2015年3月に「民法の一部を改正する法律案」が国会に提出され、2017年5月に「民法の一部. を改正する法律」が成立しました。 民法には、債権法といわれる契約等に関する最も基本的なルールが定められております。 この債権法は、1896年(明治29年)に制定されてから約120年間にわたって、ほとんど見直しが行われていなかったのです。 これまでの民法は、私法の大原則として制定され、わかりにくい専門用語や抽象的な文言が使われていました。 また個別の内容などは改正されていたものの、法律に規定されていない内容については、判例や特別法の制定で補われていました。 この改正では、約120年間の社会経済の変化への対応が図られ、また現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを明確にして読み取りやすくされています。 不動産賃貸経営や不動産売買にも影響する改定がいくつか行われています。 現行民法はどのような変更がなされているでしょうか。 改正は多岐にわたるため、分けてお話しします。 今回は、不動産賃貸に関係する民法改正の内容について、お話し致します。
敷金について
民法の改正によって、敷金の定義と返還時期が明確になりました。
一般的な解釈や裁判所の考え方を明文化したものであり、実質的には実務への影響はほとんどありません。
注意しなければならないポイントは、新賃借人が旧賃借人から、適法に賃借権の譲渡を受けた場合には、賃貸人は旧賃借人へ敷金を返還しなければならないことです。
ただしこれは任意規定のため、特約で旧賃借人から新賃借人へ債権譲渡することを規定することができます。
一般的な解釈や裁判所の考え方を明文化したものであり、実質的には実務への影響はほとんどありません。
注意しなければならないポイントは、新賃借人が旧賃借人から、適法に賃借権の譲渡を受けた場合には、賃貸人は旧賃借人へ敷金を返還しなければならないことです。
ただしこれは任意規定のため、特約で旧賃借人から新賃借人へ債権譲渡することを規定することができます。
敷金の定義
敷金とは、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と、定義されました。
したがって、保証金等の名目で交付される金銭も、同様の性質を持つものであれば、敷金に関するルールが適用されます。
これまで賃貸借における敷金については条文上明確な定義はなく、返還される時期や返金される金額に関するルールも明確ではありませんでした。
したがって、保証金等の名目で交付される金銭も、同様の性質を持つものであれば、敷金に関するルールが適用されます。
これまで賃貸借における敷金については条文上明確な定義はなく、返還される時期や返金される金額に関するルールも明確ではありませんでした。
敷金の返還
賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに、貸主は賃料などの債務の未払分を差し引いた残額を返還しなければなりません。
敷金は次の2つの場合において、債務の額を控除した残額を返還しなければならないことが明確になりました。
1. 賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき
2. 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき
上記2については、賃貸人と旧賃借人との間に別段の合意がない限り、敷金返還債務が生じます。
つまり、新賃借人が旧賃借人から適法に賃借権の譲渡を受けたとしても、敷金返還請求権までが新賃借人に移転するわけではありません。
そのため、賃貸人は旧賃借人に敷金を返還しなければなりません。
ただし、任意規定のため、特約で旧賃借人から新陳賃借人へ債権譲渡することを規定することができます。
敷金は次の2つの場合において、債務の額を控除した残額を返還しなければならないことが明確になりました。
1. 賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき
2. 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき
上記2については、賃貸人と旧賃借人との間に別段の合意がない限り、敷金返還債務が生じます。
つまり、新賃借人が旧賃借人から適法に賃借権の譲渡を受けたとしても、敷金返還請求権までが新賃借人に移転するわけではありません。
そのため、賃貸人は旧賃借人に敷金を返還しなければなりません。
ただし、任意規定のため、特約で旧賃借人から新陳賃借人へ債権譲渡することを規定することができます。
敷金の充当
賃貸人は、賃借人が家賃等を支払わないときに、敷金をその家賃等の支払いに充当できます。
ただし、賃借人は、賃貸人に対して、資金をその家賃等の支払いに充当することを請求できないと定められています。
ただし、賃借人は、賃貸人に対して、資金をその家賃等の支払いに充当することを請求できないと定められています。
賃貸物の修繕費の負担
修繕が必要になった原因が、入居者(賃借人)の責任によるものであるときは、原則として、入居者(賃借人)が修繕義務を負わなければなりません。
入居者(賃借人)が自ら修繕した場合の費用については、原則賃貸人が負わなければなりません。
ただし、任意規定のため、修繕費の必要費償還請求権を生じないなどの特約を入れることによって、入居者(賃借人)が行った修繕費を賃貸人が負担しないことを規定することができます。
入居者(賃借人)が自ら修繕した場合の費用については、原則賃貸人が負わなければなりません。
ただし、任意規定のため、修繕費の必要費償還請求権を生じないなどの特約を入れることによって、入居者(賃借人)が行った修繕費を賃貸人が負担しないことを規定することができます。
賃貸物の修繕義務
賃貸物の修繕義務について、旧民法では「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」としており、賃貸人が負うこととされていました。
これに対して、新民法では、上記の内容を維持したまま「ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって、その修繕が必要となったときは、この限りでない」という文言が追加されました。
したがって、入居者(賃借人)に責任がある場合には、賃貸人が修繕義務を負わないことが明確になりました。
これに対して、新民法では、上記の内容を維持したまま「ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって、その修繕が必要となったときは、この限りでない」という文言が追加されました。
したがって、入居者(賃借人)に責任がある場合には、賃貸人が修繕義務を負わないことが明確になりました。
賃借人による修繕
賃貸物の修繕が必要である場合において、次に掲げる場合には、入居者(賃借人)が自ら修繕できることが明確になりました。
1. 入居者(賃借人)が、賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったのにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
2. 緊急で修繕が必要なとき
上記は、判例において認められていたものが明文化されたものです。
賃貸物の修繕は、原則として、その処分権限を有する賃貸人のみが行うことができるものですが、一定の要件を満たす場合には、例外的に入居者(賃借人)も修繕をすることができるとされました。
ただし、入居者(賃借人)が修繕を行った場合に、修繕の必要が本当にあったかどうか、また、その修繕の範囲が適切であったかについて争いになる可能性があります。注意しましょう。
1. 入居者(賃借人)が、賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったのにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
2. 緊急で修繕が必要なとき
上記は、判例において認められていたものが明文化されたものです。
賃貸物の修繕は、原則として、その処分権限を有する賃貸人のみが行うことができるものですが、一定の要件を満たす場合には、例外的に入居者(賃借人)も修繕をすることができるとされました。
ただし、入居者(賃借人)が修繕を行った場合に、修繕の必要が本当にあったかどうか、また、その修繕の範囲が適切であったかについて争いになる可能性があります。注意しましょう。
賃借人が自ら修繕した場合の費用負担
先述のとおり、一定の要件のもとに、入居者(賃借人)が自ら修繕することが可能ですが、ここで発生した修繕費は誰が負担することになるのでしょうか。
このような場合は、賃貸物の処分権限を有するのは賃貸人であるため、修繕費を負担した入居者(賃借人)は賃貸人に費用の返還を求めることができます。
このような場合は、賃貸物の処分権限を有するのは賃貸人であるため、修繕費を負担した入居者(賃借人)は賃貸人に費用の返還を求めることができます。
原状回復義務
原状回復義務は、賃借人が追うことが明確になりました。
一方で、通常損耗や自然損耗は、賃貸人が原状回復費用を負うことが明確になりました。
新民法では、経年変化や通常の損耗については賃貸人が負担することが明確になったことから、賃料を設定するときには、近隣の家賃相場だけではなく通常損耗など必要経費を踏まえた金額設定にすることが求められるでしょう。
一方で、通常損耗や自然損耗は、賃貸人が原状回復費用を負うことが明確になりました。
新民法では、経年変化や通常の損耗については賃貸人が負担することが明確になったことから、賃料を設定するときには、近隣の家賃相場だけではなく通常損耗など必要経費を踏まえた金額設定にすることが求められるでしょう。
原状回復義務とは
原状回復義務とは、賃貸借契約が終了したときに、賃借人が賃貸物を原状(引渡しを受けたときの状態)に戻して返すことをいいます。
旧民法においては、賃借物の原状回復義務を賃借人が負うことや、その義務をどこまで負うかについては、明確な規定が存在していませんでした。
このため、壁紙の張替えやハウスクリーニング費用の負担等について、賃貸人と賃借人との間でトラブルが発生する事例が多く見受けられました。
そこで、原状回復義務について、その内容が明らかにされました。
1. 入居者(賃借人)は、原則として、入居後に生じた賃借物の損傷について、原状回復義務を負う。
ただし、通常の使用によって生じた損傷や経年変化による損傷については原状回復義務を負わない。
2. その損傷が入居者(賃借人)の責任によるものでないときは、入居者(賃借人)は、原状回復義務を負わない。
旧民法においては、賃借物の原状回復義務を賃借人が負うことや、その義務をどこまで負うかについては、明確な規定が存在していませんでした。
このため、壁紙の張替えやハウスクリーニング費用の負担等について、賃貸人と賃借人との間でトラブルが発生する事例が多く見受けられました。
そこで、原状回復義務について、その内容が明らかにされました。
1. 入居者(賃借人)は、原則として、入居後に生じた賃借物の損傷について、原状回復義務を負う。
ただし、通常の使用によって生じた損傷や経年変化による損傷については原状回復義務を負わない。
2. その損傷が入居者(賃借人)の責任によるものでないときは、入居者(賃借人)は、原状回復義務を負わない。
新民法における原状回復義務
新民法では、入居者(賃借人)が、賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うことが明確になりました。
ただし、通常の損耗や自然損耗についての原状回復費用は、賃貸人が負担することも明確になりました。
この考え方は、これまでの裁判所の考え方や学説を明文化したものです。
これによって、通常の使用による損耗は、原則として賃貸人が負担することになります。
ただし、任意規定のため、特約で自然損耗などの修繕費を賃借人の負担とすることを規定することができます。
しかしながら、入居者(賃借人)が個人の場合には、消費者契約法10条によって無効となる場合があります。
入居者(賃借人)が事業者(法人)の場合には、この特約は有効な方法となるでしょう。
契約相手が個人の場合には、賃貸借契約書に特約として原状回復費用を賃借人の負担とする旨の条項を加えるときは、どの程度までの範囲の改修・補修なのか、負担額はいくらなのか、契約書に細かく記載することが求められるでしょう。
ただし、通常の損耗や自然損耗についての原状回復費用は、賃貸人が負担することも明確になりました。
この考え方は、これまでの裁判所の考え方や学説を明文化したものです。
これによって、通常の使用による損耗は、原則として賃貸人が負担することになります。
ただし、任意規定のため、特約で自然損耗などの修繕費を賃借人の負担とすることを規定することができます。
しかしながら、入居者(賃借人)が個人の場合には、消費者契約法10条によって無効となる場合があります。
入居者(賃借人)が事業者(法人)の場合には、この特約は有効な方法となるでしょう。
契約相手が個人の場合には、賃貸借契約書に特約として原状回復費用を賃借人の負担とする旨の条項を加えるときは、どの程度までの範囲の改修・補修なのか、負担額はいくらなのか、契約書に細かく記載することが求められるでしょう。
賃貸物の一部滅失における賃料減額
賃貸物の設備に故障があり、賃料が減額されて入金された場合、その対応はどうすべきでしょうか。
旧民法では、火災や地震によって賃貸物の一部に損壊があった場合には、入居者(賃借人)は賃貸人に対して、賃料の減額を請求することができるとされてきました。
新民法では、賃貸物に火災や地震による一部の損壊があった場合だけでなく、エアコンやガス、給湯器の故障などによって使用および収益をすることができなくなった場合についても、その使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されることとなりました。
ただし、その原因が、入居者(賃借人)の責任でないことが要件とされています。
また、旧民法では契約の解除について入居者(賃借人)に過失がないことが前提でしたが、新民法では入居者(賃借人)における過失の有無を問わず、一部滅失等によって残存する部分だけでは賃借した目的を達することができないときには契約の解除ができます。
旧民法では、火災や地震によって賃貸物の一部に損壊があった場合には、入居者(賃借人)は賃貸人に対して、賃料の減額を請求することができるとされてきました。
新民法では、賃貸物に火災や地震による一部の損壊があった場合だけでなく、エアコンやガス、給湯器の故障などによって使用および収益をすることができなくなった場合についても、その使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されることとなりました。
ただし、その原因が、入居者(賃借人)の責任でないことが要件とされています。
また、旧民法では契約の解除について入居者(賃借人)に過失がないことが前提でしたが、新民法では入居者(賃借人)における過失の有無を問わず、一部滅失等によって残存する部分だけでは賃借した目的を達することができないときには契約の解除ができます。
新民法における賃料減額
旧民法における賃料減額については、賃料減額の請求ができるという規定であったため、減額割合について賃貸人と入居者(賃借人)が合意するまでは、従前と同様の賃料を入居者が支払わなければなりませんでした。
新民法では、滅失でなくても、使用および収益ができない場合には、当然に賃料が減額されることになりました。
そのため、使用および収益ができなくなった割合に応じて賃料を減額することができます。
新民法では、滅失でなくても、使用および収益ができない場合には、当然に賃料が減額されることになりました。
そのため、使用および収益ができなくなった割合に応じて賃料を減額することができます。
個人根保証契約と極度額
根保証契約とは、債務者が債権者に現在有し、また将来有する一切の債務を、主催務者と連帯して保証する契約のことをいいます。
連帯保証契約における保証人は、主たる債務の金額を定めた通常の保証契約か、不動産賃貸から生ずる入居者の不特定債務を主たる債務とする根保証契約かを選択して、契約をしなければなりません。
通常の保証を使って賃貸借契約から生じる債務の履行を保証しようとすると、賃料債務は月ごとに発生するため、その都度保証契約を結ばなくてはいけません。
これは大変煩雑であり、賃貸借契約から発生する多数の債務の履行を保証することは現実的ではありません。
そのため、賃貸借契約の場合は、根保証契約によるものがほとんどです。
根保証契約には、通常の保証にみられるような付従性がないため、継続的な取引から生ずる債務について取引が終了するまで何度でも活用できます。
連帯保証契約における保証人は、主たる債務の金額を定めた通常の保証契約か、不動産賃貸から生ずる入居者の不特定債務を主たる債務とする根保証契約かを選択して、契約をしなければなりません。
通常の保証を使って賃貸借契約から生じる債務の履行を保証しようとすると、賃料債務は月ごとに発生するため、その都度保証契約を結ばなくてはいけません。
これは大変煩雑であり、賃貸借契約から発生する多数の債務の履行を保証することは現実的ではありません。
そのため、賃貸借契約の場合は、根保証契約によるものがほとんどです。
根保証契約には、通常の保証にみられるような付従性がないため、継続的な取引から生ずる債務について取引が終了するまで何度でも活用できます。
極度額
新民法では、保証人が法人でないものについては、保証人が自己の保証債務の上限を明確にするために極度額を定めて保証契約をしなければなりません。
もし、極度額を定めていない個人根保証契約を締結した場合には無効となります。
このため、賃貸借契約の連帯保証契約を個人と締結する場合には、極度額を必ず定めなければなりません。
新民法の極度額規制は、原則として、新民法施工前に締結していた契約にはおよびません。
新民法施行後に、新たに契約する個人保証契約から適用されることとなります。
しかし、一般的な賃貸借契約は、2年ごとの更新契約になっていることが多いです。
契約が更新された場合には、新たな契約を締結したものとみなされ、契約更新後から新民法の規制を受けることになります。
もし、極度額を定めていない個人根保証契約を締結した場合には無効となります。
このため、賃貸借契約の連帯保証契約を個人と締結する場合には、極度額を必ず定めなければなりません。
新民法の極度額規制は、原則として、新民法施工前に締結していた契約にはおよびません。
新民法施行後に、新たに契約する個人保証契約から適用されることとなります。
しかし、一般的な賃貸借契約は、2年ごとの更新契約になっていることが多いです。
契約が更新された場合には、新たな契約を締結したものとみなされ、契約更新後から新民法の規制を受けることになります。
改正による影響
個人根保証契約について極度額を定める必要があることから、賃貸人側は最大限の金額を設定したいと考えるでしょう。
しかし、あまりに高額な極度額を設定してしまうと、連帯保証人のなり手が居なくなる恐れがあります。
また、更新契約となっている賃貸借契約については、新民法施行後に更新される時から極度額の規制を受けるため、極度額を定めていない個人保証契約については無効になります。
現状の賃貸借契約書を見直し、保証人が法人でない個人保証契約については、極度額を定めた賃貸借契約を結び直す必要があります。
また、連帯保証人の引き受け手がいない場合には、家賃保証会社を紹介するなどの対応が必要です。
しかし、あまりに高額な極度額を設定してしまうと、連帯保証人のなり手が居なくなる恐れがあります。
また、更新契約となっている賃貸借契約については、新民法施行後に更新される時から極度額の規制を受けるため、極度額を定めていない個人保証契約については無効になります。
現状の賃貸借契約書を見直し、保証人が法人でない個人保証契約については、極度額を定めた賃貸借契約を結び直す必要があります。
また、連帯保証人の引き受け手がいない場合には、家賃保証会社を紹介するなどの対応が必要です。
家賃の保証債務
家賃の保証債務とは、賃借人が家賃を支払わないときに賃借人に代わり、その家賃を支払う責任を負うことをいいます。一般的には、賃貸借契約の連帯保証人がこの責任を負います。
賃貸借契約における保証契約
通常の保証や連帯保証には付従性があります。
つまり、通常の保証や連帯保証は、原則1回限りの取引について、債務の履行を保証するものです。
新民法では、主たる債務の目的または対応が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は荷重されないとされ、保証契約締結後に、保証人の合意を得ないまま増額された保証債務については、その責任を負わないことが明文化されました。
したがって、賃貸借契約における連帯保証の場合は、主たる債務者の賃料債務について、賃料の増額請求が合意された場合でも、その増額分について連帯保証人は新たに契約をしない限り、保証債務を負わなくて良いということになります。
ただし、任意規定のため、賃料が増額された後の債務を含むなどの特約を入れることによって規定することができます。
つまり、通常の保証や連帯保証は、原則1回限りの取引について、債務の履行を保証するものです。
新民法では、主たる債務の目的または対応が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は荷重されないとされ、保証契約締結後に、保証人の合意を得ないまま増額された保証債務については、その責任を負わないことが明文化されました。
したがって、賃貸借契約における連帯保証の場合は、主たる債務者の賃料債務について、賃料の増額請求が合意された場合でも、その増額分について連帯保証人は新たに契約をしない限り、保証債務を負わなくて良いということになります。
ただし、任意規定のため、賃料が増額された後の債務を含むなどの特約を入れることによって規定することができます。
連帯保証に対する情報提供義務
これまでの保証契約では、賃貸人が保証人に対して想定していなかった多額の保証債務の履行を求めるような事例がたびたび起こっており、結果として、滞納家賃や修繕費の支払いができず、保証人が破産に追い込まれるような事例もありました。
そこで新民法では、そのような事態が起こらないようにするため、保証契約締結時に、債務者や債権者に対して、連帯保証人に適切な情報を提供する義務を課すこととなりました。
そこで新民法では、そのような事態が起こらないようにするため、保証契約締結時に、債務者や債権者に対して、連帯保証人に適切な情報を提供する義務を課すこととなりました。
3つの情報提供義務
連帯保証に対する3つの情報提供義務が新設されました。
1. 保証契約締結時
保証契約締結時において、賃借人は、保証人に対して、自己の財産・収支の状況や保証債務以外の債務などの情報を提供しなければなりません。
2. 保証契約期間中
保証契約期間中において、保証人から請求があった場合には、賃貸人は、保証人に対して、債務不履行の有無や債務の残額などの情報を提供しなければなりません。
3. 期限の利益を喪失した場合
入居者が期限の利益を喪失した場合において、賃貸人は、保証人に対して、その利益の喪失を知った時から2ヶ月以内にその旨を通知しなければなりません。
1. 保証契約締結時
保証契約締結時において、賃借人は、保証人に対して、自己の財産・収支の状況や保証債務以外の債務などの情報を提供しなければなりません。
2. 保証契約期間中
保証契約期間中において、保証人から請求があった場合には、賃貸人は、保証人に対して、債務不履行の有無や債務の残額などの情報を提供しなければなりません。
3. 期限の利益を喪失した場合
入居者が期限の利益を喪失した場合において、賃貸人は、保証人に対して、その利益の喪失を知った時から2ヶ月以内にその旨を通知しなければなりません。
債権者(賃貸人)が負うべき情報提供義務
保証契約締結時の情報提供義務のうち、対象となる保証債務とは、「事業のために負担する債務を主たる債務とする保証」か、「主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証」です。
つまり、住居に関する不動産賃貸借契約の保証人に対しては説明義務はありません。
一方で、事務所や店舗に関する不動産賃貸者契約の個人の保証人に対しては、「事業のために負担する債務」となるため、賃借人は情報提供義務を負うことになります。
保証契約期間中の情報提供義務と。期限の利益を喪失した場合の情報提供義務は、賃貸人が負うべき義務となります。
保証契約期間中の情報提供義務に関しては、賃貸人が保証人に対して必要な情報を提供しなかった場合には、債務不履行責任としての損害賠償請求または保証契約の解除が認められると考えられます。
また、期限の利益を喪失した場合の情報提供義務に関しては、賃貸人が賃借人の利益の喪失を知ったときから2ヶ月以内にその旨を保証人に通知しなかった場合において、期限の利益を喪失したときから通知をするまでに生じた遅延損害金にかかる保証債務の請求をできないこととなります。
つまり、住居に関する不動産賃貸借契約の保証人に対しては説明義務はありません。
一方で、事務所や店舗に関する不動産賃貸者契約の個人の保証人に対しては、「事業のために負担する債務」となるため、賃借人は情報提供義務を負うことになります。
保証契約期間中の情報提供義務と。期限の利益を喪失した場合の情報提供義務は、賃貸人が負うべき義務となります。
保証契約期間中の情報提供義務に関しては、賃貸人が保証人に対して必要な情報を提供しなかった場合には、債務不履行責任としての損害賠償請求または保証契約の解除が認められると考えられます。
また、期限の利益を喪失した場合の情報提供義務に関しては、賃貸人が賃借人の利益の喪失を知ったときから2ヶ月以内にその旨を保証人に通知しなかった場合において、期限の利益を喪失したときから通知をするまでに生じた遅延損害金にかかる保証債務の請求をできないこととなります。
賃借人が情報提供義務に違反した場合
賃借人が、説明不足や虚偽説明などによって、保証契約締結時の情報提供義務に違反していた場合、この事実を賃貸人が知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができるとされています。
これによって損害を被る可能性があるのは賃貸人であり、賃借人に対して、保証人へ正しい情報提供義務があることを伝える必要があります。
このため、賃借人および賃貸人は、保証人にどのような形で情報提供を行ったか、メールや書面などで履歴を残しておくとよいでしょう。
これによって損害を被る可能性があるのは賃貸人であり、賃借人に対して、保証人へ正しい情報提供義務があることを伝える必要があります。
このため、賃借人および賃貸人は、保証人にどのような形で情報提供を行ったか、メールや書面などで履歴を残しておくとよいでしょう。
文末表現の変化
さて、民法の改正に関する具体的な内容ではありませんが、契約に関する文章にも変化がみえます。
それは、文体がいわゆる常体(である調)から、敬体(ですます調)へ変更されています。
以前の契約書では、常体(である調)が多く使われていました。
常体は、読み手側に自分の意見などを強く伝えることができます。
文章をより強く断定的に言い切り、説得力のある文章になります。
一方の敬体(ですます調)は、敬語がベースとなっている文末表現です。
そのため、読み手に与える印象は柔らかく、丁寧であることを印象づけます。
この変化は、私は「敬」という字、すなわち相手を敬うことに重きを置くようになったからではないかと考えます。
相手とは当事者でありお客様を指し、不動産取引の場合であれば、売主や買主、または貸主や借主を指します。
契約書は堅い書類であるべきということよりも、お客様を意識し、お客様が読みやすく理解してもらいやすい表現を使うようにしているのでしょう。
なお、常体(である調)と敬体(ですます調)はいずれも口語体に分類され、現代で使われる文体に分類されます。
常体と敬体を混在させるとよくないでしょうが、どちらの文体を使っても間違いではありません。
しかし契約の文体から、変化に対応しているか変化に対応していないか、読み取ることができるでしょう。
それは、文体がいわゆる常体(である調)から、敬体(ですます調)へ変更されています。
以前の契約書では、常体(である調)が多く使われていました。
常体は、読み手側に自分の意見などを強く伝えることができます。
文章をより強く断定的に言い切り、説得力のある文章になります。
一方の敬体(ですます調)は、敬語がベースとなっている文末表現です。
そのため、読み手に与える印象は柔らかく、丁寧であることを印象づけます。
この変化は、私は「敬」という字、すなわち相手を敬うことに重きを置くようになったからではないかと考えます。
相手とは当事者でありお客様を指し、不動産取引の場合であれば、売主や買主、または貸主や借主を指します。
契約書は堅い書類であるべきということよりも、お客様を意識し、お客様が読みやすく理解してもらいやすい表現を使うようにしているのでしょう。
なお、常体(である調)と敬体(ですます調)はいずれも口語体に分類され、現代で使われる文体に分類されます。
常体と敬体を混在させるとよくないでしょうが、どちらの文体を使っても間違いではありません。
しかし契約の文体から、変化に対応しているか変化に対応していないか、読み取ることができるでしょう。
終わりに
今回は、不動産賃貸に関係する民法改正の内容について、お話し致しました。
上記の債権法に関する改正は、2020年4月1日から施工されました。
本投稿は、施工から約3年以上経過しており、実務では概ね浸透しているように感じますが、一部まだ理解が不足しているケースに遭遇します。
これらは、約120年間の社会経済の変化への対応が図られ、また現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを明確にして読み取りやすくされているものです。
我々宅地建物取引業者にも、時代変化に対応し、お客様と向き合って、真摯に対応することが求められているでしょう。
執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。
上記の債権法に関する改正は、2020年4月1日から施工されました。
本投稿は、施工から約3年以上経過しており、実務では概ね浸透しているように感じますが、一部まだ理解が不足しているケースに遭遇します。
これらは、約120年間の社会経済の変化への対応が図られ、また現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを明確にして読み取りやすくされているものです。
我々宅地建物取引業者にも、時代変化に対応し、お客様と向き合って、真摯に対応することが求められているでしょう。
執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。