西中島南方駅より徒歩7分の不動産会社

BLOG ブログ

オーナーチェンジ物件を売却するときの基本的な注意点

オーナーチェンジ物件とは?
不動産には、自身が使用するだけではなく、賃貸している場合もあります。
賃貸している収益物件を売却するときには、どのような点に注意すればいいでしょうか。

売買によって、所有者(オーナー)が、売主から買主へ変わる(チェンジ)ことから、賃貸中の売買対象の物件をオーナーチェンジ物件といいます。
オーナーチェンジによって、売主は買主へ、賃貸借の貸主としての権利も引き継ぎます。

貸主は、賃料等の収益がある一方で、敷金などの預り金の返還義務や設備等の修繕義務などがあります。
オーナーチェンジ物件の場合は、賃貸借に係る部分に配慮して取引を行わなければなりません。

今回は、オーナーチェンジ物件を売却するときの基本的な注意点について、お話し致します。

賃貸借について

空き家や空室になっている物件は、オーナーチェンジ物件とはいいません。
オーナーチェンジ物件は、現に借主が賃貸して利用している状態で売買します。

買主によっては、その物件を自身が居住することを目的として購入したいと考えるかもしれません。
ただし、基本的には、買主である新オーナーが賃貸借契約を解除することはできません。

例えば、競売開始により差押登記がなされた後に締結された賃貸借契約については、借主は新所有者に対抗できません。
そのような特別な条件があるときを除いて、オーナーチェンジ物件は、収益を目的とする希望者へ売却することになるでしょう。

敷金等の取扱い

賃貸借契約締結時に借主から敷金を預かっている場合、どのように取り扱いを行えばいいでしょうか。

賃貸物件のオーナーチェンジの場合は、新所有者である買主が前所有者である売主から現実に敷金を引き継いだか否かに関わらず、借主への敷金返還債務を引き継ぎます。

そのため、敷金の金銭については、不動産売買時に、売主と買主の間で清算するか否かを取り決めます。
一般的には、関東では敷金の清算を行ったうえで、敷金返還債務を引き継ぐことが多いです。

一方で、関西では敷金の清算は行わずに敷金返還債務を引き継ぐことが多いです。
敷金清算の相当分を考慮したうえで、売買代金を決定することになります。

敷金返還債務は、所有権が移転されると買主へ引き継がれます。
そのうえで、不動産売買時に敷金清算をどのように行うか、当事者間で取り決めます。

なお、所有権移転前に賃料の滞納があった場合は、特約などがない場合を除き、新所有者である買主へは引き継がれません。

借主への対応

借主にとっては、オーナーが変わることに対して、少なからず不安があることでしょう。

今はオーナーが直接物件を管理することは減ってきており、窓口は管理会社が行うことが増えています。
それでも、決定権者は管理会社ではなくオーナーであることに変わりありません。
オーナーが変わることによって、今後の対応がどのようになっていくか、借主が不安に感じることは当然でしょう。

売主にとっては、売却すれば借主との関係がなくなるかもしれません。
しかし、不安がある借主と新たに貸主となる買主がスムーズに引継ぎできるように配慮しなければなりません。

まずは、オーナーが変わることを、売主・買主が連名で書面にて借主へ通知します。
そのとき、今後の賃料等の支払先や連絡先を、通知すると良いでしょう。

買主によっては、管理会社も変更することもあるでしょう。
管理会社の集金方法が口座振替などの場合は、事前に借主が手続きを済ませなければなりません。
手続きが完了するまでは振込などによる支払いとなります。

短期間で支払方法が変わることは、借主を混乱させ、入金状況にも影響が生じかねません。
支払方法の変更は、あくまで貸主側の都合によるものです。
できるだけ効率的に手続きを済ませられるようにしましょう。
オーナーが変わることに対して、借主が不安を持っていることを忘れないでください。

借主が購入するケース

対象物件が区分所有マンションの場合であれば、借主が購入するというケースもあるでしょう。

売買を行い所有権が移転されると、買主である借主が所有者となるため、賃貸借契約は終了となります。
そのため、賃料等の支払をいつの分までにするか、また敷金等の清算を行うかどうか、取り決めを行わなければなりません。

また、区分所有マンションが対象の売買の場合は、管理組合への届け出を行わなければなりません。
これは、借主が購入するケースだけではなく、第三者へ売買するときも同様です。

物件価格の査定方法

オーナーチェンジ物件は、居住を目的とした物件とは、価格の査定方法が異なります。

居住を目的とした物件は、例えばその土地が近隣でどれくらいの価格で取引されているか、坪単価はどれくらいかなど、取引された近隣の事例を参考にして評価します。

一方、オーナーチェンジ物件は、収益を目的とした物件です。
そのため、その物件がどれだけの収益を上げることができるかという、収益力で評価します。

収益還元法

オーナーチェンジ物件は、どれだけの収益力があるかを導く収益還元法によって、査定します。
なお、居住を目的とした物件は、近隣の取引事例を参考にした取引事例法によって、査定します。

収益還元法には、直接還元法とDCF法という2つの方法があります。

直接還元法は、ある一定の期間(例えば1年間)の純収益を、還元利回りで割って収益価格を算出します。

DCF法とは「ディスカウントキャッシュフロー」の略です。
連続する複数の期間それぞれの純利益を、それぞれに対応した割引率で割り引きます。
そこで求めた現在価値を合計して、収益価格を算出します。

直接還元法

直接還元法は、ある一定の期間(例えば1年間)の「純収益」を、「還元利回り」で割って「収益価格」を算出します。
 「収益価格」=「純収益」÷「還元利回り」

順収益とは、経営活動によって得た純売上(運営収益)から、経営活動に必要な経費(運営経費)を差し引いた利益のことです。

還元利回りは、キャップレートともいいます。
還元利回りの算出方法は、立地や建築年数、間取りなど、対象物件と条件が似ている物件を参考にして算出します。
区分所有マンションであれば、同じマンション内の別の部屋を参考にすることもあります。

販売中の物件の情報であれば、インターネットの情報サイトから入手できる場合がありますが、いくらで取引されたかという販売済みの物件の情報は、入手に苦労するかもしれません。
その場合、国土交通省の「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」から、成約済みの物件の情報を入手できるかもしれませんので参考にしてみてください。

DCF法

DCF法とは「ディスカウントキャッシュフロー」の略です。
連続する複数の期間それぞれの純利益を、それぞれに対応した割引率で割り引きます。
そこで求めた現在価値を合計して、収益価格を算出します。

 「査定価格」=「毎期の純利益の現在価値の合計」+「将来保有期間後の売却想定額」

DCF法は、不動産の所有することによって得られるであろう利益と、将来のキャッシュフローに必要な経費などを総合的に判断して、物件価格を算出します。
そのため、複数年所有することを目的とする場合は、直接還元法よりDCF法で算出することが一般的でしょう。

ただし、その計算方法は複雑です。
また、割引率として1年経過後にどれだけ割り引くか、正解がわかりません。
そのうえ、将来保有期間後の売却想定額も、正解がわかりません。
過去の事例を参考に算出するものの、計算式には不確定要素が多く、結局は目利きによるものが大きいと考えられます。

オーナーチェンジ物件は居住用物件より査定額が低い?

先述したとおり、オーナーチェンジ物件と居住用物件は、査定方法が異なります。
その結果、特にファミリータイプの物件は、居住用物件と比べて査定価格が低くなる傾向があります。

理由は物件個別の事情によりますが、多くは賃貸借契約、借主があることでしょう。

入居中の入居者を退去させることは困難であるため、制限があります。
賃貸借が定期借家契約で、期間に定めがある契約であれば、空室になる時期などがはっきりしますが、一般的な普通借家の場合は、いつ借主が明け渡すかわかりません。

また、逆にいつ借主が退去するかわかりません。
借主がいなければ収益は得られません。
建築年数が経ち、また周辺に新しい競合物件が建築されれば、賃料を下げざるを得ません。

同じマンションでも、単身用の部屋とファミリー用の部屋があった場合、必ずしも平米単価が同じにはなりません。
「60㎡」の部屋が、「20㎡」の3倍の価格で成約しているかどうか、調べてみてください。

その他の注意点

オーナーチェンジ物件の売却には、ほかにも注意すべき点があります。

売主にとっては、居住用物件と比べて価格査定が低くなりがちであることはデメリットですが、購入する側にも違ったリスクがあり、手放すメリットもあります。

買主が注意すべき点について、売主が理解することによって、よりスムーズな売却を実現することができるでしょう。

買主の資金調達方法

特にファミリータイプの物件は、居住用物件と比べて、購入資金のための融資が難しい傾向にあります。

居住を目的とする場合は、住宅ローンを利用することができます。
ただし、オーナーチェンジの場合は、不動産投資ローンを利用することになります。

オーナーチェンジの場合は査定価格が低くくなるのと同様に、融資先が収益性を低く見積もる傾向にあり、融資を受けられないケースもあります。
また、不動産投資ローンは、住宅ローンと金利が大きく違います。
金利が大きくなると、当然経費が増えます。

融資を利用せず、現金で購入する方には影響はありません。
ただし、単身物件と比べてファミリー物件は、設定価格が高いことが多いでしょう。
現金でも購入しやすい価格設定の物件であれば大きな影響はありませんが、融資を利用することが多いと想定される価格設定の物件の場合は、注意が必要です。

室内を確認することができない

賃貸中の物件のメリットの1つは、すぐに賃料収入が得られるという点です。
(ただし、いつ退去するかわかりません。)
一方で新築未入居の場合は、取得後借主を探さなければなりません。

ただし、賃貸中の場合は、室内を確認することができません。
(入居者が室内確認の協力があれば別です。)

そのため、買主に対して、できるだけ多くの情報を提供できるようにしておく必要があります。
間取りや設備に関するパンフレット、マンションの場合は管理規約集や総会議事録、過去に修繕した設備や内装などの記録、室内の写真などを保管しておきましょう。

もちろん、不具合や心理的瑕疵にあたることも、すべて開示しなければなりません。

買主も、永続的に保有することは考えにくいでしょう。
将来、売却するときのこと(出口戦略)も、考えているはずです。
そのときには、買主も同じように正確で多くの情報を提供しなければ、売却することができないと考えることでしょう。

終わりに

今回は、オーナーチェンジ物件を売却するときの基本的な注意点について、お話し致しました。

オーナーチェンジ物件は、買主に比べて、売主の方が注意すべき点は少ないでしょう。
そもそも、売却時に準備や対策を始めたところで、大きな違いは出にくいでしょう。
購入するときの見極めが大切です。

また、購入してからの維持管理、入居者の選定や斡旋とその情報(レントロール)、修繕や事故などの情報を正確に記録し蓄積することも大切です。
これらの業務は、管理会社に委託されていることが多いでしょう。
そのため、管理会社の選定や対応が重要であると言われます。

なお、オーナーチェンジ物件は、購入に長けた経験がある買主もいますが、不動産投資の初心者も対象となります。
一棟収益など高額な物件は、初心者には向きません。
できるだけ安全な取引を行えるように、購入時から対策を行いましょう。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。