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【2024年度版】不動産売却の流れと税金や手数料などお金に関して

不動産売却の流れについて把握しよう
多くの人にとって、不動産は最も高額なものの1つでしょう。
不動産は人生で最も高額な買い物であると言われますが、一方で最も高額な売却商品です。

一般的に、ものを購入する機会に比べて、ものを売却する機会は少ないでしょう。
そのため、売却することに対して慣れていない人は少なくありません。
売却することについて、しっかりと考えてみましょう。

たとえば、不動産を売却するときには、どのような事情が考えられるでしょうか。
住み替えを行うために、もとの住居を売却するということもあるでしょう。
また、相続によって取得した住居を売却するということもあるでしょう。

いろいろ考え出すと混乱するかもしれませんが、初心を見失わないようにしなければなりません。
何の目的で売却をするのか。目的は、何らかの事情を解決することです。
解決させるためには、どのような流れで進めていけばいいでしょうか。

そして、売却をするときには、お金のことも気になることでしょう。
購入するときだけではなく、売却するときにも、諸経費が必要です。
売却して得た所得に対して、諸経費を除いて最後にどれだけ残るか、これを知っておかなければ売却した後のことを正しく考えることはできません。

今回は、不動産売却の流れと税金や手数料などお金に関することについて、お話し致します。

不動産売却の流れ

不動産の売却は、どのような流れで進んでいくものでしょうか。

何も準備をせずに、売却をする価格を決めるため不動産業者へ査定をしてもらえばいいというわけではありません。
最初に、売却をするための準備をしなければなりません。

準備は、売却をしたい物件が、土地なのか、一戸建てなのか、マンションなのか、物件の種類によって違います。
また、売却のきっかけが相続などの場合は、所有者変更の手続きが済んでいるかなどによっても、進め方が違います。

原則として、対象不動産の登記の所有者でない者が売主として売却することはできません。
登記の所有者を確認し、所有者変更の手続きが済ませられていない場合は、正しく変更しなければなりません。

土地・一戸建を売却する際の準備

不動産を売却するためには、事前にどのような準備をすればよいでしょうか。

売却をしたい不動産が、土地、一戸建て、マンションなど種類によって違います。
まずは、土地および一戸建ての売却準備について、お話し致します。

土地について確認

一戸建ての売却のときに、建物だけを売却するのでなければ、その底地にある土地も一緒に売却することになります。
そのため、一戸建ての売却のときであっても、土地について確認しておかなければなりません。

特別な事情がなければ、普段の生活で使用されている建物と比べて、土地のことを考える機会は少ないでしょう。
売却前に調査すべき事項は多岐にわたりますが、まずは対象の土地と向き合ってみることから始めましょう。

地目の確認

土地は、さまざまな目的で使用されています。
居住用の家など建築物を建てることを目的とした土地(宅地)だけではなく、郊外では田や畑のような農耕地もあれば、山間部では山林や原野などもあります。

土地には、不動産登記法に基づき、土地の用途を判別して地目が記されています。

住宅などの建物がある土地は、「宅地」とされています。
ほかにも、「田」、「畑」、「牧場」、「原野」、「塩田」、「鉱泉地」、「池沼」、「山林」、「墓地」、「境内地」、「運河用地」、「水道用地」、「用悪水路」、「ため池」、「堤」、「井溝」、「保安林」、「公衆用道路」、「公園」、「鉄道用地」、「学校用地」、そして先のどの地目にもあてはまらない土地として「雑種地」があります。
まずは、売却を考えている土地の地目を調べましょう。

土地の地目によって、売却手順が違う場合があります。
また、その土地に向いている利用用途によって、評価が違う場合があります。
例えば、住宅地である「宅地」と、田んぼで利用されている「農地」では、売却手順も評価も違います。

土地の地目は、法務局に備付されている登記簿で確認をすることができます。
なお、地目は登記された時点の用途の区分が反映されているため、現時点の用途とは違っていることがあるかもしれません。

ところで、固定資産税が算出されるときには、「課税地目」が使われます。
「課税地目」は「登記地目」とは異なり、市町村が現地調査等を行い、土地の現況に変化が見られれば所有者の申請がなくても随時変更されます。
そのため、「登記地目」と「課税地目」が異なっている場合があります。

現況の確認

土地の地目が確認できれば、その土地の利用目的や用途をイメージしながら土地の現況を確認してみましょう。
確認すべき事項として、いくつか例をあげてみます。

1. 隣接地との境界の状況
2. 越境の有無
3. 接道している道路の状況
4. 地盤の状況
5. 浸水の有無(過去から現在)
6. 土地の利用状況(過去から現在)

境界については、境界の位置、境界標の設置状況、境界紛争の有無などを確認しておかなければなりません。
隣接者との関わりがあるため、慎重に対応しなければなりません。
なお、境界については、別にブログで投稿しています。詳細はそちらをご覧ください。

道路については、土地評価への影響もあり、安易な判断はできません。
道路についても、別にブログで投稿しています。詳細はそちらをご覧ください。

地盤については、軟弱地盤の可能性があるようであれば、購入希望者が新築を建てたいというときに影響を受ける可能性があります。
例えば、過去に田んぼとして利用されていた土地は、地盤が軟弱である場合が考えられます。
状況によっては、地盤調査を行って状態を確認することが望ましいでしょう。
別にブログで投稿しています。詳細はそちらをご覧ください。

建物について確認

建物は年数が経過すると劣化し、また使用することによって損耗が生じます。
確認すべき事項として、いくつか例をあげてみます。

1. 建物の増築もしくは改築の有無
2. 雨漏れや水漏れの有無(過去から現在)
3. 火災の発生の有無(過去から現在)
4. シロアリの有無(過去から現在)
5. 建物の傾きや建付けの状態
6. 耐震診断の調査の有無
7. アスベストの使用の調査の有無
8. テレビの受信方法、電波障害の有無
9. 太陽光パネルを使用されている場合は使用方法や状況
10. 電気や上下水道、ガスの使用方法や状況
11. 家具や備品、残置物の状態
12. 解体をする場合、その内容と費用見積

建物を増改築しているときは、関係する資料をお探しください。
不動産の評価向上につながる可能性があります。
また、一定規模以上の増改築をされている場合は、増築登記を行わなければなりません。
増築登記がなされているか、確認してください。

地域によっては、電波障害のために、テレビアンテナで受信できない地域があります。
また、景観に関する地域条例によって、テレビアンテナを設置することができない地域があります。

最近ではテレビ受信を、アンテナではなくケーブルテレビを利用して視聴されている世帯が増えていますが、アンテナ受信で視聴する方もあります。
トラブルにならないように、事前に確認してください。

電気の配線や上下水道の引き込みのために、隣接地など他人地を利用している場合は、取り決めがないかどうか事前に確認してください。

浄化槽を利用している場合は、その使用状況について確認してください。
現在は下水道に接続して利用していても、過去に浄化槽が設置されていた場合は、浄化槽が地中埋設物として残っていることがあります。

売却が決まれば、不動産の引渡しを行うまでに、原則として家具や備品などはすべて搬出しなければなりません。
住み替え先で使用される場合は移せばよいですが、使用されない場合は処分しなければなりません。
特に、処分するものが多ければすぐにはできないでしょう。
処分業者に依頼しなければならないことも考えられます。

建物を解体して売却することをお考えの場合は、事前に専門家へご相談ください。
条件によっては、解体して売却されると、不動産売却益に対する税金の控除ができます。
もちろん解体する場合は、解体費用を負担しなければなりません。
どのようにすれば有利になるか、十分に検討しましょう。

近隣状況の確認

対象の土地や建物だけではなく、その周りも大切です。
確認すべき事項として、いくつか例をあげてみます。

1. 自治会の有無
2. ゴミ処理の方法について
3. 嫌悪される可能性がある施設の有無(過去から現在)
4. 心理的瑕疵
5. その他、告知事項

自治会がある場合は、自治会による取り決めや負担金など、その内容について確認しましょう。
また、集会所がある場合は、町内で所有権を共有していることがあります。
原則として、一緒に売却することになります。
集会所などの共有持分がないかどうか、確認しましょう。

ゴミ処理の方法は、地域によって取り決めがあります。
個別収集されていることもあれば、集積所に出して収集されていることもあります。
集積所の場合、誰が管理・清掃をしているか、また取り決めがないかどうか確認しましょう。

明確な区別はありませんが、騒音や振動、悪臭、塵埃、爆煙の発生がある施設、反社会的勢力に関する存在は、一般的には嫌悪される可能性がある施設と考えられます。
心理的瑕疵には、対象不動産だけではなく、近隣地域も含まれます。
特別に調査を行う必要はありませんが、過去に該当する施設がないかどうか、思い出してみてください。

ほかにも、買主に対して引き継ぐ事項がないかどうか、確認しましょう。
告知しなかったことにより損害があった場合は、違約金や損害賠償の対象となります。
故意に伝えないなどといった行為は絶対に避けてください。

定期借地権付き建物の場合

土地に定期借地権が付いていることがあるかもしれません。
この場合、売却を行うには、土地の借地権者である地主の承諾が必要となっていることがあります。
また、借地権者である地主に対して、借地売却の承諾料として金銭を支払わなければならないことがあります。

一方で、購入取得時に、保証金を預け入れている場合もあります。
定期借地権に関して取り決めた契約書類等を探して、内容を確認しましょう。

マンション(区分所有建物)を売却する際の準備

土地および一戸建ての売却準備について、お話ししました。
次に、マンション(区分所有建物)の売却準備について、お話し致します。

区分所有マンションとは何か

そもそも、区分所有マンションとは、どのようなマンションでしょうか。

一般的に「マンションとは何か」と問われると、1つの建物に複数の住居がある共同住宅を思い浮かべるのではないでしょうか。
ときには、住居だけではなく、店舗や事務所、倉庫等が含まれた高層の建物を思い浮かべるかもしれません。

区分所有マンションとは何か。
マンションとアパートの違いについて、考えてみましょう。

一般的には、主に鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火構造の集合住宅をマンションといいます。
そして、木造やプレハブ造、軽量鉄骨造などの準耐火構造の集合住宅で、おおむね2階建てまでの低層住宅をアパートといいます。
しかし、法律では、マンションとアパートの違いについて明確な定義が見つかりません。

マンションという言葉については、建築基準法や宅地建物取引業法では定義されておりませんが、マンションの管理の適正化の推進に関する法律では、マンションを次のように定めています。

1. 二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地および附属施設。
2. 一団地内の土地または附属施設が当該団地内にある「上記1」に掲げる建物を含む数棟の建物の所有者の共有に属する場合における当該土地および附属施設。

以上のように、マンションは、構造や高さによって定義されているわけではなく、2以上の区分所有者が存する建物であるという点がポイントとなっています。


大家さんが一棟すべてを所有している賃貸マンションは、2以上の区分所有者が存する建物ではありません。
そのため、マンションの管理の適正化の推進に関する法律でいうマンションには当てはまりません。
賃貸マンションには、法律による明確な言葉の定義は見つかりません。

また、マンションやアパートのほかにも、コンドミニアムという言葉があります。
コンドミニアムは、日本の不動産業界では一般的に、別荘地にある集合住宅のことを指します。
しかし、日本のホテル業界では一般的に、家電や家具が備え付けられた中長期滞在者向け宿泊施設のことを指すようです。

なお、英語圏では、高級感がある豪邸をマンション、集合住宅のことをアパート、分譲住宅のことをコンドミニアムというようです。

法律で定める区分所有の定義

区分所有については、建物の区分所有等に関する法律で、以下のように定めています。

一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

構造上区分された数個の独立した部屋が、それぞれ所有権者が別々に存在することを意味しています。

区分所有の定義からみると、テラスハウスやタウンハウスといった連棟式住宅も区分所有建物にあたります。
テラスハウスとタウンハウスの違いについても触れておきましょう。

テラスハウスとタウンハウスは、建築基準法では、長屋にあたります。
どちらも集合住宅であり、数軒の独立した戸建てが外壁を共有し一棟に連なった建物です。
壁を除いた、玄関、階段、廊下などが、住戸ごとに独立しています。

違いは、建物がある敷地部分を各住戸で分筆され分けられているものがテラスハウス、全体で共有しているものがタウンハウスである点です。

テラスハウスは、玄関前には戸別の駐車場や専用庭を有し、隣家との境は塀などで区切られており、タウンハウスと比べると独立性が高い設計になっている傾向があります。

タウンハウスは、敷地内の一画に駐車場や中庭を作って全戸で利用されていることが多く、テラスハウスと比べるとゆったりとした設計になっている傾向があります。

マンションの物件に関する資料

売却するマンションに関する資料を探して、整理しましょう。

いつでも資料が揃っているという方には、これまでほとんど出会ったことがありません。
長年生活していても特に使う機会がなかったという方が多く、購入手続きが済んでから見た様子がない状態であることも珍しくありません。

不動産の売却をする機会に、これらの資料を見直しておくと良いでしょう。

マンションの管理規約や使用細則など

管理規約を探して、管理規約ではどのように定められているか、改めて確認してみましょう。

建物の区分所有等に関する法律では、建物またはその敷地もしくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる、とされています。

定めることができるとされている規約には、建物、敷地、附属施設の範囲や管理・使用に関する取り決め、集会や管理組合、会計等の運営など、重要な事項があります。

管理規約には、管理組合の運営に関する内容が含まれています。
ほかにも、所有権などの権利に関する事項や売却するときの定めなどが決められていることがあり、不動産を売却するときに影響する事項があります。

また、マンションでは、定期的に総会が開催されています。
総会では議事録が作成されていますので、議事録を探しておきましょう。

議事録には、過去に規約が変更された内容が記載されています。
管理費や修繕積立金等に関する記載事項は、購入希望者様にとって気になる事項の1つです。

管理規約のほかにも、使用細則なども確認しましょう。
使用細則は管理規約を補足するものであり、より日常生活に近い取り決めがまとめられています。

平面図や設備に関する資料やマンションパンフレット

部屋の平面図や設備に関する資料、そして一棟建物に関する資料を探しておきましょう。
ほかにも、購入時のパンフレットがあると、売却時に購入希望者への提案資料として使うことができます。

また、建物の設備に関する保証、建物の住宅性能評価書などは、売却時の評価に影響が及ぶ可能性があります。
以前にリフォームや修繕等をされている場合は、その工事の時期や内容がわかる資料を探してみましょう。
リフォームや修繕の資料は、売却時のアピールに繋がるだけではなく、買主に対して設備の状況を説明し安全に取引を行うことができます。

売主自身に関する確認事項

売主である所有者自身のことについても、事前に確認しておくことがあります。

法務局備付の登記簿で、所有者名義について確認しましょう。
1. 所有者の名義人は誰になっているか。
2. 共有されている場合、その持分割合はどうなっているか。
3. 所有者の名義人の所在地(住所)は、どの住所になっているか。

また、登記済権利証書もしくは登記識別情報が保管されているか、事前に確認しましょう。

売主が法務局で売り渡し手続きを行う際には、本人確認書類として登記済権利証書、もしくは登記識別情報が必要となります。
なお、権利証書は現在では発行されておらず、登記識別情報が使われています。

不動産の登記名義人の住所

登記されている住所や氏名に変更があった場合は、住所や氏名の変更の登記を行わなければなりません。

所有している不動産の登記事項証明書を閲覧いただくと、不動産の権利部の所有権に関する「甲区」に、ご自身のお名前が見つかるでしょう。

ここには、名前や持分割合などと一緒に、住所が書かれています。
この住所が、現在ご自身がお住まいの住所と一致しているか、確認しましょう。

ご自身がお住まいの不動産のとき

不動産を購入したときに、ご自身へ所有権を移すための登記、所有権移転登記がされています。
そのときに、どのような書類を用意したでしょうか。

所有権移転の手続きは司法書士へ委任されていることが多く、覚えておられる方は少ないかもしれません。
そのとき、住民票を用意したはずです。
所有権移転登記は、住民票に記載された氏名や住所に基づいてなされます。

ここに1つポイントがあります。
それは、ご自身が購入した時点では、住民票に記載された住所は購入した不動産の住所ではない、ということです。

所有権移転を行うために住民票を取得した時点では、購入した不動産の住所へ転入届を済ませていることはないでしょう。
つまり、所有権移転を行うために住民票を取得した時点では、購入した不動産の住所へ「移す前の住所」になっているはずです。

不動産の登記事項証明書の権利部「甲区」に記載されているあなたの住所が、正しい住所になっているか確認しましょう。

遡って住所変更登記を行う

不動産を売却するときには、所有者である売主の印鑑登録証明書が必要です。

印鑑登録証明書に記載されている住所と、登記事項証明書の「甲区」に記載されている住所が違っている場合は、同一人物とはみられません。
同一人物であることを証明するためには、住所変更登記を行わなければなりません。

住所変更登記を行うためには、いくつか準備いただく書類があります。
その1つが、住民票です。

このときに注意しておかなければならないことがあります。
それは、「住所移転前の住所(不動産の所有者の登記事項証明書に記載されている住所)」、「現在の住所(住所変更登記を申請する住所)」、「住所移転の日が記載されている(証明書の原本)」が記載された住民票でなければなりません。

また、複数回住所を移転されているときは、特に注意が必要です。

不動産の所有者の登記事項証明書に記載されている住所から、住所変更登記を申請する住所(現在の住所)までの間に、複数回、住所移転をしている場合は、住民票では、その住所移転の経緯を証明することができないことがあります。

その場合には、戸籍の附票の写し(本籍地の市区町村で発行)などが必要です。
登記事項証明書に記載されている住所から、住所変更登記を申請する住所(現在の住所)までの、住所移転の経緯を証明しなければなりません。

戸籍の附票に関する補足

戸籍の附票とは、本籍地の市区町村において戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍されてから)、現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されています。

除附票や改製除附票の保存期間は、法令の改正に伴い、2019年(令和元年)6月20日より、5年から150年間に延長されました。

ただし、2014年(平成26年)3月31日以前に除票となったものについては、既に保存期間を経過し廃棄されているため、交付できません。

戸籍の附票は廃棄されているケースがあるため、誰でも取得できるわけではありません。
ご不明な場合は、事前に登記所や司法書士、弁護士などへお問い合わせください。

不動産の登記名義人の氏名

先ほどは住所についてお話ししましたが、登記されている氏名に変更があった場合も、氏名の変更の登記を行う必要があります。

自身が所有している不動産の登記事項証明書をみていただくと、不動産の権利部の所有権に関する「甲区」に、ご自身のお名前が見つかるでしょう。

ここには、住所や持分割合などと一緒に、名前が書かれています。
結婚等によって登記されている氏名に変更があった場合は、氏名変更の登記がされているかどうか確認してください。

遡って氏名変更登記を行う

不動産を売却するときには、所有者である売主の印鑑登録証明書が必要です。

住所と同様に氏名についても、印鑑登録証明書に記載されている氏名と、登記事項証明書の「甲区」に記載されている氏名が違っている場合は、同一人物とはみられません。
同一人物であることを証明するためには、氏名変更登記を行わなければなりません。

氏名変更登記を行うためには、いくつか準備いただく書類があります。
その1つが、戸籍に関係する書類です。
たとえば、戸籍の記録事項証明書や戸籍謄抄本を用意しなければなりません。

このときに注意しておかなければならないことの1つは、戸籍関係書類(戸籍謄抄本)は、「変更前の氏名(登記事項証明書に記載されている氏名)」、「現在の氏名(氏名変更の登記を申請する氏名)」、また、「氏名の変更の日が記載されているもの」でなければならない、ということです。

戸籍関係書類(戸籍謄抄本)に「変更前の氏名」が記載されていない場合は、「変更前の氏名の記載がある戸籍関係書類(除籍謄抄本)」も併せて必要です。

戸籍は、本籍地のある市区町村に請求して取得します。

戸籍の附票は廃棄されているケースがあるため、誰でも取得できるわけではありません。
ご不明な場合は、事前に登記所や司法書士、弁護士などへお問い合わせください。

なお、戸籍関係書類(戸籍の記録事項証明書、戸籍謄抄本)とは別に準備いただく書類の1つとして、住民票があります。
この住民票は、市区町村が発行した証明書の原本で、本籍の記載のあるものでなければなりません。

住所や氏名の変更の登記申請が義務化

2021年(令和3年)4月に不動産登記法が改正されました。
改正によって、相続登記の義務化とともに、住所・氏名変更登記も義務化されることになりました。
住所・氏名変更登記は、2024年(令和8年)4月1日から義務化されます。

都市部では、住所・氏名変更登記の未了が所有者不明土地の主な原因となっているという調査結果があったようです。
所有権の登記名義人が住所・氏名を変更しても、その旨の登記がなされない原因として、2つ考えられます。

1. 住所・氏名変更登記の申請は任意とされており、かつ、変更をしなくても大きな不利益がない。
2. 転居等の度に、その所有する不動産について、それぞれ変更登記をすることが負担である。

そこで、住所・氏名変更登記の申請が義務化されることになりました。

1. 所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける。
2. 正当な理由がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処することとする。
※「正当な理由」の具体的な類型については通達等で明確化し、過料を科す具体的な手続についても省令等に明確に規定される予定です。

相続登記の義務化についてはご存知の方も多いでしょうが、住所や氏名の変更の登記申請についても義務化され、申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処せられる場合があります。

所有者不明土地や空き家増加の問題は、これからより深刻な状況となるでしょう。
過料の有無に関わらず、皆様には社会問題を改善する当事者意識をもっていただくことが望まれます。

住宅ローンの残債額と抵当権等の確認

住宅ローンなどの借入れをされている方、もしくは過去に住宅ローンを利用されていた方は、法務局備付の登記簿で、抵当権がどのようになっているか確認しましょう。

原則として、抵当権など、買主様の権利を阻害する権利関係はすべて抹消してから売り渡す必要があります。
住宅ローンを完済されているのに関わらず、抵当権が残ったままになっている場合があります。
抵当権が残ったままになっている場合は、事前に抹消されることをご検討ください。

また、残債がいくら残っているか、ローンの明細書などで確認しておきましょう。
住宅ローンを現在も利用されている場合は、所有権を移転すると同時に抹消を行う必要があります。
物件を売却した価格が残債に足りなければ、不足金を補わなければなりません。

共有している場合

売却を行う場合は、所有者全員の意思確認が必要となります。
原則として、所有者全員が売却をすることに同意していなければなりません。

売主には、ご高齢の方もいらっしゃるかもしれません。
もし、所有権を引き渡される前に、売主様が意思確認をできない状態になる(最悪のケースとしてお亡くなりになる)と、事態は複雑になります。
売主が高齢である、もしくは体調が良くないようであれば、お早めに準備なさる方が望ましいでしょう。
本人が意思確認をできるかどうかは、とても大切なことです。

不動産一括査定サイトの利用方法と不動産業者の選び方

査定をお願いして価格の提案を受けるときには、売りに出すまでにどのような準備をしなければいけないか、確認しておきましょう。

査定は、どうしても価格に目がいってしまいますが、大切なことは価格だけではありません。
安心して売却をできるための、不動産業者のパートナーを見つけなければなりません。

不動産の一括査定サイトを利用することも、1つの方法です。
地元や近くの不動産業者の店舗事務所へ訪問されて、ご相談されることも1つの方法です。
各種Webサービスや各社ホームページを検索・閲覧して、ご相談されることも1つの方法です。
ご友人や知人の方からご紹介していただいて、ご相談されることも1つの方法です。
どのような方法でも良いと思います。

大切なことは、どの不動産業者へお願いするか、安易に決めてしまわないことです。
大切なパートナーを探す気概で望んでいただくことが良いと思います。

一括査定サイトだけを利用すればよいというわけではない

「不動産一括査定サイト」のことや、「不動産業者の選び方」については、多くの方にとって関心があることでしょう。
しかし、正直に申し上げますと、私には気が進まない話題の1つです。
ややもすると、否定するようなことを申し上げる可能性があるからです。

しかしながら、私が知っていることをお伝えしておくことや私の考え方をお伝えしておくことには意味があることであると考え、お話しすることにしました。

さて私事ではありますが、スニーカーを新調しようと思っておりまして、あるメーカーの商品を候補に考えました。
その商品は、メーカーの自社サイトやECサイトなどWebで購入することもできますが、Webサービスでスニーカーを購入する場合、最も気になることの1つはサイズでしょう。
そこで、さまざまなWebサイトやクチコミを検索し調べてみましたところ、概ね普段履いているスニーカーのハーフサイズかワンサイズ大きいものを購入すると良いとありました。

ここで、皆様ならば、どのようにするでしょうか。
メーカーの自社サイトやECサイトなどWebサービスを使って、普段履いているスニーカーのハーフサイズかワンサイズ大きいものを購入されるでしょうか?

ここまで申し上げれば、おそらく皆様お気づきでしょう。
実際に店舗に行ってそのスニーカーを履いてみること、そして店舗のスタッフの方のアドバイスを聞いてみること、おそらくこれがベターであると。

先ほどのスニーカーに関して、さまざまなWebサイトやクチコミを検索し調べてみましたところ、概ね普段履いているスニーカーのハーフサイズかワンサイズ大きいものを購入すると良いとありましたが、全員がまったく同じ答えではありませんでした。

人によって、異なるのです。
私は歩き方や靴の専門家ではありませんが、どのような足型をして、どのような歩き方をしているのか、まったく同じ人はいないでしょう。

一方で、洗剤など日用品で、普段から同じものを購入し利用している商品であれば、Webサービスは手軽で便利な購入手段です。
手軽に購入したいのであればWebサービスを利用しますが、足にあったスニーカーを選びたいのであれば、実際に店舗に行くべきでしょう。

私たちが扱っているものは、不動産です。
不動産も、1つとして同じ不動産はありません。

また、売却や購入による金額、その手続きに必要なコミュニケーションなどを考えれば、安易に決めるべきではないと、皆様、心の中ではお気付きでいらっしゃるはずです。

あなたは人生のパートナーを、Webサービスを使ってワンクリックで選ばれますか?
実際にお会いして、何度か共にし、ご両親など信頼される方に相談されたうえで決められませんか?
不動産は、人生で何度も取引する商品ではなく、また、おそらく最も高額な取引を行う商品です。
慎重に検討されることは、ごく自然なことのように私は考えます。

一括査定サイトの利用は不動産売却の第一歩

現代では、さまざまなサービスがWebでできるようになっており、不動産売却についても、不動産一括査定サイトが複数あります。
それぞれ利用者様が簡単に利用できるよう工夫されており、入力等にも手間や時間がかからないと謳われているものが多いようです。

各種サイトには多くの不動産業者が登録されており、不動産一括査定サイトで入力された情報がそれぞれの不動産業者へ送られます。
近頃では、AIチャットボット「ChatGPT」が話題となっています。
現在では、送られた情報をもとに、不動産業者の営業担当者が調査を行い、利用者の方へ結果が送られるようになっていますが、将来は人的な力ではなくAIによって解答されるようになるかもしれません。

ポイントは、実際に誰も対象の不動産を見ておらず、また利用者様の詳しい事情や思いを知ることなく、査定を行なっていることです。

不動産一括査定サイトで入力された情報によって、対象不動産の土地面積や建物面積、建物の建築年数などは、以前ブログでも取り上げました登記情報などから取得することができます。
また場所が特定できれば、地域の各種法令上の制限などもある程度調査を行うことができますので、おおよその金額査定を行うことはできます。

当然これらの情報に基づく調査は、どの不動産業者であっても同様に行いますので、大きな違いはでません。
そのため、不動産業者の一括査定による金額に違いは、他の査定業者との駆け引きであり、業者の判断によるところが大きいと思われます。
実際の取引金額よりも高額の査定を行い、言葉上手にあたかも実行できるような説明をされることも考えられます。

不動産一括査定サイトはなぜ「無料」で利用できるか

不動産一括査定サイトから得た情報は、各業者とも自らの案件にしたいという思いは相当に強いと考えてください。
もし、不動産一括査定サイトを利用されるようなことがあれば、その業者に対して、不動産一括査定サイトの運営業者にどれくらいの費用を払っているか、聞いてみてください。
答えてくれる業者があるかはお約束できませんが、おそらく皆様が想像されているよりも高額な費用を払っています。
そのため、不動産業者は、利用者様に対して執拗に営業セールスを行います。

利用者様にとっては、対象不動産を売却した場合どれくらいの金額で売却できるか、調べてみたいという思いから、利用される方も多くいらっしゃると思います。
無料で利用することができますので、良い方法のように思われます。

しかし、その問合せをすることによって、不動産業者は運営業者に対して高額な費用を払っています。
不動産業者からみれば、費用に見合った売上を上げなければなりません。
この思いの強さの違いが、利用者様と不動産業者の不満につながっていることでしょう。
実は、不動産一括査定サイトは、不動産業者も決して満足しているサービスとは言えません。

不動産一括査定サイトに登録している不動産業者は、ある程度の資金力がなければ、サービスを維持することができません。
1. 問合せがあった利用者様のうち、何パーセントのお客様が実際に売却を行なわれたか?
2. 売却された利用者様は、何件の不動産業者に問合せを行ったか?
3. 売却された利用者様から、どれくらいの売上を上げることができたか?

これらの数字と、運営業者へ支払っている経費とを比べて、採算が合うか?
不動産業者は、対象不動産の売却を行うまで、報酬を得ることはできません。

問合せをいただいてから対象不動産の売却を行うまでには、相応の日数がかかります。
その間にも、運営業者への支払いは発生しています。
これが、不動産業者にある程度の資金力がなければ、不動産一括査定サイトへの登録を維持することができない理由です。

無料で利用できるサービスほど、心配なサービスはないと言われます。
不動産一括査定サイトについては、登録している不動産業者が、運営業者に対して、高額な費用を払っていることによって維持されています。
運営業者のスポンサーは、登録している不動産業者です。
皆様は、そのことをご理解いただいたうえで、利用なさると良いでしょう。

不動産売却時に仲介業者と担当者はどう選ぶか

現在はWebサービスが進化しており、情報収集など多くの面でなくてはならないものとなっておりますが、実際に不動産売却を行う場合は、不動産業者と担当者に頼らなければならないでしょう。
どのように不動産業者と担当者を選べば良いか、考えていきましょう。

先述しましたAIチャットボットChatGPTは、素晴らしい可能性を秘めた対話型サービスのようです。
通常のチャットボットと同じくテキスト入力用スペースがあり、そこに質問やコマンドを入れると「回答」という形で文書を作成します。

「なぜ空は青いのか?」という質問にも答えてくれます。
「自動車メーカー向けに部品を製造しているが、部材コストが上昇したので、値上げをしたい。メーカーに相談したところ、値上げをするならば他社へ変えると回答されました。どのようにすれば良いか?」というような質問にも答えてくれます。

しかし、現段階のところ、ChatGPTは、受け答えの正しさよりも、自信満々かつスムーズにウソをつくサイコパスのような印象を受けます。
ChatGPTはインターネット上にあるデータによって教育されているため、フェイクニュースによる誤った情報に基づいた回答をすることもありますし、逆に正しい回答をすることもあります。

むかしは、新聞に書いてあることは正しいと信じていた国民が、メディアを操る政府のプロパガンダに乗せられてしまいました。
それがインターネットの時代になると、「SNSの情報」や「ググって見つけた情報」が正しいと、多くの人が信じ込むようになってしまいました。

GhatGPTがMicrosoft社の検索エンジンに使われるようになるようですが、その流れはさらに加速するでしょう。
今後は、ChatGPTによる回答が正しいと信じた人々によって、誤った情報が拡散する時代が来ようとしています。

私はテクノロジーを否定するつもりはありません。
むしろ、テクノロジーの進化は必然であり、うまく活用すれば大いに役立つものと期待しています。

しかし、この「GhatGPT」について、あたかも知能があるかのように振る舞うことは、とても危ういと危惧しています。
言葉の並べ方が上手で、口先が達者で、あたかも価値を提供しているような中身がないコンサルタントのようなものです。

長くなりましたが、私が「GhatGPT」を引用した理由は、仲介業者やその担当者の言動、またその仲介業者のホームページに書かれている内容に対して、信用できるか否かを判断する目利きが必要であると、考えているためです。

方法は自由、目利きが大切

仲介業者は、不動産一括査定サイトを通じて、ご相談されることも1つの方法です。
地元や近くの不動産業者の店舗事務所へ訪問されて、ご相談されることも1つの方法です。
各種Webサービスや各社ホームページを検索・閲覧して、ご相談されることも1つの方法です。
ご友人や知人の方からご紹介していただいて、ご相談されることも1つの方法です。
どのような方法でも良いと思います。

信頼できる不動産業者や担当者、一緒に仕事をしたいと思える不動産業者や担当者は、大手の仲介業者にもいらっしゃいますし、中小や地場の仲介業者にもいらっしゃいます。
また、逆も然りです。

信頼できない、一緒に仕事をしたいと思えない不動産業者や担当者は、大手の仲介業者にもいらっしゃいますし、中小や地場の仲介業者にもいらっしゃいます。

どのような方法で探していただいても良いでしょうが、結局のところ、大切なパートナーを探す気概で望んでいただくより、ほかはないでしょう。
敬意があるかどうか、ご自分との相性はどうか、仕事ができるかどうか、結果を出してくれるかどうか、そのような点からしっかりとお相手をお選びください。

不動産売却時の媒介契約の選び方について

一般的に不動産の売却をする場合、自分では買い手を探すことは難しいため、不動産仲介業者に媒介(仲介)を依頼することになります。

不動産の売却を依頼するときには、依頼する不動産仲介業者と媒介契約を締結します。
媒介契約には、「専属専任媒介契約書」、「専任媒介契約書」、「一般媒介契約書」の3種類があり、各契約によって定められた事項が異なります。

不動産仲介業者と媒介契約を締結するときには、詳しくその違いの説明を受け、契約内容を十分に理解したうえで契約しなければなりません。
しかしながら、どのように比較し検討すれば良いか、一般の方にはわかりにくいうえに、各契約に関する言説が、書籍やインターネットに多く溢れています。

媒介契約の種類は結論から考えるものではない

最初に申し上げておきたいことは、結論から考えては危ういということです。

媒介契約の選び方についてインターネットで検索していただくと、「一般媒介契約が望ましい」ということから述べられているものもあれば、「専任契約が望ましい」ということから述べられているものも見つかることでしょう。

このような主張や言説のポイントは、「この契約が良い」と、結論から述べられていることです。

「この契約が良い」、なぜならば「〜であるから」という構成で、最初から結論が決まっている主張方法です。
これでは議論になりません。

考える方向はまったく逆です。

不動産を売却する方の事情、売却をする不動産の特徴、売却をするときの市況・経済状況、競合物件の有無、購入対象者の客層、住宅ローンなど融資の状況、これらを考慮に入れたうえで、売却価格や売却方法を決めます。

その売却方法の1つが、媒介契約の選択です。
わかりやすい言説に頼ると楽かもしれませんが、売主と売却したい物件に合った売却方法を見つけることが最善策であると考えます。

置かれた状況を見極めてから結論を出す

世の中には、健康に良いとされている食事に関する言説が溢れています。
過去にも、納豆やヨーグルト、赤ワイン、豆乳、スムージー、低糖質な食事など、ほかにも思い出せない食品がたくさんあったことでしょう。

このような「健康食品」がブームになるとき、私はいつも訝しくみていました。
人はみな体質が違うのに、すべての人に対して健康に良いとされる食品などあるでしょうか。

例えば、私はお酒、アルコール類が苦手です。
しかし、お酒をたくさん召し上がる方もいらっしゃいます。
ほかにも、アレルギー体質で、卵や乳製品、小麦、野菜類など、特定のものを召し上がることができない方もいらっしゃいます。
大豆に対してアレルギーがある方に、健康に良いから納豆を食べてください、とは言えません。

人はそれぞれ体質が違いますので、健康に良いとされる食品も人によって違うはずです。
安易に広告や言説を信用せず、自分に合った食品を探すべきでしょう。

不動産の売却方法も、同じです。
不動産にもそれぞれ違いがあり、同じ物件はありません。
不動産を売却される売主も、それぞれご事情やお考えが違います。

ほかにもあります。
売却されるとき、世の中の景気はどのような状態でしょうか。
売却されるとき、近くで競合する不動産はどのようなものが、どれくらいあるでしょうか。

さまざまな状況を考慮して、売主と売却したい物件に合う契約を選ぶべきでしょう。

媒介契約の種類について

さて、媒介にあたり、依頼者である売主の保護、取引の安全および流通の円滑化を図るため、媒介契約の書面化が義務付けられています。

媒介契約には、「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類あります。

不動産仲介業者は、媒介契約を締結する際には、依頼者である売主にそれぞれの契約の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認したうえで、媒介契約を締結し、直ちに媒介契約書面を交付することになっています。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約では、依頼者である売主は、売却目的の物件の売買または交換の媒介または代理を、ほかの不動産仲介業者に重ねて依頼することができません。
また、依頼者である売主は、売主自らが発見した相手方と、売買または交換の契約を締結することができません。

売却の依頼を受けた不動産仲介業者は、売却目的の物件を、国土交通大臣が指定した指定流通機構に登録しなければなりません。

指定流通機構へ登録したときは、遅滞なく登録を証する書面を、依頼者である売主に対して交付します。
指定流通機構への登録の期日を、媒介契約を締結してから遅くても5日以内(売却の依頼を受けた不動産仲介業者の休業日は含みません)に設定しなければなりません。
なお、指定流通機構(レインズ)については、後述します。

また、売却の依頼を受けた不動産仲介業者は、依頼者である売主に対し、1週間に1回以上の頻度で業務の処理状況を報告しなければなりません。

専任媒介契約

専任媒介契約では、依頼者である売主は、目的物件の売買または交換の媒介または代理を、ほかの不動産仲介業者に重ねて依頼することができません。
ただし、依頼者である売主は、売主自らが発見した相手方と、売買または交換の契約を締結することができます。

売却の依頼を受けた不動産仲介業者は、売却目的の物件を、国土交通大臣が指定した指定流通機構に登録しなければなりません。

指定流通機構へ登録したときは、遅滞なく登録を証する書面を、依頼者である売主に対して交付します。
指定流通機構への登録の期日は、媒介契約を締結してから遅くても7日以内(売却の依頼を受けた不動産仲介業者の休業日は含みません)に設定しなければなりません。
なお、指定流通機構(レインズ)については、後述します。

また、売却の依頼を受けた不動産仲介業者は、依頼者である売主に対し、2週間に1回以上の頻度で業務の処理状況を報告しなければなりません。

一般媒介契約

一般媒介契約では、依頼者である売主は、目的物件の売買または交換の媒介または代理を、ほかの不動産仲介業者に重ねて依頼することができます。
また、依頼者である売主は、自ら発見した相手方と、売買または交換の契約を締結することができます。

指定流通機構への登録は、任意で行うことができます。
なお、指定流通機構(レインズ)については、後述します。

一般媒介契約には、「明示型」と「非明示型」の2種類があります。

一般媒介契約では、複数の不動産仲介業者に重ねて媒介を依頼できるため、契約締結時に、ほかにどの不動産会社に媒介(売却)を依頼しているかを告知(明示)しなければなりません。
これを「明示型」と言います。

一方、ほかの不動産会社に重ねて媒介を依頼する場合であっても、一般媒介契約書の特約に、ほかに依頼する不動産を明示しない旨を記載することで、告知する必要がない「非明示型」があります。

指定流通機構(レインズ)とは

媒介契約書に、「国土交通大臣が指定した指定流通機構」とありますが、指定流通機構とは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構で、通称「レインズ」と呼ばれています。

不動産流通機構は公益財団・公益社団法人として、全国を4つのエリアに分け運営されており、各団体は各地域の不動産会社を会員として組織されています。
ここに全国の不動産業者が加入し、ネットワークで結ばれています。

不動産を購入したい、部屋を借りたいと不動産会社を訪れたとき、不動産会社から希望条件に沿う様々な物件を紹介されるでしょう。
これは、不動産会社が「レインズ」という業者間の物件情報ネットワークを利用しているからです。

なお、物件の売却を依頼された不動産会社には、「専属専任媒介契約」は媒介契約締結の翌日から5日以内、「専任媒介契約」は媒介契約締結の翌日から7日以内に、指定流通機構(レインズ)に物件を登録する義務があります。
レインズに登録された物件情報は、物件の購入を依頼されている不動産会社と即座に共有され、取引成立の迅速化を促しています。

そのため、売却を依頼された不動産会社からしか情報が公開されないというわけではありません。
一定期間後には、全国の不動産会社と物件情報が共有されます。

一方で、「一般媒介契約」は、指定流通機構(レインズ)に物件を登録する義務はありません(任意で登録することはできます)。
「一般媒介契約」は、いくつかの不動産会社に販売依頼ができるなど自由度が高い一方で、指定流通機構(レインズ)に物件を登録する義務がなく、売却活動の状況について不動産会社が報告する義務がありません。
依頼者である売主が売却について受動的な姿勢では、良い結果にはつながりにくいでしょう。

不動産会社が専任媒介契約を勧める理由

不動産仲介業者が、「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」を勧める傾向が多いことについて、論争になることがあります。

「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」では不動産業者の間で競争がおきないために、「一般媒介契約」を勧める方がいらっしゃいます。

複数の不動産仲介業者に媒介を依頼された場合、仲介できる不動産業者は原則として購入希望者様を斡旋した不動産業者1社です。
つまり勝者総取り方式です。
そのため、各社に、より早く成約できるように競い合うのが良いということです。

しかし、不動産仲介業者である立場からみると、必ずしもそうとは言えません。

なぜなら、勝者総取り方式では、不動産仲介業者は、どれだけ広告費や人材、時間や手間を投資しても、購入希望者様を斡旋できない可能性があるからです。
ましてや、依頼されている不動産仲介業者が多ければ多いほど、自社で成約できる確率は低くなります。
不動産業者にとっては、自社で成約できる見込みが低い案件を、優先にはできないでしょう。

不動産の属性や依頼者である売主の希望価格、市場性を考慮して、時間や手間をかけて投資した分に対するリターンが見込めないならば、投資を避けると考えるでしょう。

逆に「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」であれば、購入希望者様を斡旋することができれば仲介ができるため、投資に対するリスクが低い案件です。
経営者であれば、どちらを優先するでしょうか。

「一般媒介契約」には、「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」のように、売却活動について定期で報告する義務もありません。
「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」を勧める不動産業者は、もしかすると「一般媒介契約」では真剣に営業活動を行いません、という言葉の裏返しかもしれません。

一方で、「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」を勧める不動産業者もまた、結論ありきの提案です。
依頼者である売主の意思を尊重しているようにはみえません。

また、「一般媒介契約」で勝者総取り方式によって不動産業者を競わせることを勧める主張も結論ありきの提案であり、不動産業者は利用すれば良いという意図しか感じることができません。

売却活動から引渡しまでの流れ

査定をして、売却を始める準備が整いましたら、媒介契約を締結します。

その後は、売却活動を行い、購入希望者が見つかりましたら売買契約を行います。
そして、売買契約に基づき、物件の引渡しを行う準備を進めていただきます。

売却活動と売買契約

媒介契約を結んだ不動産業者と一緒に、売却活動を進めます。
不動産業者は、購入希望者を募り、内覧をセッティングします。
売主が居住中であれば、内覧日時を相談しながら、希望者の方に見ていただく準備を行います。

不動産の買い手が決まりましたら、売買契約を締結します。
売買契約のときに、売買の意思確認として、買主から手付金を受け取ることが一般的です。

売買契約に関して大切なことは過去のブログで広く取り上げています。
事案ごとによっても大切なことは違うでしょう。
わからないことは不動産業者とも確認して、慎重に行うようにしましょう。

決済取引と物件の引渡し

物件の引渡しは、決済取引と同時に行うことが一般的です。
また、所有権を売主から買主へと移す所有権移転登記の手続きを同時に行います。
所有権移転登記は、買主が行うことが一般的となっておりますが、司法書士に手続きを代行してもらうと安心でしょう。

一方で、売主には、抵当権抹消登記が必要なケースがあります。
抵当権は住宅ローンを全て返済していても、自動的に抹消されることはありません。
そのため、住宅ローンを利用して物件を購入した売主は住宅ローンを完済したら、必ず抵当権抹消登記を行うようにしましょう。

確定申告

不動産を売却すると、翌年に確定申告が必要になる場合があります。

確定申告は、不動産売却によって利益を得たとき、購入価格より売却価格の方が高かったときに行います。
利益に対して譲渡所得税を納めなければなりません。

確定申告は、売主の住所地の管轄の税務署が窓口となります。
わからないことは、税理士もしくは税務署へ相談すれば良いでしょう。

なお、不動産に係る税金については、後述します。

不動産売却にかかる手数料

不動産の売却にかかる諸費用には、下記のようなものがあります。

1. 仲介手数料
2. 登記に要する諸費用
3. 抵当権等抹消にかかる諸費用
4. その他の諸費用

大きくは「不動産業者へ支払う仲介手数料」、「登記に関係する諸費用」、「税金」、そして「個別の事情によって必要となる諸費用」が必要となります。

不動産業者へ支払う仲介手数料

不動産売買を仲介してもらったときには、仲介業者に対して仲介手数料を支払います。

仲介手数料は、宅地建物取引業法により上限金額が決まっています。
1. 200万円以下の部分:「売買価格の5%(+消費税)」
2. 200万円超400万円以下の部分:「売買価格の4%(+消費税)」
3. 400万円超の部分:「売買価格の3%(+消費税)」

誤解を招くかもしれませんので、例をあげます。

売買価格が「2,000万円」の場合
1. 200万円以下の部分:「200万円×5%(+消費税)」
2. 200万円超400万円以下の部分:「200万円×4%(+消費税)」
3. 400万円超の部分:「1,600万円×3%(+消費税)」

上記、1〜3を「合計した金額」が、仲介手数料の上限金額です。
計算しますと、下記のようになります。
1. 10万円(+消費税)
2. 8万円(+消費税)
3. 48万円(+消費税)
1〜3の合計は、66万円(+消費税)となります。

一般的に、仲介手数料について、「3%+6万円(+消費税)」と聞かれたことがあるかもしれません(売買価格が400万円超の場合)。
これは、400万円以下の部分が、「18万円(+消費税)」と、固定されることに由来します。
400万円に対する3%は12万円ですので、売買価格全額に対する3%に6万円を加えると同じ金額になります。

ところで、仲介手数料は、取引価額に比例して仲介手数料の上限金額が上がります。
近年、既存住宅の流通市場活性化が課題となっていますが、今後も増加が予想される空家の流通は課題とされています。
空き家の取引価額は低額帯が多く、仲介業者の受け取る報酬額は調査費用等の経費を含み、成約しても実質の報酬額では営業効率が低く、赤字にさえなることもあることから取引の停滞を生じさせていました。

こうした空き家流通の促進と低額取引の成約報酬の低収益性を背景に、2018年(平成30年)1月1日から低廉な空家等の媒介特例が施行されました。
物件価格400万円以下の宅地建物を対象に、売主からのみ最大18万円(+消費税)を上限として報酬を受領できるようになりました。

そして、2024年7月1日から、売買を対象とする低廉な空家等の媒介特例が拡充されます。
従前は400万円以下であった価格が、800万円以下の物件まで対象を広げました。
また、報酬の上限が、最大30万円(+消費税)に引き上げられました。
さらに、売主だけではなく買主からも最大30万円(+消費税)の報酬を受け取れるようになりました。

なお、売買価格には消費税を含みません。
例えば、売買価格が2,100万円で、その内訳が2,000万円と消費税100万円の場合、2,100万円に対して計算するのではなく、2,000万円に対して計算します。
ご注意ください。

※売主が、法人、もしくは個人事業者で取引年度に消費税の課税事業者である場合は、事業用の建物には消費税が必要です。個別には、税理士や税務官公署等へご相談ください。

登記に関係する諸費用

売主は、買主に対し、売買代金全額の受領と同時に本物件について、買主の名義に、所有権等の移転登記申請ができるように手続きを行わなければなりません。

登記申請に要する費用のうち、「売渡しに関する登記費用」および「本物件に関する所有権等登記名義人の住所、氏名の変更登記を要する場合の費用」は、原則として売主が負担します。
なお、「所有権移転等に要する登録免許税」および「所有権移転等に要する登記費用」は、原則として買主が負担します。

不動産売買の取引では、売主から買主へ、売買代金全額の授受が行われたと同時に、所有権移転を行うこととされています。
不動産売買は、時として金融機関の融資が伴う高額の商取引です。
確実に実行できるために、登記申請に関する手続きは司法書士へ委任します。

費用に関しては、ケースによります。

売主である登記名義人の住所が、現住所と異なっている場合、変更登記をしなければなりません。
売却不動産を取得されたときには所有権保存登記を行いますが、それ以後に転居をされた場合、法務局にて登記名義人の住所変更の登記をしなければなりません。

また、結婚などで氏名が変わった場合には、登記名義人の氏名変更の登記をしなければなりません。
売主が法人である場合、法人の商号や本店を変更もしくは移転しているときも、変更の登記をしなければなりません。

特に売主が個人である場合、登記名義人の住所、氏名に変更があった場合に変更の登記申請を行わなければならないことをご存知でない方が比較的多くいらっしゃいまして、そのままにされていることがあります。その場合は遡って住所変更を行わなければなりません。

なお、令和3年の不動産登記法の改正により、不動産を所有している場合の住所や氏名の変更の登記申請が義務化されます。
相続登記の義務化については、各種メディアでも取り上げられているためご存知の方も多いでしょう。
法改正される以前に所有している不動産も対象となっておりますので、相続登記や住所や氏名の変更の登記申請が済んでいない場合は、すみやかに手続きを行ってください。

他にも、不動産売却を行うときに住宅ローンの支払いがまだ残っている場合、融資を受けている金融機関により、後述する抵当権等が設定されています。
この場合、抵当権等を抹消しなければなりませんので、抹消に要する登記費用が必要です。

最後に、権利証(もしくは登記識別情報)を紛失されているときは、ご注意ください。
非常に重要な書類(もしくは情報)であるため、紛失等されないように保管しましょう。

万一紛失されていた場合は、一般的には、司法書士が売主本人と面談し、本人と認めるに足りるようであれば司法書士が本人確認情報を作成して、権利証(もしくは登記識別情報)の代わりに提出します。
この本人確認情報によって権利証(もしくは登記識別情報)がなくても登記はできますが、司法書士にとっても、売主本人かどうか確認する責任とリスクが生じるため、望んで行う手段ではありません。

不動産の抵当権等抹消にかかる諸費用

売主は、買主に対し、本物件について、所有権等の移転時期までに先取特権、抵当権等の担保権、地上権、賃借権等の用益権その他名目形式の如何を問わず、買主様の完全な所有権等の行使を阻害する一切の負担を除去抹消しなければなりません。

先述のとおり、不動産売却を行うときに住宅ローンの支払いがまだ残っている場合、融資を受けている金融機関により、後述する抵当権等が設定されています。
この場合、抵当権等を抹消しなければなりません。

抵当権も登記であり抹消登記申請にも費用が必要ですが、そもそも抹消するためには、残債を完済しなければ、抹消することはできません。
そのため、残債の金額を確認しておく必要があります。

金融機関に残高証明書の発行を申請していただければ、残高を確認することができます。
売買代金を残債の支払いに充当させることはできますが、その方法や手続きについては、事前に金融機関に相談してください。

なお、住宅ローンを完済されているにもかかわらず、抵当権の抹消登記が済んでいない場合もあります。
住宅ローンを完済されているため、金融機関も融資を受けた売主にも実害がないため、放置されていることがあります。
ご注意ください。

不動産売却に要するその他の諸費用

不動産売却に要するその他の諸費用として、主に下記があります。
1. 印紙税
2. 土地境界確認、測量に要する諸費用
3. 建物解体費用
4. 不用品等の処分に要する諸費用
5. 引越し等の諸費用
6. 不動産の譲渡所得にかかる税金


印紙税の税額は、課税文書に記載された売買代金の金額に応じて定まります。

不動産に関わる課税文書には、不動産の売買契約書の他にも、建設工事の請負契約書や住宅ローン等のための金銭消費貸借契約書などがあります。
それぞれ文書によって印紙税は異なりますが、2024年(令和6年)3月31日までに作成される不動産の売買契約書および建設工事の請負契約書については、税率の軽減措置が設けられています。

不動産売買契約書に貼付する印紙税
(軽減税率適用後の金額)
「売買代金1万円未満」→「非課税」
「売買代金1万円以上、50万円以下」→「200円」
「売買代金50万円超、100万円以下」→「500円」
「売買代金100万円超、500万円以下」→「1千円」
「売買代金500万円超、1,000万円以下」→「5千円」
「売買代金1,000万円超、5,000万円以下」→「1万円」
「売買代金5,000万円超、1億円以下」→「3万円」
「売買代金1億円超、5億円以下」→「6万円」
「売買代金5億円超、10億円以下」→「16万円」
「売買代金10億円超、50億円以下」→「32万円」
「売買代金50億円超」→「48万円」
「記載金額がないもの」→「200円」
※上記は2024年(令和6年)3月31日までの軽減措置に基づく情報です。


土地、もしくは一戸建てを売却するときには、原則として土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示しなければなりません。

境界標がないときは、売主は、新たに境界標を設置して境界を明示することになります。
また、土地の面積が不明瞭と考えられるときなど、実測による面積により取引を行うこともあるでしょう。

境界確認や境界標の設置、測量は有資格者によって行います。
費用はケースによって異なりますので、事前に不動産業者や土地家屋調査士など有資格者へご相談ください。

土地を更地で引渡す場合は、既存の建物の解体に要する費用が必要です。

時に、建物の床面積に対して、坪単価や平米単価を乗じて計算する方法でお話しされることがあるようですが、あまり参考にはなりません。
建物の構造はもちろん、解体作業のスペース、解体したガラなどの搬出方法、隣地など近隣住民のご事情や道路の状況など、さまざまな要因が影響して作業に要するコストが変わります。

費用はケースによって異なりますので、事前に不動産業者や解体業者などへご相談ください。


例えば、中古一戸建や中古マンションを売却する場合、諸設備も売却の対象となるものもあります。
一方で、買主が必要としない設備や家具、家電、その他不用品については、搬出するか処分したうえで引き渡さなければなりません。

すべてを住み替え先に搬出することができれば良いですが、叶わないこともあるでしょう。
費用はケースによって異なりますので、事前に不動産業者や不用品の処分業者などへご相談ください。
思い入れがたくさん詰まった設備や家具、家電を処分する場合は、思いを整理する時間も必要です。
お早めにご準備ください。


住み替えをされる場合や搬出する設備や家具、家電がある場合は、引越し等の諸費用が必要です。
ケースによっては、売却と購入を並行して不動産の買い替えをされることもあるでしょう。
この場合は、引越しをして不動産を引渡す猶予期間は多くないでしょうから、すみやかに行えるよう事前の準備が必要です。
費用はケースによって異なりますので、事前に引越し業者などへご相談ください。

不動産の譲渡所得にかかる税金

売却によって得た所得について、確定申告をしなければなりません。
不動産の取引を行うときには直接必要となるわけではありませんが、この確定申告によって譲渡所得税などを支払わなければならないことがあります。

※記事の内容は、掲載時点の法令・情報に基づいています。そのため、最新の法令や情報のご確認をお願い致します。
※税金の内容によっては、非税理士により行うことが禁止されている税理士業務に抵触する可能性があります。具体的なご相談は、必ず税理士や税務官公署等にお願い致します。

不動産の譲渡所得にかかる税金のしくみ

不動産の譲渡所得には、所得税(国税)と住民税(地方税)が課税されます。
土地建物等の不動産等の譲渡所得は、「申告分離課税制度」となっており、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納めます。

また、売却した不動産の所有期間が「5年」を超えるかどうかで税率が区分されており、5年以下のものより、5年超のものは税率が低くなります。
なお、一定の要件を満たす譲渡には、軽減税率が設けられています。

不動産の譲渡所得とは

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの「資産」を譲渡することによって生ずる「所得」をいいます(ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による「所得」は、譲渡所得にはなりません)。

つまり、不動産の譲渡所得とは、土地や建物を売却したときに生ずる「所得」のことをいいます(「所得」は会計上でいう「利益」に相当します)。

なお、譲渡所得の金額は、土地や建物を売却した売買代金(収入金額)そのものではありません。
土地や建物の売却代金から、必要経費などを差し引いて算出した金額のことをいいます。

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、分離課税といい、給与所得や事業所得などの他の所得とは別に計算します。

ただし、確定申告の手続きは、他の所得と一緒に行います。
分離課税の譲渡所得の課税対象には、借地権や耕作権などの土地の上に存する権利を含みます。また、海外に所在する土地や建物も含まれます。

不動産の譲渡所得にかかる税額の計算式

税額は、譲渡所得金額に対して税率を乗じて計算します。
①「税額」=「譲渡所得金額」×「税率」

税率は、売却した不動産の所有期間が5年を超えるかどうかで区分されております。
譲渡年の1月1日時点における所有期間が5年以下のものは短期譲渡所得、5年超のものは長期譲渡所得とされます。
短期譲渡所得に比べて、長期譲渡所得は税率が低くなります。

(1) 短期譲渡所得
①「所得税」=「譲渡所得金額」×「30.63%」
②「住民税」=「譲渡所得金額」×「9%」

(2) 長期譲渡所得
①「所得税」=「譲渡所得金額」×「15.315%」
②「住民税」=「譲渡所得金額」×「5%」

備考
※所得税の税率には2.1%の復興特別所得税が含まれています。平成25年から令和19年までは、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付することになります。
※短期譲渡所得について、国、地方公共団体等に対する土地等の売却の場合は、軽減税率が設けられています。
※長期譲渡所得について、優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡の場合は、軽減税率が設けられています。
※長期譲渡所得について、不動産の所有期間が5年ではなく10年超のマイホームを売却した場合は、軽減税率が設けられています。マイホーム売却による譲渡益から3,000万円を特別控除する特例との併用が可能です。

次に、「譲渡所得金額」についてお話し致します。

不動産の譲渡所得の計算式

不動産の譲渡所得の金額は、次のように計算します。
①「譲渡所得金額」=「譲渡益」-「特別控除額」
②「譲渡益」=「売買代金」-「取得費」-「譲渡費用」

土地や建物の「売却代金」から、必要経費として「取得費」および「譲渡費用」を差し引いて算出した「譲渡益」から、「特別控除」などを控除した金額のことをいいます。

次に、「取得費」、「譲渡費用」、「特別控除」について、それぞれお話し致します。

不動産の取得費

不動産の取得費とは、売却不動産の取得価額(売却された土地や建物の購入代金)と取得後の設備費、改良費等の合計額をいいます。

建物を、店舗や業務用など事業用に使われていた場合は、譲渡時までの減価償却費の累計額を、先の合計額から差し引いたものが取得費となります。

建物を、マイホームなど非業務用に使われていた場合は、次のように計算した減価償却費相当額から差し引いたものが取得費となります。
①「減価償却費相当額」=「売却不動産の取得価額」×「0.9」×「非業務用建物の償却率」×「経過年数(6ヶ月以上の端数は1年、6ヶ月未満の端数は切り捨て)」

【備考】
※木造建物の償却率:0.031
※木骨モルタルの償却率:0.034
※(鉄骨)鉄筋コンクリートの償却率:0.015
※軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3mm以下の建物の償却率:0.036
※軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3mm超4mm以下の建物の償却率:0.025
※減価償却費相当額は、建物の取得価額の95パーセントが限度。

なお、先祖代々の土地など取得費が不明な場合や、実際の取得費が収入金額の5%を下回る場合は、収入金額の5%を概算取得費とすることができます。
また、相続財産を一定期間内に譲渡した場合は、譲渡資産にかかる相続税のうち一定の額を取得費に加算できる特例が設けられています。

取得費となるものの例は、次のとおりです。
(1) 売却した土地や建物の購入代金
(2) 売却した建物の建築代金
(3) 購入時の仲介手数料
(4) 購入時の登録免許税や不動産取得税、印紙税などの税金
※マイホームなどの非業務用の建物に限られます。
※固定資産税・都市計画税は取得費とはなりません。
(5) 購入時の建物の立退料、建物の解体費
(6) 土地購入後の設備費、改良費
(7) 土地購入時の造成費用、測量費
(8) 借入金の利子(土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子)

【備考】
※事業所得などの必要経費に算入されたものは含めません。

不動産の譲渡費用

不動産の譲渡費用とは、土地や建物を売却するために直接かかった費用です。

譲渡費用となるものの例は、次のとおりです。
(1) 土地や建物を売却するために支払った「仲介手数料」、「売主負担の印紙税」、「広告料」、「調査測量費」
(2) 貸家を売却するため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う「立退料」
(3) 土地などを売却するため、その上の建物を取り壊したときの「取壊し費用」と「その建物の損失額」
(4) 借地権を売却するために、土地の地主の承諾をもらうために支払った「名義書換料」など

備考
※修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売却した代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

不動産の特別控除

一定の要件を満たす不動産の売却(マイホームや空き家の売却、国や地方公共団体などが、公共事業のための収用等による売却など)については、特例の適用を受けることで、譲渡所得から100万円から5,000万円を特別控除することができます。

不動産の譲渡所得に関する特別控除はいくつかあります。
(1) マイホームを売却した場合
(2) 被相続人の居住の用に供されていた空き家等を売却した場合
(3) 収用等に伴い代替資産を取得した場合
(4) 収用等により土地建物を売却した場合
(5) 特定土地区画整理事業等のために土地等を売却した場合
(6) 特定住宅地造成事業等のために土地等を売却した場合
(7) 農地保有の合理化等のために農地等を売却した場合
(8) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を売却した場合
(9) 都市計画区域内の低未利用土地等を売却した場合

他にも、事業用資産を買い替えした場合の特例もあります。
マイホームや空き家の売却に関する特別控除は頻度が高く、詳しくは、別のブログでお話し致します。

不動産売却にかかる消費税

不動産を売却するとき、または不動産を購入するときに消費税および地方消費税(以下「消費税等」といいます)は必要でしょうか。
答えは、消費税等が必要なものもあれば、必要ではないものもあります。

不動産売買は高額の商取引であるため、消費税等の影響は小さくありません。
売却する方も、購入する方も、消費税が課税されるかどうか理解のうえ、取引に臨まなければなりません。

また、2023年10月1日から、適格請求書等保存方式、つまりインボイス制度が導入されました。
この制度のポイントは、請求書等に登録番号および税率区分ごとの消費税額等が新たに記載されることです。
インボイス制度にも関わる消費税等について、改めて理解をしなければいけないでしょう。

今回は、不動産を売却もしくは購入するときに関わる消費税等について、お話し致します。

※記事の内容は、掲載時点の法令・情報に基づいています。そのため、最新の法令や情報のご確認をお願い致します。
※税金の内容によっては、非税理士により行うことが禁止されている税理士業務に抵触する可能性があります。具体的なご相談は、必ず税理士や税務官公署等にお願い致します。

消費税等について

まずは消費税等について、理解をしましょう。
(消費税が課税される取引には、併せて地方消費税も課税されます。)

消費税等は、商品、製品の販売や、サービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税される税金です。
消費し支出するという行為に対して、担税力(担税能力)、つまり税金を負担できる力(能力)があることを認めるという考えに基づいています。

消費税等は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税されますが、生産、流通などの各取引段階で、二重にも三重にも税がかかることがないよう、税が累積しない仕組みが採られています。

消費税等は、国内における消費に担税力を求めて、事業者が行う商品の販売等によって得られた売上に対して課税する形を取っています。
商品などの価格に上乗せされた消費税等は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。

消費税等は、日本国内において、事業者が、事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け、および役務の提供について課税されます。
外国から商品を輸入する場合も、輸入のときに課税されます。

商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは、課税の対象となります。

しかし、これらの取引であっても、消費に負担を求める税としての性格から、課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮に基づくものに、課税しない非課税取引が定められています。

この消費税等が課税されない非課税取引に、不動産取引に関わる取引が含まれています。
それが、土地の譲渡および貸付け、そして住宅の貸付けです。

その、課税期間の、基準期間における課税売上高が、1,000万円を超える事業者は、消費税等の納税義務者(課税事業者)となります。
なお、個人事業者の課税期間は暦年、基準期間は前々年にあたります。
法人の課税期間は事業年度、基準期間は前々事業年度にあたります。

基準期間における課税売上高が、1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。

特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間です。
法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日、以後6か月の期間のことをいいます。
なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

基準期間の、課税売上高および特定期間の課税売上高等が、1,000万円以下の事業者(免税事業者)は、その年(法人の場合は事業年度)は、納税義務が免除されます。

なお、免税事業者でも課税事業者となることを選択することができます。
また、適格請求書発行事業者の登録を受けている間は、納税義務は免除されません。

土地と建物では消費税等の扱いは違う

先ほど消費税等が課税されない非課税取引として、土地の譲渡があることをお話ししました。
なぜ、消費税等が課税されない非課税取引としてみなされるようになったのでしょうか。

一方、土地の譲渡は消費税等が課税されない非課税取引としてみなされるにも関わらず、なぜ、建物の譲渡は、同じようにみなされないのでしょうか。


会計には、減価償却という制度があります。
事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によって、その価値が減っていきます。

それらの資産の取得に要した金額は、その資産の使用可能期間の全期間にわたり、分割して必要経費としていくべきであるとされています。

価値が減少する資産は、価値を消費する資産としてみなされているのです。


土地に対する考え方は、建物とは違います。
土地は、時の経過により価値が減少しない資産であり、減価償却資産ではありません。
そのため、価値を消費する資産とは、みなされていません。

土地にも価格の変化があるだろうという声もあるでしょうが、それは市場や物価の変動による需要と供給の関係によるものと考えられています。
建物のように、時の経過によって価値が減少するものではないため、土地は価値を消費する資産にはあたらないとされているのでしょう。

土地は、価値を消費する資産として、みなされていません。
建物は、価値を消費する資産として、みなされています。

このことから、不動産売買が消費税等を課税する取引にあたるか否かは、下記のようになります。
不動産売買の対象が、土地の場合は、消費税等を課税しない。
不動産売買の対象が、建物の場合は、消費税等を課税する。

販売者(売主)に消費税等が課されないのであれば、購入者(買主)にも消費税等を支払う必要がないということになります。

ここに、もう1つポイントがあります。
それは、販売者(売主)が課税業者でないならば、購入者(買主)にも消費税等を支払う必要がないということにもなります。
基準期間の、課税売上高および特定期間の課税売上高等が、1,000万円以下の事業者(免税事業者)は、その年(法人の場合は事業年度)は、納税義務が免除されます。

そのため、一般個人のお客様が売却・譲渡する場合は、土地だけではなく、建物についても消費税は課税されません。
ただし、一般個人であっても、マイホームのような居住用不動産ではなく、賃貸にされているような投資用不動産を売却される場合は、消費税等を課税される可能性があります。
一般個人でも、事業者が、事業として対価を得て行う資産(建物)の譲渡にあたる取引であると、解される可能性があるためです。

販売者(売主)が不動産業者の場合は、事業として対価を得て行う資産(建物)の譲渡にあたる取引であるため、建物について消費税等が課税されます。


土地と建物について、消費税等が課税されるか否か、下記のようにまとめられます。

【売主が「個人」の場合】
◆土地     非課税
◆居住用建物  非課税
 ※ただし「新築戸建」の場合は、転売の事業目的とみなされ、課税される可能性があります。
◆投資用建物  課税される可能性があります。

【売主が「不動産業者」の場合】
土地      非課税
居住用建物   課税
投資用建物   課税

土地と建物以外の代金に対する消費税等の扱い

不動産の売却をするときや購入するときには、土地や建物の価格だけではなく、他にも諸経費等が必要です。
諸経費等にも、消費税が課税されるものと、課税されないものがあります。

以下で、消費税が課税される代表的な諸経費等について、取り上げます。


不動産売買取引時に、対象不動産の固定資産税と都市計画税の負担金額について、取り決めを行います。
一般的には、引渡し完了日の前日までの分が売主の負担、引渡し完了日以降の分が買主の負担としますが、売主と買主が、お互いに話し合って取り決めます。

さて、この固定資産税と都市計画税の清算金に、消費税等は課税されるでしょうか。

国税庁のホームページでは、下記のように説明されております。
「不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、または収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります。」

固定資産税と都市計画税の清算は不動産売買の契約に基づくものであって、固定資産税と都市計画税の納税義務とは関係がありません。
固定資産税と都市計画税の清算金は、売主と買主の利益調整のための金銭の授受であるため、消費税等は売買代金と同じように取り扱います。

売買代金について、売主が、法人、もしくは個人事業者で取引年度に消費税等の課税事業者である場合、事業用の建物には消費税等が課税されます。
上記に該当するときには、建物に相当する割合の固定資産税と都市計画税の清算金に対して、消費税等が課税されます。

清算を行うときには、注意しながら、お互いに話しあって取り決めましょう。


不動産売買の仲介手数料は、消費税等の課税対象となります。
不動産業者の仲介によって不動産を売却・購入するときに支払う仲介手数料は、仲介業者が課税事業者であれば、消費税等が課税されます。

なお、仲介業者が免税事業者の場合は、消費税等を課さないこともでき、事業者に判断を委ねられています。
免税業者も、仕入れを行う際に消費税を支払っているでしょう。
そのため一般的には、消費税等が課税されるでしょう。


不動産取引の司法書士の登記代行業務は、消費税等の課税対象となります。

消費税等は、商品、製品の販売や、サービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税される税金です。
登記代行業務はサービスの提供にあたりますので、課税対象です。

終わりに

今回は、不動産売却の流れと税金や手数料などお金に関することについて、お話し致しました。

不動産を売却するときの流れを知って全体像をつかみ、そのうえでどのタイミングでどれくらいのお金が得られ、どのタイミングでどれくらいの支払いが必要となるか、確認しましょう。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。