が20年以上」、「受遺者が配偶者」、「居住用の建物またはその敷地の遺贈または贈与の場合」です。
もっとも、あらかじめ。特別受益の持ち戻し免除の意思表示を書面で行っておくことが望ましいでしょう。
また、遺留分侵害請求があった場合の遺留分の算定にあたっても、贈与財産の金額が考慮されます。
ただし、遺留分の算定にあたって考慮される相続人に対する贈与は、相続開始前10年間になされたものに限定されます。
配偶者居住権を活用
民法改正により、相続後の配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が認められるようになりました。
配偶者居住権は以下を要件として、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、無償で居住することができる権利です。
① 残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること
② 配偶者が、亡くなった人が単独所有または配偶者と2人で共有していた建物に、亡くなったときに居住していたこと
③ 次のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
1. 遺産分割
2. 遺贈
3. 死因贈与
4. 家庭裁判所の審判
妻に配偶者居住権が認められる場合、妻と子において、以下のような遺産分割を行うことができ、妻が自宅に住み続けることができます。
なお、妻に対し配偶者居住権を承継したいのであれば、遺言で配偶者居住権を遺贈する旨を記載しておくことが望ましいでしょう。
注意点としては、「相続させる」遺言ではなく、「遺贈する」遺言である必要があります。
<配偶者居住権を活用した場合>
相続財産
・自宅:3,000万円
・現預金:1,000万円
【妻】
・(自宅の)居住権:1,500万円
・現預金:500万円
【子】
・(自宅の)所有権:1,500万円
・現預金:500万円
配偶者居住権のほかにも、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物(居住部分のみ)に、遺産分割がまとまるまで、もしくは協議が早くまとまった場合でも被相続人が亡くなってから6カ月間、無償で住み続けることができる「配偶者短期居住権」という権利もあります。
配偶者居住権は以下を要件として、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、無償で居住することができる権利です。
① 残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること
② 配偶者が、亡くなった人が単独所有または配偶者と2人で共有していた建物に、亡くなったときに居住していたこと
③ 次のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
1. 遺産分割
2. 遺贈
3. 死因贈与
4. 家庭裁判所の審判
妻に配偶者居住権が認められる場合、妻と子において、以下のような遺産分割を行うことができ、妻が自宅に住み続けることができます。
なお、妻に対し配偶者居住権を承継したいのであれば、遺言で配偶者居住権を遺贈する旨を記載しておくことが望ましいでしょう。
注意点としては、「相続させる」遺言ではなく、「遺贈する」遺言である必要があります。
<配偶者居住権を活用した場合>
相続財産
・自宅:3,000万円
・現預金:1,000万円
【妻】
・(自宅の)居住権:1,500万円
・現預金:500万円
【子】
・(自宅の)所有権:1,500万円
・現預金:500万円
配偶者居住権のほかにも、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物(居住部分のみ)に、遺産分割がまとまるまで、もしくは協議が早くまとまった場合でも被相続人が亡くなってから6カ月間、無償で住み続けることができる「配偶者短期居住権」という権利もあります。
不動産の名義変更

「叔母が亡くなったが、子がいないため、私が叔母の相続人となります」
「叔母の財産を調べていたところ、叔父が亡くなったときの不動産の名義変更ができていないことがわかりました」
叔父名義の不動産をこのまま放っておいてもよいものでしょうか。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
2024年(令和6年)4月1日より前の相続については、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記を完了しなくてはなりません。
叔父名義の不動産については、叔父の遺言書や遺産分割協議書などがないか確認のうえ、早めに相続登記をしておきましょう。
「叔母の財産を調べていたところ、叔父が亡くなったときの不動産の名義変更ができていないことがわかりました」
叔父名義の不動産をこのまま放っておいてもよいものでしょうか。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
2024年(令和6年)4月1日より前の相続については、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記を完了しなくてはなりません。
叔父名義の不動産については、叔父の遺言書や遺産分割協議書などがないか確認のうえ、早めに相続登記をしておきましょう。
相続登記とは
相続した土地建物について、法務局に申請し、亡くなった人から相続で引き継いだ人へ不動産登記簿の名義を変更することを、相続登記といいます。
相続登記は、一般的に次のような流れで行われます。
1. 相続する不動産を特定し、法定相続人の範囲を確認します
2. 相続人の間で、亡くなった人の財産をどのように分けるかについて協議(遺産の分割)を行ない、その結果を文書にします
3. 相続登記申請書を作成し、申請に必要な証明書類等を用意します
4. 管轄の法務局に登記申請をします(持参・郵送・オンラインで行う方法があります)
相続登記は、不動産を引き継いだ相続人が単独で行う場合と、相続人が共同で申請を行う場合があります。
相続人から弁護士や司法書士に依頼して、代わりに申請してもらうこともできます。
相続登記は、一般的に次のような流れで行われます。
1. 相続する不動産を特定し、法定相続人の範囲を確認します
2. 相続人の間で、亡くなった人の財産をどのように分けるかについて協議(遺産の分割)を行ない、その結果を文書にします
3. 相続登記申請書を作成し、申請に必要な証明書類等を用意します
4. 管轄の法務局に登記申請をします(持参・郵送・オンラインで行う方法があります)
相続登記は、不動産を引き継いだ相続人が単独で行う場合と、相続人が共同で申請を行う場合があります。
相続人から弁護士や司法書士に依頼して、代わりに申請してもらうこともできます。
相続登記の義務化
2024年(令和6年)4月1日以降、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されました。
2024年(令和6年)4月1日より前の相続についても同様で、2024年(令和6年)4月1日より前に不動産を相続したことを知っていれば、2024年(令和6年)4月1日から3年以内、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記の申請をしなければなりません。
正当な理由がなくこの義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記の申請のためには、亡くなった登記名義人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本等の資料の収集が必要であり、手続きの負担が大きくなります。
そこで、相続登記の義務化に伴い、「亡くなった登記名義人について相続が開始したこと」と、「自らがその相続人であることを申し出ること」によって、相続登記の申請義務を行ったとみなす「相続人申告登記」という新しい登記ができるようになりました。
もし、相続登記の申請に手間や時間を要する場合は、取り急ぎ相続人申告登記を行っておけば、義務違反の10万円以下の過料の対象とはなりません。
2024年(令和6年)4月1日より前の相続についても同様で、2024年(令和6年)4月1日より前に不動産を相続したことを知っていれば、2024年(令和6年)4月1日から3年以内、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記の申請をしなければなりません。
正当な理由がなくこの義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記の申請のためには、亡くなった登記名義人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本等の資料の収集が必要であり、手続きの負担が大きくなります。
そこで、相続登記の義務化に伴い、「亡くなった登記名義人について相続が開始したこと」と、「自らがその相続人であることを申し出ること」によって、相続登記の申請義務を行ったとみなす「相続人申告登記」という新しい登記ができるようになりました。
もし、相続登記の申請に手間や時間を要する場合は、取り急ぎ相続人申告登記を行っておけば、義務違反の10万円以下の過料の対象とはなりません。
放置すると相続人調査や交渉が困難となる
叔父名義の不動産の相続登記にあたって、叔父の遺言書や遺産分割協議書などがない場合は、叔父の相続法定相続人を調査することになります。
叔父に子がなく、叔父の父母や祖父母が死亡しているようでしたら、叔父の法定相続人は叔母のほかに、叔父の兄弟姉妹となります。
叔父の死亡時点において、叔父の兄弟姉妹で死亡している者がいる場合は、その者の子がいれば、その子が叔父の相続人となります。
なお、叔父の兄弟姉妹の子も死亡していた場合は、叔父の兄弟姉妹の孫は相続人にはなりません。
これに対し、叔父の相続時点では存命していた叔父の兄弟姉妹が、一旦叔父の相続分を取得した後に死亡した場合は、兄弟姉妹の法定相続人を孫の代まで調査することもありえます。
このように、叔父の死亡から年月を経るほど相続調査の範囲が広がります。
戸籍を複数回移転する人が含まれていると、戸籍調査のみで数か月を要するという事態も起こり得ます。
さらに、叔父の法定相続人の数が増えると、それだけ交渉して協力を得るのも大変になります。
任意の協力が得られない場合には、調停や訴訟などの手続きをしなければならない可能性が高まります。
法改正により、遺言で相続財産を取得する者が相続登記をしない間に、遺言の存在を知らない第三者が相続財産の権利を移転し、その第三者が登記を備えてしまった場合、遺言で相続財産を取得する者は、事情を知らない第三者に対して、法定相続分を超える部分の権利主張ができなくなりました。
そのため、遺言によって法定相続分を超える部分を相続した場合には、トラブルを防ぐために早めに相続登記をしておくことが望ましいでしょう。
叔父に子がなく、叔父の父母や祖父母が死亡しているようでしたら、叔父の法定相続人は叔母のほかに、叔父の兄弟姉妹となります。
叔父の死亡時点において、叔父の兄弟姉妹で死亡している者がいる場合は、その者の子がいれば、その子が叔父の相続人となります。
なお、叔父の兄弟姉妹の子も死亡していた場合は、叔父の兄弟姉妹の孫は相続人にはなりません。
これに対し、叔父の相続時点では存命していた叔父の兄弟姉妹が、一旦叔父の相続分を取得した後に死亡した場合は、兄弟姉妹の法定相続人を孫の代まで調査することもありえます。
このように、叔父の死亡から年月を経るほど相続調査の範囲が広がります。
戸籍を複数回移転する人が含まれていると、戸籍調査のみで数か月を要するという事態も起こり得ます。
さらに、叔父の法定相続人の数が増えると、それだけ交渉して協力を得るのも大変になります。
任意の協力が得られない場合には、調停や訴訟などの手続きをしなければならない可能性が高まります。
法改正により、遺言で相続財産を取得する者が相続登記をしない間に、遺言の存在を知らない第三者が相続財産の権利を移転し、その第三者が登記を備えてしまった場合、遺言で相続財産を取得する者は、事情を知らない第三者に対して、法定相続分を超える部分の権利主張ができなくなりました。
そのため、遺言によって法定相続分を超える部分を相続した場合には、トラブルを防ぐために早めに相続登記をしておくことが望ましいでしょう。
終わりに

今回は、よくある不動産と相続の悩みについて、お話し致しました。
配偶者居住権については、残された配偶者も高齢であるでしょうから、二次相続のことも踏まえて考えるとよいでしょう。
子などの相続人には、長い目で検討しても良いと考えられます。
相続は突然生じることもあります。
それまでに準備が整っていることが望ましいですが、もし事後の対応となったとしても、焦らずに次の相続のことも考えておくことです。
相続のトラブルは、多くの財産を残して亡くなった方のときばかりではありません。
いらない不動産を所有されているようなケースでも、相続人が積極的ではないことからトラブルに生じることも少なくありません。
国庫にとっても、不要な財産を引き受ける余裕はないと考えておくとよいでしょう。
執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。
配偶者居住権については、残された配偶者も高齢であるでしょうから、二次相続のことも踏まえて考えるとよいでしょう。
子などの相続人には、長い目で検討しても良いと考えられます。
相続は突然生じることもあります。
それまでに準備が整っていることが望ましいですが、もし事後の対応となったとしても、焦らずに次の相続のことも考えておくことです。
相続のトラブルは、多くの財産を残して亡くなった方のときばかりではありません。
いらない不動産を所有されているようなケースでも、相続人が積極的ではないことからトラブルに生じることも少なくありません。
国庫にとっても、不要な財産を引き受ける余裕はないと考えておくとよいでしょう。
執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。