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都市計画法・建築基準法に係る景観や風致などを制限する地域・地区・街区について

その他の地域・地区・街区
不動産については、関連する行政法規の種類が多く、不動産を使用、収益、処分するうえでの公法上の制限(宅地建物に対する現状変更の禁止、建築制限や利用制限等)が課せられることがあります。
このような場合に、不動産に関する公法上の制限について、買主等が知らないまま、または十分に理解しないまま取引した場合には、買主がその契約目的を達成することができないなど、不測の損害を被ることにもなりかねません。

前回は、不動産売買に係る行政法規のうち「都市計画法」と「建築基準法」の法令に基づく制限について、取り上げました。
前回までにお話ししました都市計画以外にも、景観地区や風致地区、地区計画(都市計画法12条の4第1項各号に掲げる計画)など、都市利用に関して影響がある地域地区が、定められています。

今回は、それぞれの法令に基づく制限の続きについて、お話し致します。

特定街区

特定街区は、市街地の整備改善を図るため、街区の整備または造成が行われる地区であり、特定街区においては、建築物の容積率、建築物の高さの最高限度および壁面の位置の制限が定められます。

特定街区内に建築される建築物には、建築基準法で定められた容積率、建ぺい率、高さ制限、斜線制限等の一般的な規制は全てが適用されず、特定街区に関する都市計画の規制が適用されます。
つまり、特定街区内の建築物の容積率、建築物の高さは、特定街区に関する都市計画で定められた限度以下でなければなりません。
また、建築物の壁またはこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分および国土交通大臣が指定する歩廊の柱などを除き、特定街区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築することができません。

特定街区は、街区単位で特別に容積率等を定めることができることから、敷地内に一般の基準より多くの有効空地を確保した市街地環境上望ましい計画を誘導するため、容積率の割増をインセンティブとする運用が行われています。

景観地区

景観地区は、市街地の良好な景観の形成を図るため、都市計画に定められる地区です。

景観地区内においては、建築物および工作物の形態・意匠に制限が設けられており、建築主は建築にあたって、市町村長から建築計画の認定を受ける必要があります。
また、景観地区内においては、必要に応じて建築物の高さの最高限度または最低限度、壁面の位置の制限建築物の敷地面積の最低限度が定められます。

風致地区

風致地区は、都市の風致(自然の風景などが持つおもむきや味わい)を維持するために定められる着です。

風致地区内における建築物または宅地造成等の規制は、政令で定める基準の範囲内において、都道府県または市町村の条例によって定められます。

風致地区内では、次のような基準について行為制限が定められ、これらについては、原則として都道府県知事または市町村長の許可が必要となります。
・建築物の建築その他工作物の建設
・建築物その他の工作物の色彩の変更
・宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
・水面の埋立てまたは干ばつ
・木竹の伐採
・土石の類の採取
・屋外における土石、廃棄物または再生資源の堆積
・以上のほか、都市の風致の維持に影響及ぼす恐れがあるものとして条例で定める行為

災害危険区域

災害危険区域とは、地方公共団体が津波、高潮、出水等による危険の著しい区域として条例で指定した区域をいいます。
災害危険区域内では、条例に基づき、住居の用に供する建築物の建築の禁止、その他建築物の建築に関する制限で、災害防止上必要なものが定められます。

地区計画区域

地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等から見て、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、および保全するための計画です。
地区計画に関する都市計画では、地区計画の種類、名称、位置および区域等のほか、街区内の居住者等が利用する道路、公園等の地区施設および建築物等の整備並びに土地の利用に関する計画が定められるとともに、当該地区計画の目標、当該区域の整備、開発および保全に関する方針を定めるよう努めることとされています。

地区計画の区域の全部または一部について、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発または開発整備を実施すべき区域を都市計画において定めることができます。
また、劇場、店舗、飲食店、その他、これらに類する用途に供する大規模な建築物の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため、一体的かつ総合的な市街地の開発整備を実施すべき区域を都市計画において定めることができます。
当該再開発等促進区または開発整備促進区を定める地区計画においては、道路、公園等の施設の配置および規模を定めるものとし、土地利用に関する基本方針を定めるよう努めるものとされています。

地区整備計画または道路、公園等の施設(都市計画施設および地区施設を除く)の配置および規模が定められている再開発等促進区もしくは開発整備促進区が定められている地区計画区域内で、土地の区画形質の変更や建築等の行為をする場合は、原則として、その行為着手日の30日前までに、必要事項を市町村長に届け出なければなりません。
また、その届出事項を変更する場合も同様です。

また、市町村は、条例で、地区計画の区域内の農地の区域内において、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設等の行為について、市町村長の許可を受けなければならないこととすることができます。

さらに、市町村は、地区計画等の区域内において、建築物の敷地、構造、建築設備または用途に関する事項で、当該地区計画等の内容として定められたものを、条例で、これらに関する制限として定めることができます。

地区計画は、駅前の再開発や新駅を設ける際の周辺地域、新規の分譲地等で定めることが多いです。
地区計画の詳細については、市町村長の都市計画課等で調べましょう。

特定用途制限地域

特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、その良好な環境の形成または保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域です。
制限すべき特定の建築物等の用途の制限は、政令で定める基準に従って、条例で定められます。

なお、市町村長が当該地域の良好な環境を害する恐れがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合は、当該条例は、適用除外となります。

高層住居誘導地区

高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途を適切に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するために、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域内でこれらの用途地域による指定容積率が400%または500%である地区において、容積率の最高限度、建ぺい率の最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するために必要な場合に限る)および敷地面積の最低限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る)が定められる地区です。

高層住居誘導地区内において、高層住居誘導地区に関する都市計画で建ぺい率の最高限度が定められたときは、高層住居誘導地区内の建築物の建ぺい率は、当該最高限度以下でなければなりません。
また、建築物の敷地が高層住居誘導地区の内外に渡るときは、当該高層住居誘導地区に関する都市計画で定められた建築物の建ぺい率の最高限度を、当該建築物の当該高層住居誘導地区内にある部分に係る建築基準法53条1項の規定による建ぺい率の限度とみなして、同条2項の規定(加重平均方式)を適用して算出した数値が、建ぺい率の最高限度となります。

さらに、高層住居誘導地区内では、高層住宅の建設を誘導するため、住宅に係る容積率の引上げや、斜線制限の緩和、前面道路幅員容積率制限の緩和が行われるほか、日影規制の一部適用除外等の措置が講じられます。

駐車場整備地区

駐車場整備地区は、商業地域、近隣商業地域、第一種住居地域、第二種住居地域もしくは、準工業地域内で、自動車交通が著しく輻輳(ふくそう)する地区またはその周辺の地域内の同様な地区において、道路の効用を保持し、円滑な道路交通を確保する必要がある区域として、都市計画に定められます。

地方公共団体は、駐車場整備地区内では、延べ面積が2,000㎡以上で、条例で定める規模以上の建築物を新築、増築し、または当該規模以上となる増築をしようとする場合、その建築物または敷地内に、床面積に応じて一定の自動車の駐車のための施設を設けなければならない旨を定めることができます。

終わりに

今回も、「都市計画法」と「建築基準法」の法令に基づく制限の続きとして、様々な地域・地区・街区について、お話し致しました。

これまでに取り上げた地域・地区・街区以外にも、注意しなければならない地域・地区・街区があります。
たとえば以下のようなものがあります。
・都市再生特別地区
・特定防災街区整備地区
・建築協定区域
・臨港地区
・緑化地域
・生産緑地地区
・特定用途誘導地区
・居住環境向上用途誘導地区
・居住調整地域


都市計画において、これらの地域・地区・街区が定められた場合には、当該地域・地区・街区において、建築基準法などの法令に基づく制限を受けます。
また、常に一定とは限りませんので、最新の情報を確認するように努めましょう。