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サービス付き高齢者向け住宅の補助金や税制のメリットについて【不動産活用】

サービス付き高齢者向け住宅の活用とは
前回のブログでは、サービス付き高齢者向け住宅の概要についてお話ししました。
急速な高齢化の対策として、厚生労働省と国土交通省の両者が縦割り行政を排して、都道府県知事への登録制度としてサービス付き高齢者向け住宅制度ができました。
土地所有者にとって、地域社会・福祉事業に貢献する事業として関心を集めています。

また、サービス付き高齢者向け住宅は、住宅建設費用の一部補助金の交付があり、税制上の優遇措置も設けられています。
事業計画を立案するうえでも、大切なポイントとなります。
前回から、数回にわたってサービス付き高齢者向け住宅への不動産活用について取り上げます。
今回は、サービス付き高齢者向け住宅の補助金や税制のメリットについて、お話し致します。

補助金の交付要件

補助金には、サービス付き高齢者向け住宅の新築・改修工事にあてられるものと、併設される高齢者生活支援施設の建設工事にあてられるものがあります。

補助金の交付を受けるには、サービス高齢者向け住宅としての登録に加え、次に掲げる補助金の交付要件を満たし、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局への交付申請を行わなければなりません。

要件のうち、いくつかを後述します。

参考:スマートウェルネス住宅等推進事業

10年以上の登録

原則として、サービス付き高齢者向け住宅として新たに登録するものが対象となります。

また、補助金の交付申請の際には、登録が完了していなければなりません。
ただし、既に登録されているサービス付き高齢者向け住宅の増築または改修工事により新たに住宅を追加整備し変更登録を行う場合は、完了実績報告の時点までに変更登録が完了していることが要件とされます。

サービス付き高齢者向け住宅の登録は5年ごとの更新制となりますが、補助金を受けたサービス付き高齢者向け住宅については、少なくても10年間は登録された状態が継続されるよう、必要に応じて更新を行わなければなりません。

適正な家賃

入居者の家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないように定めなければなりません。

具体的には、対象の住宅の所在地に近いサービス付き高齢者向け住宅から3件を抽出し、決められた算出によって予定家賃と近傍同種の住宅の家賃の1㎡あたりの家賃単価額を算出し、大きく超えていないことが条件となります。

建築資金

サービス付き高齢者向け住宅の建築資金として、金融機関からの借入を予定している場合は、交付申請前に金融機関と交渉し、融資内諾を得ておかなければなりません。

なお、金融機関の融資内諾を得るために、金融機関から融資内諾等以外の補助要件に適合していることを示す書類を求められた場合には、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局の事前審査で「補助用件適合確認済証」を受けることができます。

家賃の徴収方法

入居者からの家賃等の徴収方法が、前払いによるものに限定されていないものでなければなりません。
家賃等の徴収方法は、月払いなども選択できるようにしておきましょう。

市町村のまちづくり方針との適合性

地域行政との整合を図る趣旨で、原則として市区町村への意見聴取の実施が必要となっています。

住宅の戸数に関わらず、建設予定地の市区町村に事前相談を行ない、当該市区町村のまちづくりに支障を及ぼさないと認められるものでなければなりません。

なお、一部の市区町村については、意見聴取が不要の場合もあります。
建設予定地の市区町村の意見聴取の要否については、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局のホームページなどで確認ください。

サービス付き高齢者向け住宅の補助金の限度額

介護離職ゼロの実現に向けて、サービス付き高齢者向け住宅の追加供給を図るため、平成27年度補正予算による緊急募集および平成28年度整備事業より補助限度額の引き上げが行われました。

サービス付き高齢者向け住宅を新築などした場合、それまでは1戸当たり一律100万円であった補助限度額が、住戸部分の床面積が30㎡以上で基本設備を備えた夫婦型が1戸当たり135万円、既存ストック型は1戸当たり150万円、それ以外のものは1戸当たり120万円へ、現在の水準まで引き上げられました。

補助金の限度額は、都度変更される可能性があります。
申請前に最新の情報を確認してください。

新築の補助限度額

新築の場合の補助率は、サービス付き高齢者向け住宅および併設される高齢者生活支援施設の建設工事費の10分の1以内の金額とされています。

補助金は定額でなく。建設工事費の10分の1以内の額、もしくは1戸(もしくは1施設)当たりの補助限度額の合計額を比較し、少ない方の金額が補助額となります。

なお、併設される高齢者生活支援施設に対する補助金の合計額は、サービス高齢者向け住宅の補助金の額を超えることはできません。

改修工事の補助限度額

改修の場合の補助率は、サービス付き高齢者向け住宅および併設される高齢者生活支援施設への改修工事費の3分の1以内の額とされています。

なお、エレベーターを新たに設置する改修工事に限っては、補助率が改修工事費の3分の2以内の額とされ、補助限度額は設置するエレベーターの基数に1,000万円を乗じた額とされます。

また、サービス付き高齢者向け住宅等への改修を目的として住宅棟を取得した場合についても、取得費用の10分の1以内の額を補助率として、補助金の交付が受けられます。
ただし、用地費は取得費用に含むことはできません。

補助金の対象となる費用

補助金は建設請負工事費等が対象となりますが、一般的には建設請負工事費に含まれる費用であっても、補助対象外とされる項目があります。

また、消費税等を含めた費用が補助対象とされますが、補助金にかかる消費税等の仕入税額控除の申告をする場合は、消費税等は補助対象とはなりません。
相当額の補助金の減額または返還をしなければなりません。

補助対象外とされる費用

サービス付き高齢者向け住宅の補助金は、建物整備に掛かる費用全般が補助対象となりますが、用地取得費や工事外費用、敷地関連費用、設計関係、家具什器備品など、建物工事ではない費用は補助対象となりません。

[補助対象外とされる主な費用]
1. 補助対象建物の工事費に該当しない費用
・調査費、設計費、申請費など、建物工事費ではない費用
・宅地造成費など敷地形成にかかる費用(建物に付帯する外構工事は補助対象)
・従前建物解体費用(新築の場合)
・登録されない施設など、本事業が補助対象としない床利用分の工事費
・建物工事費に属さない付帯工事費

2. 敷地外にかかる工事費及び負担金など
・供給処理管の接続工事、公益事業負担金など
・取付道路、セットバック用地など建築敷地外を施行する費用

3. 建物に含まれない家具、家電製品、消耗品など
・ベッド、収納家具、事務机、カーテンなど建物に属さない家具什器備品
・家電製品として販売される個別の暖房器具や照明器具
・家電製品として販売される壁掛け式エアコン(住戸専用部分に設置する場合)
・単体で稼働するガス瞬間湯沸かし器
・交換用の予備照明管球(器具同梱の管球など初期設置品を除く)
・消火器、プロパンガスなど消耗備品
・介護装置、医療装置として導入される機器装置

4. 補助事業の特性として補助対象にできない指定工事費
・業務用厨房機器

消費税の仕入れ額控除の申告

サービス付き高齢者向け住宅の補助金は、消費税(および地方消費税)を含めた費用を補助対象としています。
ただし、建築主が消費税等の課税事業者であって、補助金を受けた工事費にかかる消費税等について、消費税の仕入税額控除の申告をする場合には、申告額に相当する消費税等は補助対象となりません。

したがって、消費税の仕入税額控除の状況に応じて、補助金に対応した消費税等仕入税額控除の相当額を請求する補助金からあらかじめ減額しておく、もしくは補助金受領後に確定申告で消費税等の仕入税額控除を申告した時点で、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事業事務局に報告し、相当額の補助金を返還するか、いずれかの手続きが必要となります。

なお、この消費税などの仕入税額控除にかかる対応が必要なのは、課税事業者が本則課税である場合に限られます。

補助金の交付決定の無効や返還

サービス付き高齢者向け住宅は、原則として高齢者等しか入居できません。
しかし、高齢者の入居が確保できない場合には、一定の期間、高齢者以外の者が入居してもよい取扱いがあります。

早期に登録・運営が中止された場合

サービス付き高齢者向け住宅の登録は5年ごとの更新制となり、補助金を受けたサービス付き高齢者向け住宅は、少なくとも10年間は登録された状態が継続されるよう必要に応じて更新を行う必要があります。

これに反して、早期に登録運営が中止された場合には、補助金返還等の対象となります。

高齢者以外の者への賃貸

10年間の間であっても、3ヶ月以上の間、高齢者の入居者を確保できない住戸は、高齢者以外の者に賃貸することができます。
ただし、この住戸の賃貸については、原則として一度限り、補助対象となる住戸数の2割以内、かつ、2年以内の期間を定めた借地借家法第38条に基づく定期建物賃貸借としなければなりません。

また、この場合、速やかに国土交通省に報告しなければなりません。
さらに、上記の範囲を超えた使用を行おうとする場合には、事前に協議をしなければなりません。

高齢者世帯以外の者に賃貸する期間中は、当該住戸についてはサービス付き高齢者向け住宅の登録廃止が必要となりますが、この期間中に本来の入居者である高齢者を確保するための取組みを実施し、高齢者世帯以外の者への賃貸借が終了した後に再登録します。

交付決定の取消し、補助金返還および罰則など

交付に際して附される条件、関係規定等に反する行為がされた場合には、次の措置が講じられることがあります。
・スマートウェルネス住宅等推進事業交付規程第14の規定による交付決定の取消し、補助金の交付の停止補助金の返還命令
・適正化法第29条から第32条までの規定による罰則の適用

取得財産の管理

応募・交付申請者は、当該補助事業により取得し、または効用の増加した財産について、補助事業の完了後においても善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を行わなければなりません。

補助金を受けたサービス付き高齢者向け住宅等の譲渡

補助対象建物を譲渡することを目的として、補助金の交付を受けることは認められません。

また、補助金の交付を受けた住宅等を譲渡しようとするときは、原則として住宅等を譲り受けようとする者と残管理期間に補助事業の要件を遵守する旨を規定する確認書を取り交わさなければなりません。

補助事業の要件を遵守せずに譲渡がなされた場合には、補助金返還の対象となる可能性があります。

年1回の運用状況調査の実施

補助金の交付を受けたサービス付き高齢者向け住宅は、原則年1回の定期報告が必要です。

最終補助金が交付された年から、運営状況その他にかかる定期報告調査票が年1回送付されますので、記入し返送しなければなりません。

なお、調査に協力しないときには、補助金の返還が求められる場合があります。

10年以上の契約書類等の保存

完了実績報告書の提出を受け、必要に応じて関係書類の請求および現地検査が行われる場合があります。

補助金の適正な執行および補助事業に関する書類の保存期間は、補助金の交付を受けた年度終了後、10年以上とされています。

サービス付き高齢者向け住宅の税制上のメリット

サービス付き高齢者向け住宅を新築または取得した場合、土地・建物の不動産取得税の減税措置の適用範囲の拡大、固定資産税の5年間減額の税制上の特例の適用を受けることができます。

ただし、税制上の要件があります。
サービス付き高齢者向け住宅の登録を受け、補助金の交付を受けた場合に、必ずこれらの特例の適用を受けることができるわけではありません。

不動産取得税の特例

一般住宅や賃貸住宅を取得した場合には、取得した建物および土地に対して不動産取得税が課税されます。

建物および土地の固定資産税評価額に対して3%の税率で計算した金額となりますが、サービス付き高齢者向け住宅のうち、次の要件を満たすものについては、後述の軽減額を課税標準から控除または税額控除の適用を受けることができます。

住宅を取得した際に課税される不動産取得税について、住宅の価格から1,200万円を控除する特例と住宅用土地の税額から一定の額を控除する特例があり、もともとのこれらの特例の適用要件は、貸家住宅の場合、床面積40㎡以上とされていますが、サービス付き高齢者向け住宅については、最低床面積30㎡以上に適用範囲を拡大する特例が措置されています。

[不動産取得税の特例の適用要件]
床面積:30㎡以上160㎡以下/戸(共用部分含む。一般新築特例は40㎡以上240㎡以下/戸)
戸数:10戸以上
補助:国からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
構造:主要構造部が耐火構造又は準耐火構造であること

※変更される可能性がありますので、必ず最新の情報を確認してください。

固定資産税の減税措置

新築のサービス付き高齢者向け住宅で次の要件を満たすものについては、1戸あたり120㎡を限度に最初の5年間、2分の1以上6分の5以下の範囲内で、各市町村が定めた割合の固定資産税額を減税することとされています。

また、サービス付き高齢者向け住宅は「住宅」ですので、その敷地にかかる固定資産税については住宅用地となります。
その敷地1戸あたり200㎡まで固定資産税の課税標準が6分の1に、都市計画税の課税標準が<3分の1にそれぞれ減税されます。

従前土地が青空駐車場であった場合は、固定資産税、都市計画税の合計額が約5分の1に減少します。

相続税対策

相続税額引下げ対策としては、自己資金借入金またはその組み合わせにより、サービス付き高齢者向け住宅を建築し、運営事業者に賃貸する方法が高い効果を得ることができます。

例えば建築した建物を賃貸住宅として運営事業者に賃貸すると、その所有者に相続が発生した場合の評価額は、建築価額ではなく(一般的には)固定資産税評価額とされます。

サービス付き高齢者向け住宅の敷地については、自用地価額から貸家建付地割合が控除されます。
貸家建付地割合は、その地域の借地権割合×借家権割合です。

なお、自らが建築主になりますので、サービス付き高齢者向け住宅の登録基準交付要件を満たし、補助金の交付や税制上の特例の適用を受けることができます。
一方で、投資金額が通常の賃貸住宅より大きくなりがちで、賃貸住宅としての収益性は通常の賃貸住宅系より若干劣る場合があります。

サービス付き高齢者向け住宅を建築して、事業を行う運営事業者に土地を賃貸する方法もあります。
この場合、通常土地を定期借地契約によって賃貸することになりますが、居住用の建物を建てるための貸地契約ですので、一般定期借地契約になります。

契約期間は50年以上となりますが、土地所有者に相続がおきた時点での契約残存期間に応じて、土地の自用地価額から一定の割合の定期借地権に相当する価額が控除されます。

定期借地権は、普通借地権のように一度土地を貸すと借地権が賃借人に移転してしまうようなことはありません。
契約期間が満了すると、借地人が建築した建物を借地人が取り壊して更地にして必ず変返還されます。

相続税の計算上、小規模宅地等の減額特例が設けられており、特定居住用宅地については330㎡まで80%減額、特定事業用宅地等については400㎡まで80%減額、貸付事業用宅地等については200㎡まで50%減額されます。

サービス付き高齢者向け住宅の敷地については、特例の要件を満たしていれば、貸付事業用宅地等の価格が適用されることになります。

終わりに

今回は、サービス付き高齢者向け住宅の補助金や税制のメリットについて、お話し致しました。

土地所有者にとっては長期の資産活用であり、補助金の制度も長期で経営することを前提とした制度設計となっています。

また、サービス付き高齢者向け住宅は通常の賃貸住宅にはない高齢者生活支援施設の併設やサービスが付加されるため、投資額が大きくなります。
しかし、将来の動向を考えると、通常の賃貸住宅に比べて需要はあるでしょう。

さて次回は、サービス付き高齢者向け住宅の経営方法について考えてみます。
通常の賃貸住宅と違って、医療や介護との関わりが大きくなります。
市場の動向の推察と一緒にお話しします。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。