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不動産売買に係る建築基準法の法令に基づく制限

建築基準法に基づく制限
不動産については、関連する行政法規の種類が多く、不動産を使用、収益、処分するうえでの公法上の制限(宅地建物に対する現状変更の禁止、建築制限や利用制限等)が課せられることがあります。
このような場合に、不動産に関する公法上の制限について、買主等が知らないまま、または十分に理解しないまま取引した場合には、買主がその契約目的を達成することができないなど、不測の損害を被ることにもなりかねません。

そのため、宅地建物取引業者は、宅建業法35条1項2号で、「都市計画法(略して「都計法」とも言われます。)、建築基準法(略して「建基法」とも言われます。)その他の法令に基づく制限で宅地建物取引業法施行令で定めるものに関する事項の概要」について、説明することが義務付けられています。

不動産を売却する際には、関連する公法上の制限によってどのような影響が考えられるか、売主にも理解することが求められます。
前回は、不動産売買に係る行政法規のうち「都市計画法」の法令に基づく制限について、取り上げました。
今回は、不動産売買に係る行政法規のうち「建築基準法」の法令に基づく制限について、お話し致します。

建築基準法の概要

建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康や財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とした法律であり、建物を建築する際には必ず守らなければならない基本的な法律です。

建築物とは、土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するもの、これに付随する門もしくは堀、観覧のための工作物または地下もしくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設をいい、建築設備も建築物に含まれます。

建築基準法の定めには、用語の定義や各種手続きや罰則等が定められた制度規定と、建築物の具体的な基準を定めた実体規定の2つに大きく分類されます。
そして、実態規定は、単体規定と集団規定に分類されます。
単体規定は、個別の建築物の構造上、防火上、衛生上等に関する規定であって、個別の部位のあり方を規律し、人々の安全性の確保を図るものです。
集団規定は、良好な集団的建築環境の確保を目的とする規定であり、都市計画と相まって、計画的な都市づくりの実現に資するものです。

単体規定

単体規定とは、建築基準法第2章の規定をいい、防火・防災の観点に基づく屋根、外壁、廊下、階段、出入口などに関する定めや、衛生の観点に基づく採光、換気、石綿(アスベスト)に関する事項などについての規定があります。
また、災害危険区域、地方公共団体の条例による制限の付加が定められています。

集団規定

集団規定とは、建築基準法第3章の規定をいい、都市計画区域および準都市計画区域内における建築物の敷地の摂動義務、用途制限、容積率、建ぺい率、高さなどの制限等が定められています。

宅建業法35条1項2号により、重要事項として説明すべき建築基準法に基づく制限において、また宅建業法施行令3条1項に定めるものは、この集団規定による規制内容を主として説明することになっています。

集団規定による制限は、一般の消費者にとって理解困難なものが多いため、重要事項説明に際しては、建物を建築するかどうか、建築物の用途や構造、規模などを踏まえた顧客の購入動機と、現実の法規制が一致しているかどうかを調査する必要があります。
また、集団規定に関する事項は、都市計画区域および準都市計画区域以外の区域のうち、一定の区域内において、地方公共団体が政令で定める基準に従い、条例で必要な制限を定めることができるため、条例による制限についても注意して調査する必要があります。

建築基準法で定める建築確認・検査制度

建築確認検査は、建築物を建設、使用する際の建築基準法で義務として定められた審査・検査制度です。

建築確認申請制度

建築基準法は、建築基準関係規定に違反する建築物の建築(新築、増築、改築または移転すること)等を防止するために、事前の確認手続きとして建築確認申請制度を設けています。

ここにいう、建築基準関係規定とは、建築基準法6条1項において定められた用語であり、次の法令等がその対象になります。
・建築基準法並びにこれに基づく命令および条例の規定
・その他建築物の敷地、構造、または建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令および条例の規定で、政令で定めるもの

建築主は、建築確認を必要とする建築物・建築設備の建築等をする場合には、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を建築主事(建築確認等に関する事務を遂行する市町村または都道府県の職員)または指定確認検査機関(建築確認申請の審査能力を有する民間機関として指定を受けたもの)に提出してその確認を受け、建築確認済証の交付を受けなければなりません。
この建築確認済証の交付を受けた後でなければ、当該建築工事等はすることができません。
なお、建築物以外の工作物でも、煙突や広告塔、高さが2mを超える擁壁、製造施設、貯蔵施設、遊戯施設、駐車施設等の工作物は、建築確認申請制度等の規定の準用を受け、建築確認が必要になります。

また、建築主事が確認を行った場合は、建築主事名で建築確認済証が交付されますが、指定確認検査機関の場合は、確認検査員名ではなく、指定確認検査機関名で建築確認済証が交付されます。

建築物に関する中間検査制度

建築主は、建築工事において以下の工程(特定工程)に係る工事を含む場合には、その工事を終えた際に、建築主事または指定確認検査機関に中間検査を申請しなければいけません。
・階数が3 以上である共同住宅の床および梁に鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程
・上記工程のほか、特定行政庁がその地方の建築物の建築の動向または工事に関する状況その他の事情を勘案して、区域、機関または建築物の構造、用途もしくは規模を限って指定する工程

建築主は、この検査を受け、当該申請に係る工事中の建築物等が建築基準関係規定に適合していると認められたときは、中間検査合格証の交付を受けます。
建築主は、この中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、特定工程後の後続工程にかかる工事を施行できません。

工事完了検査の申請制度・検査済証の交付

建築主は、建築工事を完了したときは、建築主事または指定確認検査機関に対して工事完了の検査を申請し、検査を受けなくてはなりません。
建築主は、当該申請に係る建築物等が建築基準関係規定に適合していると認められたときは、検査済証の交付を受けます。

なお、指定確認検査機関が建築確認・中間検査・完了検査を実施したときは、特定行政庁にその結果を報告します。

建築確認を必要とする建築物等

建築主事に対して確認申請をしなければならない建築物・建築設備・工作物は、適用区域、建築物の種類と規模によって異なります。

建築基準法で定める建築許可申請

建築基準法では、種々の建築行為などが制限されていますが、建築基準法の主旨を害さないものとして、例外的にその制限を緩和することができます。
そのための手続きを建築許可といい、建築物の敷地の接道義務や、用途地域内の建築制限等の条文中に、但書などで規定されています。
建築主は、確認申請前に許可権者である特定行政庁に対して、建築許可の申請を行います。
特定行政庁が許可する場合は、建築審査会等の同意等の手続・審査が必要になります。

都市計画法で定める用途地域

都市計画では、市街化区域内を住宅地(低層住宅地、中高層住宅地など)、商業地(近隣商業地、商業地など)、工業地(準工業地、工業地等など)などの種類に区分し、これを用途地域として定めています。
具体的には市街地の類型に応じて、13種類に分類されます。
各用途地域内では、建築基準法の規定により、建築物の用途規制、建ぺい率、容積率、外壁の後退距離、建物の高さなどの形態に関する規制がなされており、用途規制に適合しない建築物を建築しようとする場合には、特定行政庁による許可を受ける必要があります。

用途制限の種類と概要

用途制限の種類とその概要は以下のとおりです。

【第一種低層住居専用地域】
低層住宅の良好な環境守るための地域で、住宅のほか、店舗や事務所などの部分が一定規模以下の店舗兼住宅、事務所兼住宅、小・中学校、老人福祉センターや児童厚生施設、診療所などを建築することができる地域

【第二種低層住居専用地域】
主として低層住宅の良好な環境を守るための地域で、第一種低層住居専用地域に建築可能なものに加え、床面積150㎡までの一定規模の店舗、飲食店、コンビニなどを建築することができる地域

【第一種中高層住居専用地域】
中高層住宅の良好な環境を守るための地域で、住宅のほかに病院や大学、高等専門学校、床面積500㎡までの一定の店舗、飲食店、スーパーマーケットなどを建築することができる地域

【第二種中高層住居専用地域】
主として中高層住宅の良好な環境を守るための地域で、第一種中高層住居専用地域に建築可能なものに加え、床面積1,500㎡までの店舗、事務所などを建築することができる地域

【第一種住居地域】
住居の環境を守るための地域で、住宅のほかに床面積3,000㎡までの店舗、事務所、ホテル、スポーツ施設などを建築することができる地域

【第二種住居地域】
主として住居の環境を守るための地域で、住宅のほかに店舗、事務所、ホテル、パチンコ屋、雀荘、カラオケボックスなどを建築することができる地域

【準住居地域】
道路の沿道としての地域特性にふさわしく、自動車関連施設などの立地とさらにこれと調和した住居環境を保護するための地域

【田園住居地域】
農業の利便性を図りつつ、低層住宅の環境を保護するための地域

【近隣商業地域】
近隣住宅地の住民が買い物をする店舗や事務所などの利便の増進を図る地域で、住宅や店舗のほかに小規模な工場を建築することができる地域

【商業地域】
銀行、映画館、料理店、百貨店などの商業などの業務の利便の増進を図る地域で、住宅や小規模な工場も建築することができる地域

【準工業地域】
主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の業務の利便を図る地域で、危険性、環境悪化のおそれがある工場以外は建築することができる地域

【工業地域】
主として工業の業務の利便の増進を図る地域で、すべての工場を建築することができる地域(住宅や店舗などを建築することができるが、学校、病院などを建築することができない地域)

【工業専用地域】
専ら工業の業の利便の増進を図る地域で、すべての工場を建築することができる地域(工業地域で建築することのできる住宅、店舗などを建築することができない地域)

取引対象不動産が2以上の用途地域にわたる場合

取引の対象となる建物が、2以上の用途地域にわたるときの集団規定は、以下のとおり整理できます。

【グループ①】
建物の位置にかかわらず、敷地面積の過半を占める用途地域の制限が適用される類型
・建物用途の制限:敷地の過半を占める地域
・敷地面積最低限度:敷地の過半を占める地域

【グループ②】
用途地域ごとの敷地面積と容積率(または建ぺい率)を乗じた値を全体敷地面積で除した値を提供する類型
・容積率:敷地の加重平均
・建ぺい率:敷地の加重平均

【グループ③】
耐火建築物などまたは準耐火建築物などの建物について、建物の位置にかかわらず、敷地全体を防火地域または準防火地域ともみなす類型
・防火地域の内外:防火地域(ただし建物が耐火建築物などである場合)
・準防火地域の内外:準防火地域(ただし建物が準耐火建築物などである場合)

【グループ④】
建物の部分が属する用途地域の規定が建物の部分ごとに適用される類型
・外壁後退距離:建物が属する地域
・高さ制限:建物が属する地域
・道路斜線:建物が属する地域
・隣地斜線:建物が属する地域
・北側斜線:建物が属する地域
・日影規制:建物が属する地域、建物の影が生じる地域

【グループ⑤】
建物の位置から、建物が属する用途地域の規定が厳しい方を建物全部に適用する類型(ただし、建物が防火壁で区画されている場合は、それぞれの地域の規定が適用されます)
・防火地域・準防火地域:建物が属する地域の厳しい方の規定

終わりに

今回は、不動産売買に係る行政法規のうち建築基準法の法令に基づく制限について、お話し致しました。

建築基準法の定めには、用語の定義や各種手続きや罰則等が定められた規定と、建築物の具体的な基準を定めた規定があります。
建築物の具体的な基準として、個別の部位のあり方を規律し、人々の安全性の確保を図るものと、都市計画と相まって、計画的な都市づくりの実現に資するものがあります。
様々な規制があることから、購入を希望する顧客が、希望する建物を建築できるかどうか、建築物の用途や構造、規模などを踏まえて、現実の法規制が一致しているかどうかを調査する必要があります。

次回は、都市計画法と建築基準法の法令が互いに関わる制限について、取り上げる予定です。