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不動産売買の契約を解除するときの方法について

売買契約の解除事由について
売買契約を締結した後、物件の引渡しを行うまでの間になんらかの事情があって売買契約を解除するような事態があるかもしれません。
そこで、どのような場合に売買契約が解除できるか知っておく必要があります。
また、契約が解除された場合、媒介業者に対して仲介手数料を支払う必要はあるでしょうか。

不動産売買契約を締結するまでに説明される重要事項説明において、契約の解除等に関する事項について説明がされますので、そのときにも十分に確認しておくと良いでしょう。
今回は、不動産売買の契約を解除するときの方法について、お話し致します。

契約解除の方法にはどのようなものがあるか

重要事項説明では、契約を解除する方法を、次のような項目で説明されることが多いようです。

1. 手付解除
2. 引渡し完了前の滅失・損傷による解除
3. 融資利用の特約による解除
4. 譲渡承諾の特約による解除
5. 契約不適合による解除
6. 修補の遅滞を含む契約違反による解除
7. 反社会的勢力の排除に関する特約に基づく解除
8. その他の解除

このような契約で決められた方法のほかにも、クーリング・オフによる契約の解除などがあります。
それぞれ、理解をしておきましょう。

手付解除

手付金を放棄することにより、契約の解除をすることができます。

相手方である売主もしくは買主の承諾は、必要ありません。
手付金を放棄して契約を解除することを通知すれば、契約の解除が成立します。

ただし、すでに売主が「履行の着手」をしているときは、手付解除ができません。

実は「履行の着手」は難しい問題です。
それは、「履行の着手」の判断基準が、明確ではないためです。
売主が「履行の着手」を理由に手付解除を拒んだときは、履行の着手の内容をよく聞いて、弁護士等の法律の専門家に相談してください。

もう1つ、「履行の着手」に関わる民法(557条1項)は任意規定であり、当事者はその規定と異なる特約を定めることが可能です。
例えば、「その相手方の履行着手の有無にかかわらず、互いに書面により通知して、解除することができる」とする特約は有効です。

なお、売主が不動産業者以外の場合は、一般的に「手付解除期日」を設定します。
手付解除期日が定められているときは、手付解除期日を過ぎると解除ができなくなります。

ただし、売主が不動産業者の場合は、手付解除期日を設定しても無効になります。
設定されていても、「履行の着手」があるまでは、手付を放棄して契約を解除することができます。

引渡し完了前の滅失・損傷による解除

売買契約を締結した後、売買対象の不動産を引き渡すまでに、天災地変などがあった場合は、一般的に売主は、対象不動産を修復して引き渡さなければならないと取り決められています。

ただし、例えば天災地変の規模が大きく、対象不動産が滅失したり毀損するなどにより、修復が不可能であり売買契約の履行が不可能となったときには、互いに書面によりその相手方に通知して、売買契約を解除することができます。

融資(ローン)利用の特約による解除

融資利用の特約は必ず付いているわけではないので、契約前に特約があることを必ず確認しておくことが必要です。

不動産会社の提携ローン、あっせんローン以外の借入れは、適用除外になっていることがあります。
例えば、買主の取引先銀行からの融資や買主の社内融資等の、自主ローンがあります。
特約の内容を十分に確認して、自主ローンが特約に適用されるか確認しましょう。

また、融資解除期日にも注意しましょう。
解除期日を過ぎると解除することができません。
売主にとっては、いつまでも解除される可能性があると、引渡しの準備ができません。
金融機関等の審査が遅れて解除期日を過ぎてしまわないように、すみやかに手続きを行いましょう。

譲渡承諾の特約による解除

借地権が付いている建物(もしくは借地権が付いている区分所有建物)を取引する場合に、この特約を付けることがあります。

借地権がある土地の譲渡は、賃貸人(地主)の承諾が必要です。
そのため、売主は、借地権が付いている建物を売却するときには、土地の賃貸人である地主より、土地の譲渡について承諾を得なければなりません。
土地の賃貸人である地主の承諾なしに売却した場合には、地主が借地契約を解除することも考えられます。

この場合、解除期日を定めて取引を行うことが一般的です。
解除期日を過ぎると解除することができません。
買主にとっては、いつまでも解除される可能性があると、引渡しの準備ができません。

借地権が付いている建物を売却するときには、地主の承諾料が必要となる場合があります。
売主は、事前に地主と確認し、取り決めを行っておくと良いでしょう。

契約不適合による解除

売買契約において、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであることを、契約不適合といいます。
例えば、引渡しを受けた後に、土地が土壌で汚染されていることが判明したり、建物の土台がシロアリの被害を受けていることがわかったりした場合が、契約不適合です。

契約不適合責任については、過去にブログでも取り上げていますので、詳しくはそちらもご覧ください。

2020年(令和2年)4月1日の改正民法施行によって、瑕疵担保責任が廃止され、契約不適合責任の制度が導入されました。
契約不適合による売主の担保責任については、買主が引渡しを受けた土地や建物に欠陥が見つかった場合に、欠陥の修補を請求することができます。

また、契約の解除は、目的を達成できない場合に限定されず、修補などを求めても売主がこれに対応しない場合であって、売主に相当の期間を定めて催告をしても期間内に売主の義務が履行されないときは、契約不適合が軽微なものでなければ、契約の解除ができます。

参考:不動産売却の注意事項 契約不適合責任とは【BLOG】

修補の遅滞を含む契約違反による解除

先ほどの契約不適合によって買主が売主に対して修補を求めても、売主が修補を遅れた場合、買主は契約違反として契約を解除することができます。

ほかに例えば、売主が「約束した期日までに建物を引き渡さない」場合、契約どおりに引き渡すように催告しても引き渡さないときは、買主は、契約を解除して違約金を請求することができます。

契約で約束したことを行わないことを、債務不履行といいます。
売主・買主は、互いに相手方に対し、契約上の義務を履行しなかったときには債務不履行責任を負います。

軽微な債務不履行については契約解除できませんが、損害が生じているときは損害賠償を求めることができます。

反社会的勢力の排除に関する特約に基づく解除

反社会的勢力排除条項は、地方公共団体によって施工されている暴力団排除条例に基づいています。
暴力団排除条例は、一般市民が暴力団関係者と関係を持たないようにするための条例です。

2009年(平成21年)6月より、不動産関係団体による協議会組織を主体に、有識者も交える形で排除条項の活用に向けた検討が開始され、国土交通省と警察庁もこれに協力する形で協議・検討に参加し、議論が重ねられてきました。
最終的に、不動産関係団体が共同または単独の形でモデル条項を策定しました。

売主・買主が反社会的勢力に該当する場合などは、相手方は契約違反として契約を解除することができます。

参考:反社会的勢力排除のためのモデル条項について【国土交通省】

クーリング・オフによる解除

クーリング・オフとは、契約の申込や契約の締結をしてしまった後に、一定期間であれば、無条件で契約の申込を撤回したり契約を解除できる制度です。

クーリング・オフで解除した場合は、支払った手付金等の金銭は返還してもらえます。

クーリングオフに関する規定は強行規定です。
そのため、法律の定めと異なる特約をしたとしても、特約が買主・申込者に不利な内容であるときは、その特約は無効です。

なお、不動産売買契約でクーリング・オフができるのは特定の場合に限られます。

クーリング・オフの適用要件

クーリング・オフの適用要件には、①「当事者」、②「取引場所」、③「適用の例外」の、3つのポイントがあります。

①「当事者」については、「不動産業者自らが売主」で且つ「不動産業者以外の一般購入者が買主」となる場合に、クーリング・オフが適用されます。
「売主が不動産業者ではない」場合や、「売主と買主のいずれも不動産業者である」場合には、適用はありません。

②「取引の場所」としては、申込みや契約が、業者の事務所等以外の場所においてなされた場合に適用があります。
業者の事務所等以外の場所とは、例えば「申込者・買主の自宅や勤務先」や、「カフェやレストランなどの飲食店」などが当てはまります。

③「適用の例外」に関しては、クーリング・オフが適用されない3つの例外が定められています。

1番目の例外は、申込者・買主から申出があった場合です。
申込者・買主から、自宅、または勤務場所で契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合には、適用除外となります。

2番目の例外は、申込者・買主が、「申込みの撤回等ができる旨」および「申込みの撤回等を行う方法を告知された場合」において、告知日から8日を経過したときです。
なお、クーリング・オフの告知がなければ、8日の期間は開始されません。
そのため、申込みや契約から8日を経過しても、クーリング・オフの権利行使が可能です。

3番目の例外は、買主が、宅地または建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったときです。
売買契約が決済されて終了した場合にまで契約解除を認めるのは、取引の安全を害するとして、例外とされています。

合意解除

その他、売買契約の特約などにより取り決めた事項について達成されなかったときや、事前に予想されなかったことが発生することもあるでしょう。
そのときに、売主・買主が互いに合意のうえ、契約を解除することができます。

解除条件は、その事案の内容により取り決めます。
事前に特約で取り決めを行っていた場合は、その取り決めに準ずることが原則です。

解除したときの仲介手数料の支払義務

契約を解除、もしくは解除された場合、媒介業者へ仲介手数料を支払う義務はあるでしょうか。

解除条件特約による解除や、クーリング・オフによる解除の場合は、媒介業者は仲介手数料を請求することができません。
そのため、売主・買主が支払っているときは、返金されます。

ただし、手付解除、契約違反による解除、契約不適合による解除の場合は、媒介業者に媒介責任がない限り、仲介手数料を支払う義務があります。

合意解除による解除も、解除の原因に媒介責任がなければ、媒介業者に媒介報酬請求権があります。

終わりに

今回は、不動産売買の契約を解除するときの方法について、お話し致しました。
契約の解除は誰にとっても望むところではないでしょうが、だからこそ大事な取り決めです。

契約の解除の事由によっては、違約金や仲介手数料など費用が発生することもあります。
重要事項の説明でも説明されますので、内容を理解して契約に臨むように心がけましょう。


執筆者
MIRAI不動産株式会社 井﨑 浩和
大阪市淀川区にある不動産会社を経営しています。不動産に関わるようになって20年以上になります。
弊社は、“人”を大切にしています。不動産を単なる土地・建物として見るのではなく、そこに込められた"想い"に寄り添い受け継がれていくよう、人と人、人と不動産の架け橋としての役割を果たします。