西中島南方駅より徒歩7分の不動産会社

BLOG ブログ

不動産売買に関係する民法改正の内容について解説

民法改正の内容を振り返ろう
2015年3月に「民法の一部を改正する法律案」が国会に提出され、2017年5月に「民法の一部. を改正する法律」が成立しました。
民法には、債権法といわれる契約等に関する最も基本的なルールが定められております。
この債権法は、1896年(明治29年)に制定されてから約120年間にわたって、ほとんど見直しが行われていませんでした。
この改正では、約120年間の社会経済の変化への対応が図られ、また現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを明確にして読み取りやすくされています。

不動産賃貸経営や不動産売買にも影響する改定がいくつか行われています。
現行民法はどのような変更がなされているでしょうか。

前回は、不動産賃貸に関係する民法改正の内容についてお話ししました。
今回は、主に不動産売買に関係する民法改正の内容について、お話し致します。

錯誤の効果が無効から取消しへ

売買契約を錯誤による解除を求められました。
錯誤とはどのような内容でしょうか。

なお、改正により、錯誤による意思表示の効果が無効から取消しに変わりました。
契約において具体的な仕様・利用目的が明示されている場合で、本来の目的が達成できない場合には契約を取り消される可能性があります。

錯誤とは

錯誤とは、真意と表示が一致せず、そのことを表意者自らが認識していない場合の意思表示のことをいいます。

例えば、ある土地を3,000「万円」で売却しようとしたが、契約書では3,000「円」で売却するという契約をしてしまった場合です。
契約書の表示行為は、3,000「円」で売却しようとするものですが、真意は3,000「万円」で売却することなので、真意と表示が一致していない意思であるといえます。

売買契約が行われた場合に、その契約書面の内容に対応した意思が存在しなければ、法律効果を認めるべきではないといえます。

旧民法と新民法の取扱いの違い

旧民法では、錯誤による意思表示は無効とされていました。
錯誤無効の主張はいつまでもできますが、このような主張をいつまでもできるとすることは、現在の社会通念や取引の安定性からみて、それほど必要性がないと考えられるようになりました。

このため、新民法では、錯誤による意思表示は取り消すことができるとされ、法律効果が無効から取り消しに変わりました。
これにより、取消権の行使は、原則5年間の期間制限があるものとなりました。

錯誤の類型化と要件の明確化

旧民法の規定では、意思と表示が一致しているものの、その意思を形成する過程における動機の錯誤については、特段の規定がありませんでした。

動機の錯誤について、判例では「その動機が、表意者が意思表示の内容に加える意思を明示または黙示したときは意思表示の内容になる」として、錯誤無効の主張を認めていました。
しかしながら、どのような要件のもとに動機の錯誤が意思表示の無効となるか、明確ではありませんでした。

そこで、新民法では、表示の錯誤と動機の錯誤とを区別したうえで、「意志表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる」とし、動機の錯誤についてもそれが表示されているときには取消しとなることが明文化されました。

動機の錯誤の例としては、「新しく道路が通って地価が上がる噂を信じて、利用価値の低い土地を高額で購入したが、噂は事実無根であった場合」や、「家を建築する目的で土地を購入したが、地盤が軟弱で建築することができなかった場合」、などがあげられます。

実務の対応策

買主の場合には、不動産売買契約書などにおいて、目的として具体的な使用・利用目的を明示することで、本来の目的が達成できなくなる場合には、錯誤による取消しを主張できるようにしておく必要があります。

また、売主の場合には、不動産売買契約書などにおいて、目的として具体的な使用・利用目的が明示されている場合には、錯誤による取消しの可能性があることに留意しておく必要があります。

危険負担の取扱い

売買契約の締結後にアパートが全焼した場合、引渡しできませんが代金は授受されるのでしょうか。

旧民法における危険負担

旧民法における危険負担とは、契約締結後に債務者(売主)の責任ではない事由によって目的物が滅失(消滅または破損)した場合には、その責任は債権者(買主)が負うというものです。

具体的には、建物の売買契約を締結した後、引渡しまでの間に地震や延焼など、売主の責任ではない事由によって売買対象の建物が消滅してしまったようなときです。

旧民法では、売買契約における債権者=買主となるため、買主は売買の目的物(建物)の移転(取得)を受けられないにもかかわらず、代金だけは売主に支払う義務があるとされていました。

新民法における取扱い

新民法では、売買取引における危険負担は引渡し時を基準として考えるため。債権者は売買の目的物の引渡しを受けるまでは、代金の支払いを拒むことができます。

また、引渡し後に目的物の滅失(消滅または破損)があった場合については、買主が危険を負担するという原則はこれまでと同様です。

このため、売買の目的物の引渡し前に、売主買主双方の責任ではない事由により、その目的物に滅失等があった場合には、その危険負担は債務者(売主)が負うということになりました。

また、売主が契約の内容にあった目的物を引き渡したにもかかわらず、買主が受領を拒みまたは受領できない場合において、その目的物に売主買主双方の責任ではない事由により滅失等があった場合には、その危険負担は債権者(買主)が負うべきものであり、それを理由に代金支払いを拒むことはできません。

実務への影響

旧民法の時の不動産売買契約において、危険負担条項として「本物件の引渡前に天災地変その他売主および買主のいずれの責めにも帰することができない事由により本物件が滅失または損傷したときは、買主は本契約を解除することができる」という条文を入れている場合が多いため、実務上の影響はほとんどないでしょう。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

売買した土地に土壌汚染が見つかりました。
この場合どうなるでしょうか。

契約の内容に適合しない不動産売買には、追完の請求、代金減額請求、契約の解除、債務不履行による損害賠償が認められます。
買主がその事実を知ったときから、1年以内にその旨を売主に通知しないと、契約の解除等ができなくなります。
では、具体的にお話しします。

瑕疵担保責任とは

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、売主は瑕疵担保責任を負うものとされており、具体的な瑕疵担保責任の内容としては、契約の解除または損害賠償ができるとされています。

瑕疵担保責任は、たとえ目的物に瑕疵があっても隠れた瑕疵という限定があることにより、担保責任を追及する側(買主)が注意してもわからないような瑕疵であること、つまり買主の善意無過失が要件とされてきました。

仮に、土地を購入した後に花壇を設置しようと庭を整備していて、土壌汚染や鉄くずなどの埋設物が見つかったとしても、当該特定物を引き渡せば売主は債務を履行したともいえるため、債務不履行があるとまではいえず、トラブルの原因になることがありました。

契約不適合責任とは

新民法では、瑕疵担保という法定責任に代わって、債務不履行責任としての契約不適合責任が新たに規定されました。

具体的には、「引き渡された目的物が、種類、品質または数量に関して、契約の内容に適合しないものであるときは、~、履行の追完を請求することができる」とされ、瑕疵という表現がなくなりました。

買主の救済方法としては、契約不適合の状況に応じて、「追完の請求」、「代金減額請求」を規定し、「契約の解除」、「債務不履行による損害賠償」も定めています。

新民法における契約不適合責任は、土地・建物のような特定物のみならず、A商品100個というような不特定物に対しても適用され、売買の目的物に契約の内容に適合しない点があれば、債務不履行責任を負います。

買主の権利の期間制限

売主の担保責任の存続期間は、買主がその不適合を知ったときから1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は~することができないとして、終了することになります。

ただし、目的物が契約内容に不適合であることについて、売主に悪意または重過失があるときは、保護の必要がないとして、買主は短期の存続期間による権利行使の制限を受けないことになります。

実務への影響

契約不適合の規定は任意規定ですので、契約において買主の代金減額請求権や解除権、損害賠償請求権の制限または緩和をすることが可能です。

また、買主の権利の期間制限である1年以内という期間も任意規定ですので、契約において短縮または延長することも可能です。

しかし、不動産売買においては、売買の目的物が特定されているため、契約不適合責任については代金減額請求権や解除権によるものが多いと考えられます。

代金減額請求権

契約不適合のとき、買主は売主に履行の追完を求めることができ、どのような追完の方法をとるかを買主が選択できることとされます。

ただし、買主に不相当な負担を課するものでないときには、売主は買主が請求した方法と異なる方法による追完をすることができるものとされます。

追完の内容としては、「修補請求権」(直す、修理する)、「代替物の引渡し請求権」(代わりになるものを給付する)、「履行の追完請求権」(足りない分を給付する)、があります。

新民放では、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができるとしています。

また、履行の追完が不能であるときなどの場合には、催告をすることなく、直ちに代金の減額をすることができるとされています。

代金減額請求権を行使できる場合

引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものであるときは、買主が代金減額請求権を行使するために、まず売主に対し、相当の期間をさせて履行の追完を催告します。

そのうえで、催告期間内に履行の追完がなされない場合には、買主は売主に対して代金減額請求権を行使できることとなります。

なお、引き渡された目的物が契約の内容に適合していないことについて、買主に責任がある場合には、売主への代金減額請求権は認められません。

実務への影響

買主に不相当な負担をするものでないときには、売主は、買主が請求した方法と異なる内容の追完をすることができるという規定は任意規定ですので、例えば契約書に、売主からの履行の追完を排除する内容を盛り込むことで、買主の選択権を最大限に生かすことが可能です。

また、買主の代金減額請求権も任意規定ですので、契約書において、買主からの代金減額請求権は認めないと規定することで、買主からの代金減額請求権の行使を制限することが可能です。

なお、土地の売買においては、実測による清算を行うことで、実務上代金減額と同様と考えられます。

損害賠償請求と解除

売買対象の不動産が契約の内容と違っている場合には、損害賠償請求権や解除権は認められるでしょうか。

旧民法における適用

旧民法の瑕疵担保責任における解除権の行使は、契約をした目的を達することができないときに限り認められています。

また、裁判例における損害賠償の範囲も、瑕疵がないと信頼したことにより被った損害(信頼利益)の賠償に限定される事例が多くなっています。

新民法における適用

新民法においては、解除権について上記のような制約はなく、損害賠償の範囲も債務不履行責任の一般原則に従い、契約のとおりに履行されていたら得られる利益(履行利益)の賠償が認められることとなります。

例えば、第三者に転売する目的で土地を購入しており、その後契約が解除となったような場合には、その土地の売却益相当額の賠償も認められる可能性があります。

損害賠償請求権・解除権を行使できる場合

新民法564条において、追完請求権および代金減額請求権は損害賠償請求権・解除権の行使を妨げないとあることから、買主の選択によりどの方法を行使するかを決めることができます。

ただし、代金減額請求権の行使と同様に、売主に対し相当の期間を定めて履行の追完を催告する必要があります。

また、引き渡された目的物が契約の内容に適合していないことについて、買主に責任(帰責事由)がある場合には、売主への損害賠償請求権や解除権は認められません。

実務への影響

買主の損害賠償請求権や解除権も任意規定ですので、契約において買主からの損害賠償請求権および解除権の要件を制限または緩和する規定を盛り込み、その行使を制限または緩和することが可能となります。

債務不履行による損害賠償

債務不履行とは、債務者(売主)が債務の本旨に従った履行をしないことをいいます。

例えば、ある土地を1億円で購入する契約を10月1日に相手方と結び、その引渡しを11月1日としました。
しかし、代金を支払ったものの、11月1日に相手方が移転登記や引渡しをしないような場合です。
この場合に、相手方に対してどのような請求ができるでしょうか。

債務不履行を理由とする損害賠償については、旧民法415条において定められていますが、新民法では債務不履行の場合だけでなく履行不能の場合についても、これによって生じた損害の賠償を請求できることが明文化されました。

また、新民法では債務不履行について、債務者(売主)側に責任がないときは免責が認められることや、債務者(売主)側が債務不履行について責任がないことの主張・立証をしなければならないことも明文化しています。

債務の履行に代わる損害賠償の要件

旧民法においては、どのような場合に債務の履行に代わる損害賠償が認められるのかについて、明らかな規定がありませんでした。
そこで、次の3つの場合において、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができると定めました。

1. 債務の履行が不能であるとき
2. 債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
3. 契約により生じた債務につき契約が解除され、また解除権が発生したとき

債務の履行に代わる損害賠償について、上記2(債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき)は、債務の履行期前に履行に代わる損害賠償を認める判例等はこれまでになかったため、今後どのように活用するかがポイントになります。

また、上記3(契約により生じた債務につき契約が解除され、また解除権が発生したとき)では、解除権は発生しているものの解除していない場合についても、損害賠償が認められることとなります。

実務への影響

債務の履行をしないときだけでなく、債務の履行が不能なときについても損害賠償請求ができることとなりましたので、継続的な契約に債務不履行があっても、引き続き取引関係を継続したいような場合には、履行の催告をしたうえで解除権を発生させ、解除まではせずに債務の履行に代わる損害賠償を請求することが可能となります。

契約書において、債務不履行があった場合の契約の解除や損害賠償の規定を細かく定めることにより、トラブルになった場合の早期解決を実現することが可能となります。

相隣関係規定の見直し

一定の目的のためであれば、必要な範囲内で、隣地所有者の承諾なしに隣地を使用することができるように改正されました。

隣地使用権の拡大

隣地の使用については、従来から、境界またはその付近における障壁・建物を、築造・修繕する場面での隣地使用が認められていました。

そのうえで、隣地使用権が拡大され、境界標の調査または境界に関する測量、および隣地の竹木の枝の切取りのためにも隣地を使用することができるようになりました。

竹木の枝の切除

隣地から竹木の根が所有地に入り込んできたときには、根を切り取ることができます。
他方で、従来は竹木の枝については、所有地に入り込んでも、竹木の所有者(隣地の所有者)に切除を申し入れることができるだけで、無断で切り取ることはできませんでした。

改正では、竹木の枝についての取扱いが見直されました。
自分で竹木の枝を切り取ることはできないという原則は維持しながら、例外として、
1. 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
2. 竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
3. 急迫の事情があるとき
という3つのケースでは、隣地の所有者の了解を得ずに、自ら枝を切り取ってもよいものとされました。

ライフラインの供給設備の設置

土地の位置関係や形状によっては、隣地に設備を設置し利用しなければ、日常生活に必要な電気・ガス・水道などのライフラインの供給を受けることができない状況が生じます。

改正によって、土地の所有者がほかの土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス、水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるために必要な範囲内で、ほかの土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用することができるという、定めが新設されました。

所有者不明または管理不全の土地・建物の管理命令

土地・建物の所有者が不明であって、適正な管理がなされていない場合には、所有者に代わる者による管理が求められます。
不在者の財産管理の制度は、特定の土地・建物のみの管理には適していません。

そこで、所有者不明土地管理命令および所有者不明建物管理命令の制度が新設されました。

この制度は、所有者を知ることができず(所有者不明)、またはその所在を知ることができない(所有者の所在不明)場合の土地・建物について、裁判所が所有者不明土地管理人・所有者不明建物管理人(管理人)による管理を命ずる仕組みです。

管理人が選任されると、管理人に土地・建物の管理をする権限が与えられ、たとえば、隣接する擁壁の劣化・倒壊によって土砂崩れが生ずるおそれが生じていたり、隣家がいわゆるごみ屋敷であって、悪臭等により健康被害が生じていたりするような場合に、管理人が危険や弊害を取り除く措置を講じることができるようになります。

なお、この制度は、マンションの専有部分および共用部分には適用されません。

管理不全土地・建物管理命令

土地・建物について適正な管理がなされない状況は、所有者が明らかな場面でも生じます。

改正では、所有者が不明ではないものの、所有者による管理が不適当なケースであって、他人の権利・法律上の利益が侵害されているなどの場合にも、第三者による土地・建物の管理を命じ、管理不全土地管理人・管理不全建物管理人(管理人)による管理を命ずることができるようになっています。

管理人が選任されると、管理人に土地・建物の管理をする権限が認められます。

管理不全土地・建物管理命令の制度も、マンションの専有部分および共用部分には適用されません。

相続制度の見直し

相続制度に関しても、いくつか改定されております。
不動産売買に関係がありそうな項目についてまとめてみます。

具体的相続分による遺産分割の時間的制限

相続発生の後、遺産分割までの間、共同相続人が相続財産を共同で所有する関係を遺産共有といいます。

遺産共有は解消が想定される暫定的な関係であり、法定相続分・指定相続分に加えて、特別受益と寄与分を考慮に入れた具体的相続分に基づいて遺産分割が行われ、共同相続人に相続財産が割り振られます。

もっとも、時間の経過とともに具体的相続分への配慮は困難になります。
そこで、改正によって、相続開始から10年経過した後に行う遺産分割については、特別受益と寄与分の定めが適用されないものとされました。

遺産共有における共有物分割請求

従来、遺産分割の手続きを行う時期には制約はなく、かつ遺産共有については共有物分割訴訟は認められませんでした。
このことが遺産が分割されないままになっている大量の土地を生み出す原因となっていました。

そこで、改正においては、相続開始の時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分についても共有物分割請求をすることができるものとされました。

相続財産の管理の仕組みの整備

相続財産が適切に管理されていない場合には、第三者を管理人に指定し、管理がなされるべきですが、従来は、民法上管理人が選任される場面は限定的でした。

改正では、相続が開始すれば、相続の段階にかかわらず、いつでも、家庭裁判所が相続財産管理人を選任することができるという、包括的な定めが設けられました。

相続土地国庫帰属法

相続財産である土地が遠隔地にあるなどの場合には、相続人は土地に関心をもちません。
のみならず、望まず土地を取得した所有者には負担感だけが残るため、土地を手放したいと考える人が増加しています。

そこで、相続・遺贈により取得した土地について、法務大臣に申請し、国庫に帰属させることができる法律が制定されました。

もっとも、相続土地が国庫帰属にふさわしくないものについての承認申請は却下され、通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地は、国庫帰属が承認されません。

また、土地の国庫帰属には負担金の納付が必要です。
負担金は、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して定められており、粗放的な管理で足りる原野は約20万円、市街地の宅地(200㎡)は約80万円などとなっています。

共有制度の見直し

共有物の変更に関する改正があり、他の共有者全員の同意を得なければならない範囲が明確化されました。

ほかの共有者に対する義務

従来、共有物を使用する一部の共有者がほかの共有者に対していかなる義務を負うのかに関しては、定めがありませんでした。

改正では、別段の合意がある場合を除き、ほかの共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うとして、使用の対価の償還義務が、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならないとして、善管注意義務がそれぞれ条文化されました。

一部共有者が使用している場合の使用方法の変更

管理に関する事項は、持分の価格に従い、その過半数で決します。

改正によってこの後に、共有物を使用する共有者があるときも、同様とするという条文が加えられました。
共有物を使用する一部共有者がいても、持分の価格の過半数によって利用方法を変更することができることを明文化したものです。

もっとも、実際に共有物を使用する一部共有者の利益に配慮して調整を図り、共有者による変更の決定が共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければならないという定めも置かれています。

変更と管理の決定方法

各共有者は、ほかの共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません。
しかし、ほかの共有者への影響が小さいものについては、全員の同意が必要とは考えられません。

そこで、形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)は、共有者全員の承諾がなくても、共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができるという定めが設けられました。

また、共有物の賃貸に関して、一定の期間を超えないものであれば、管理行為の範囲内として、持分価格に従い、その過半数によって決めることができる旨の明文が置かれました。

1. 樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃借権等:10年
2. 上記1に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等:5年
3. 建物の賃借権等:3年
4. 動産の賃借権等:6ヶ月

管理者の制度

共有者が第三者を管理者と定め、管理者に日常的な管理を委ねておけば、共有物の管理を円滑に行うことができます。
そのため、共有物の管理者に関する条文が設けられました。

管理者の選任は、管理に関する事項に含まれ、管理者は管理に関する行為(軽微変更を含む)をすることができます。
管理者が共有物に変更を加えるには、共有者全員の同意が必要です。

所在等不明共有者がいる場合の措置

共有者の中に所在不明者がいる場合には、共有物の処分や変更をすることができず、また管理に重大な支障が生じます。
そのため新たな仕組みを創設しました。

まず、処分に関しては、共有者がほかの共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときには、所在等不明の共有者の持分について、所在等不明共有者以外の共有者が取得する措置、および所在等不明共有者以外の共有者が第三者に譲渡する権限を付与する措置が認められます。

また、所在等不明の共有者を除く共有者の同意で共有物の変更を決めることができるとする措置が、さらに、所在等不明共有者以外の共有者、および管理に関する事項の賛否を明らかにしない共有者以外の共有者が、共有物の管理に関する事項を決めることができるとする措置が、それぞれ可能になっています。

共有物分割請求訴訟についての判例法理の条文化

共有物の共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。
従来、共有物分割のためのルールは民法には明文がなく、判例によって補われていました。

改正によって、共有者間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときに、裁判所に共有物の分割を請求することができるとされました。

そのうえ、裁判所は分割請求がなされた場合には、共有物の現物を分割する方法、または共有者に債務を負担させてほかの共有者の持分の全部または一部を取得させる方法によって分割を命じる、もしくは、現物分割または賠償分割をすることができないとき、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売を命じると、定められました。

終わりに

今回は、主に不動産売買に関係する民法改正の内容について、お話し致しました。

社会経済の変化への対応が図られ、また現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを明確にして読み取りやすくされています。

特に、近年は所有者不明土地が増加し続けています。
土地の所有者が不明であるときには、土地の利用や管理に支障が生じ、衛生や防犯に関して弊害が生じます。
この所有者不明土地という社会問題に対する対策として立法化されたものも含まれています。

なお、所有者不明土地に対するさらなる対策として、不動産登記法が改正され、相続登記の申請および住所等変更登記の申請が義務化され、所有不動産記録証明の制度が創設されています。

相続登記の申請の義務化については2024(令和6)年4月、住所等変更登記の申請の義務化と所有不動産記録証明の制度については2026(令和8)年4月までに、それぞれ施行されることになっています。

今後も社会経済の変化や社会問題に応じて改正や見直しが図られる分野があるかもしれません。
現在明文化されていないことが、将来まで不変であるかわかりません。
不動産の所有は長期にわたることが多いため、慎重にかつ柔軟に対応することが望まれます。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。