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都市計画法・建築基準法に係る高さや防火などを制限する地域・地区・街区について

その他の地域・地区・街区
不動産については、関連する行政法規の種類が多く、不動産を使用、収益、処分するうえでの公法上の制限(宅地建物に対する現状変更の禁止、建築制限や利用制限等)が課せられることがあります。
このような場合に、不動産に関する公法上の制限について、買主等が知らないまま、または十分に理解しないまま取引した場合には、買主がその契約目的を達成することができないなど、不測の損害を被ることにもなりかねません。

前回は、不動産売買に係る行政法規のうち「都市計画法」と「建築基準法」の法令に基づく制限について、取り上げました。
前回までにお話ししました都市計画には、用途地域だけではなく、必要に応じて、特別用途地区、特定用途制限地域、高層住居誘導地区、高度地区、高度利用地区、特定街区、防火地域・準防火地域などの地域地区が、定められます。

今回は、それぞれの法令に基づく制限の続きについて、お話し致します。

特別用途地区

特別用途地区は、用途地域内の一定の地区において、当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護などの特別の目的を実現するために、当該用途地域の指定を補完して指定される地域です。
特別用途地域における具体的な建築物の建築制限または禁止に関する規定は、地方公共団体の条例で定められます。
特別用途地区では、当該用途地域の一般的な用途制限を強化するだけではなく、国土交通大臣の承認を得たうえで制限が緩和されることもあります。

特別用途地区の種類

特別用途地区の種類としては、主に以下のものがあります。

【特別工業地区】
工業地域工業専用地域、そして準工業地域内において、公害防止の観点から立地すべき工業の業種、業態を限定(公害防止型)すること、または準工業地域商業地域住居型の用途地域内において、繊維、木工などの家内工業を地場産業として保護または育成(地場産業を保護型)することなどを目的として設定されます。

【文教地区】
教育や研究、そして文化活動を優先した環境の維持向上させるために、教育文化施設(学校、研究所など)の集団立地地区の環境を保護することを目的として設定されます。

【事務所地区】
商業地域などにおいて、官公庁建築物、事務所建築物の集中立地を保護または育成することを目的として設定されます。

【娯楽レクリエーション地区】
大都市の歓楽街と風俗営業遊戯施設の集中立地を保護または育成すること、住宅地でボーリング場など遊戯施設、飲食店の集中立地を保護または育成すること、海浜、大規模公園などレクリエーション施設の環境を保護し、利便を増進すること、または避暑地、温泉地などでホテル、旅館、遊戯施設などの集中立地を保護または育成することなどを目的として設定されます。

【観光地区】
温泉地・景勝地など観光地の観光施設の集中立地を保護または育成することを 目的として設定されます。

【特別業務地区】
卸売市場、卸売業の用に供する店舗または事務所を中心とする施設の集中立地(卸売業務型)、トラックターミナルなどの流通関連施設の集中立地(ターミナル・倉庫型)、または幹線道路沿線などの交通至便地区で、ガソリンスタンドなどの広域的サービス施設の集中立地など(沿道サービス型)を、保護または育成することを目的として設定されます。

【厚生地区】
病院その他の医療施設や託児所その他の社会福祉施設補助を中心とする良好な構成環境を保護することを目的として設定されます。

【中高層階住居専用地区】
大都市の都市部の夜間人口の過疎化対策の一環として、一定地域のビルの中高層階の用途を住宅に限定し、住民の増加・定住化を図ることを目的として設定されます。

【商業専用地区】
店舗、事務所などが集積する地区において、低層階の住宅、工場などを制限し、商業業務型用途の利便の増進を図ることを目的として設定されます。

【研究開発地区】
研究所、研究支援施設、その他の研究開発施設の集積を図り、これらの施設に係る環境の保護および利便の増進を図ることを目的として設定されます。

防火地域および準防火地域

防火地域および準防火地域は、市街化における火災の危険を防止するために定められる地域です。
大規模な商業施設や住宅が密集している地域において火災が発生した場合には、甚大な被害が生じる可能性があるため、防火機能を高めて都市を火災から守ることは都市計画の重要な役割の1つと考えられています。
防火地域、準防火地域では、一定の規模の建築物を建築する場合、建築物の構造などは、一定の制限を受けます。

防火地域および準防火地域における建築制限

防火地域および準防火地域において、一定の建築物を建築する場合、それぞれの建築物の階数や延べ面積に応じて、必要な構造などを備える必要があります。

ただし、 次に該当する建築物については、耐火建築物または準耐火建築物にする必要はありません。
・高さ2m以下の門または堀
・準防火地域内にある建築物に附属する門または堀
・国土交通省告示第194号に一定の条件のもと、除外される建築物

また、防火地域内にある看板、広告塔、装飾などその他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるもの、または高さ3mを超えるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、または覆わなければなりません。

防火地域および準防火地域における共通した建築制限

防火地域および準防火地域においては、屋根開口部および外壁について、以下の規制を受けます。

【屋根】
建築物の屋根で耐火構造または準耐火構造でないものは不燃材料で造り、または葺かなければなりません。

【開口部】
外壁の開口部で延焼の恐れのある部分に、防火戸その他の防火設備を設けなければなりません。

【外壁】
外壁が防火構造の建築物は、その外壁を隣地境界線に接して設けることができます。

建築物が防火地域または準防火地域の内外にわたる場合の措置

建築物が防火地域、準防火地域、これらの地域の指定がない区域のうち複数の地域、区域にわたる場合には、建築物全部について、防火上の制限が最も厳しい地域の規制が適用されます。
ただし、制限の緩やかな地域に属する部分に防火壁を設けた場合は、その防火壁によって区画された制限の緩やかな地域に属する部分には制限の厳しい地域の規制は適用されません。

建築基準法第22条区域

建築基準法第22条区域とは、火災による延焼の防止を目的として、耐火・準耐火建築物以外の建築物の屋根の構造を規制する区域です。
屋根不燃区域と呼称されることもあります。
防火地域・準防火地域は、都市計画区域内にのみ指定されますが、建築基準法第22条区域は、都市計画区域の内外を問わずに指定することができ、防火地域、準防火地域に準ずる制限区域として、主として、一般の木造市街地を対象として指定され、都市計画区域内ではほとんどが指定区域とされています。

建築基準法第22条区域における建築物の防火規制は、次のとおりです。
・建築物の屋根は、原則として、不燃材料等で造り、または葺かなければなりません。
・主要構造部が可燃物で作られた木造の建築物などは、その外壁のうち、延焼の恐れのある部分を土塗壁などとし、または延焼防止についてこれと同等以上の効力を有する構造としなければなりません。

建築基準法第22条区域の指定にあたっては、特定行政庁は、あらかじめ都市計画区域内にある区域については都道府県都市計画審議会(市町村都市計画審議会)の意見を聴き、その他の区域については、関係市町村の同意を得なければならないとされています。

なお、建築物が建築基準法第22条区域の内外にわたる場合においては、その本について、建築基準法第22条区域の規定が適用されます。

高度地区および高度利用地区

高度地区および高度利用地区は、都市計画法第8条第1項第三号に規定される地域地区の一つです。
高度地区は主に建築物の高さに関して制限を定め、高度利用地区は主に容積率や建ぺい率の敷地面積に関する制限を定めています。

高度地区

高度地区とは、用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度が定められている地区です。

高度地区内においては、地区内の建築物の高さについて規制を受けますが、規制には建築物の高さの最高限度を定めるものと、最低限度を定める2種類があり、建築物は、その高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合するものでなければなりません。

高度地区の制限の内容は、地方公共団体ごとに都市計画で定められており、例えば大阪市の場合では高度地区は第1種から第2種まで、神戸市では第1種から第8種までの高度地区があるように、その規制内容は全国一律ではありません。
また、地方公共団体によっては、建築物の絶対的な高さを定めている高度地区もあります。

高度利用地区

高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、建築物の容積率の最高限度または最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限が定められる地区です。

高度利用地区においては、建築物の容積率、建ぺい率、建築面積は、原則として高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければなりません。

また、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面は、原則として、高度利用地区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築することはできません。

終わりに

今回は、「都市計画法」と「建築基準法」の法令に基づく制限の続きについて、お話し致しました。

都市計画で定められた用途地域内の一定の地区において特性にふさわしい土地利用を補完する特別用途地区、市街地における火災の危機を防止するために定められる防火地域および準防火地域、市街地の環境の維持などを目的として建築物の高さもしくは容積率や建ぺい率の敷地面積に制限を定める高度地区もしくは高度利用地区について、お話し致しました。

いずれの制限も建築物を建築するに際して影響を及ぼしますので、買主等がこれらの制限を知らないまま、もしくは十分に理解しないまま取引を行うと、その契約目的を達成することができないなど、不測の損害を被ることになりかねません。
買主に影響があるということは、売主にも影響があると考え、理解に努めましょう。