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不動産売買に係る都市計画法の法令に基づく制限

都市計画法の政令に基づく制限
不動産については、関連する行政法規の種類が多く、不動産を使用、収益、処分するうえでの公法上の制限(宅地建物に対する現状変更の禁止、建築制限や利用制限等)が課せられることがあります。
このような場合に、不動産に関する公法上の制限について、買主等が知らないまま、または十分に理解しないまま取引した場合には、買主がその契約目的を達成することができないなど、不測の損害を被ることにもなりかねません。

そのため、宅地建物取引業者は、宅建業法35条1項2号で、「都市計画法(略して「都計法」とも言われます。)、建築基準法(略して「建基法」とも言われます。)その他の法令に基づく制限で宅地建物取引業法施行令で定めるものに関する事項の概要」について、説明することが義務付けられています。

不動産を売却する際には、関連する公法上の制限によってどのような影響が考えられるか、売主にも理解することが求められます。
今回は、不動産売買に係る行政法規のうち都市計画法の法令に基づく制限について、お話し致します。

都市計画の区域区分

都市計画法では、区域をまず大きく、都市計画区域(都市計画を定める対象となる場所)とそれ以外である都市計画区域外に分けています。
そしてそのうえで、さらに区域を細分化する構成になっています。

市街化区域

市街化区域は、既に市街地を形成している区域(既成市街地)と、今後概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とで構成されています。

市街化調整区域

市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域です。
市街化調整区域では、市街化を抑制するという観点から、農地や森林を守ることに重点が置かれ、開発行為の許可を得た場合等を除き、原則として、建築物の新築、改築、用途変更、第一種特定工作物の新設を建築することはできません。

そのため、市街化調整区域内の不動産を取り扱う場合は、買主が建築しようとする建物を建築できないという事態に陥る可能性があります。
必ず役所等で建物の建築が可能かどうか、建築できる建物の種類、規模等について確認を行わなければなりません。

都市計画法34条は、市街化調整区域内で許容される開発行為、いわゆる立地基準を定めており、かかる基準に合致しないと許可を受けることができません。

区域区分のされていない区域(非線引区域)

非線引区域は、都市計画区域内で市街化区域と市街化調整区域との区分(線引き)が定められていない区域です。
非線引区域では、交通施設網等の整備が進み、全国的に積極的な開発傾向がみられます。

すべての都市計画区域には、都市計画の目標を定め、土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する主要な都市計画の方針であるマスタープランが策定され、市街化区域と市街化調整区域と区分して定める線引きを行うか否かは、原則として、都道府県が決定します。
そのため、都市計画区域は、都道府県の決定に伴って線引きを行うことにより、市街化区域および市街化調整区域に区分けされるか、または線引きを行わない非線引区域となるか、いずれかになります。

準都市計画区域

準都市計画区域は、都市計画区域以外の区域のうち、積極的な整備または開発を行う必要はないものの、一定の開発行為、建築行為等が現に行われ、または行われると見込まれる区域を含む一定の区域であって、そのまま土地利用を整序する事なく放置すれば、将来における都市としての整備、開発および保全に支障が生じる恐れがあると認められる区域について、都道府県が定める区域です。
準都市計画区域と定められた場合には、用途地域や風致地区等の土地利用の整序のために必要な都市計画を定めることができます。

都市計画施設

都市計画施設とは、都市計画において、道路、都市高速道路公園および下水道などの都市での生活や都市機能の維持に必要な施設など、都市施設として決定されたものをいいます。
その代表的なものは都市計画道路です。
都市計画道路の予定区域内における建築制限は、進捗状況に応じて後述のとおりとなります。
また、一定の面積以上の場合は、公有地の拡大の推進に関する法律の適用があります。

計画決定以後の建築制限

都市計画施設の区域内において建築物を建築する場合、都道府県知事等の許可が必要となります。
都市計画法53条に基づく許可の申請があった場合、次の1ないし3のいずれかに該当するときは、都道府県知事等は、許可をしなければならないとされています。
1. 都市計画施設に関する都市計画に適合した建築物であるとき
2. 都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、その立体的な範囲内において行われ、都市計画施設の整備に著しい支障を及ぼす恐れがない建築物であるとき
3. 次のいずれにも該当し、かつ容易に移転し、または除去できるものであるとき
(1) 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと
(2) 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること

なお、都市計画事業の施行として行う行為、非常災害のため必要な応急措置として行う行為、または階数が2以下で、かつ、地階を有しない木造の建築物の改築または移転など、都市計画法53条各号に定める各行為については、都道府県知事の許可は不要です。

事業決定後の建築制限

事業認可等の告示があった後は、都市計画事業の施行の障害となるおそれのある土地の形質の変更、建築物の建築、その他工作物の建設、または政令で定める移動の容易でない物件の設置、または堆積を行おうとする場合は、都道府県知事の許可が必要となります。
事業認可等がされているか、確認しましょう。

また、事業認可等された場合には、市町村長は事業地を表示する図面、設計の概要を表示する図書等の写しを、当該市町村の事務所において、公衆の縦覧に供さなければならないとされています。

そのため、役所にてそれらの図面資料等を入手して、対象不動産の利用に係る障害影響および制限の内容等を確認しましょう。

対象不動産の一部に都市計画道路が含まれているような場合には、どの部分にどれくらいの面積が計画に含まれるか確認する必要があります。
都市計画課等の関係先で、図面上でその位置を明示してもらうことが望ましいでしょう。
対象不動産自体に都市計画道路が含まれていない場合でも、近くに計画がある場合や、交通量の多い自動車、専用道路など、対象不動産への影響が多大であると予想されないか確認しておくことが望ましいでしょう。

都市計画道路以外の道路計画

地方公共団体において、地区計画により独自の道路計画を設けている場合があります。
このような独自の道路計画は、都市計画図には記載されていないため、見落としがちであり、注意が必要です。

また、地区計画による道路計画のほかにも、防災、安全上の観点から、生活幹線道路、主要生活道路、地先道路など呼称整備方針は様々ですが、地方公共団体によっては、都市計画道路を補完する目的で整備を行っている道路があります。
この場合、通常建築制限等は課せられないものの、道路予定区域に指定されて、道路法の制限を受ける可能性もあります。

市街地開発事業

市街地開発事業には、防災街区整備事業や市街地再開発事業、都市開発事業など、様々な種類のものがあります。

その他都市計画法に基づく制限

都市計画法に基づく制限には、その他にも様々な種類の制限があります。

開発行為の許可

都市計画法における開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいうとされています。
ここでいう区画の変更とは、建築物、特定工作物の利用に付随した区画として、道路、生垣等による物理的な土地の区分を変更することをいい、形質の変更とは、切土、盛土などによる土地の物理的な形状の変更と、農地等を宅地に変更するような利用上の性質の変更をいいます。

都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする場合は、原則として事前に都道府県知事(または政令指定都市等の長)の許可を受けなければなりません。
また、都市計画区域および準都市計画区域以外の区域において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする場合も同じです。

なお、政令や条例で定める規模未満の開発行為等の場合および政令で定める建築物等の用に供する開発行為等については、許可を受ける必要はありません。

開発行為の許可を受けた工事の変更の許可

開発許可を受けた者が、都市計画法30条1項各号に掲げる開発許可申請書記載事項の工事計画を変更しようとする場合には、政令で定める軽微な変更をしようとする場合などを除き、都道府県知事の許可を受けなければなりません。

用途地域の定められていない土地の区域における開発、行為に関して、指定された建ぺい率等の制限に違反する建築の禁止

都道府県知事は、用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について、開発許可をする場合において必要があると認めるときは、建築物の建ぺい率、高さ、壁面の位置、その他建築物の敷地、構造および設備に関する制限を定めることができ、原則としてこれに反する建築はできません。
なお、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めません。

ただし、都道府県知事が当該区域およびその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可したときは、この限りではありません。

開発許可を受けた土地における建築等の制限

開発許可を受けた開発区域内においては、工事完了公示があった後は、原則として、当該開発許可に係る予定建築物以外の建築物等の建築等はできません。

開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限

市街化調整区域内のうち、開発許可を受けた区域(開発区域)以外では、市街化を抑制する必要から、原則として、都道府県知事の許可を受けなければ、建築物の新築、改築、用途変更または第一種特定工作物の新設等はできません。

田園住居地域内の農地における建築等の制限

田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定められる地域です。
田園住居地域内の農地の区域内において、土地の形質の変更、建築物の建築、その他工作物の建設、または土石その他の政令で定める物件の堆積を行おうとする場合は、原則として市町村長の許可を受けなければなりません。

市街地開発事業等予定区域内における建築等の制限

市街地開発事業等予定区域に関する都市計画に定められた区域内において、土地の形質の変更、または建築物の建築その他工作物の建設を行う場合は、原則として都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

市街地開発事業等予定区域内における施工予定者による土地建物等の先買いに伴う土地建物等の有償譲渡についての制限

市街地開発事業等予定区域の都市計画決定の告示があったときは、施工予定者は、速やかに土地建物等の先買いの告示を行います。

この告示の日の翌日から起算して10日を経過した後に、市街地開発事業等予定区域内の土地建物等を有償で譲渡する場合は、原則として、一定の事項を書面により施工予定者に届け出なければなりません。
この届け出がなされた場合、施工予定者は、届出後30日以内の期間内であれば、当該土地建物等を届出書記載の土地建物等の予定対価の額で買い取ることができ、届出者は、施工予定者から買い取らない旨の通知がない限りは、届出後30日間はその土地建物等を譲渡することができません。

都市計画施設の区域内・市街地開発事業の施行区域内における建築の許可

都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において、建築物の建築を行う場合は、原則として、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

施工予定者が定められている都市計画施設の区域等内においても、市街地開発事業等予定区域内における制限等の建築等の制限と同様です。

市街地開発事業等の事業予定における都道府県知事等による土地の先買いに伴う土地の有償譲渡についての制限

市街地開発事業等に関する都市計画決定の告示があったときは、都道府県知事等(または届出の相手型として公告があったもの)は速やかに土地の先買いについて公告を行います。

この公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に事業予定地内の土地を有償で譲渡を行う場合は、原則として、一定の事項を書面により都道府県知事等に届け出なければなりません。
この届出がなされた場合、 都道府県知事が、当該届出者に対して、当該土地を買い取る旨の通知をしたときは、都道府県知事と売買契約が成立したものとみなされます。
また、届出者は、届出後30日間はその土地を譲渡することができません。

施工予定者が定められている都市計画施設の区域等内においても、市街地開発事業等予定区域内における制限等の建築等の制限と同様です。

風致地区内における建築等の規制

風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制を定めることができるとされています。

地区計画の区域内における建築等の届出

地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築その他政令で定める行為を行う場合は、原則として、 その行為に着手する日の30日前までに、一定の事項を市町村長に届け出なければなりません。
また、届出事項を変更する場合も同様です。

都市計画事業の事業地内における建築の制限

都市計画事業の認可等の告示があった後は、都市計画事業地内において、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある次の行為を行う場合は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
1. 都市計画事業の施行の障害となる恐れがある土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設
2. 政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積

都市計画事業の事業内内における施工者による土地建物等の先買い

都市計画事業の認可等の告示があったときは、施工者は、土地建物等の先買いについて公告を行います。
この公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に、都市計画事業の事業地内の土地建物等を有償で譲渡を行う場合は、原則として、一定の事項を書面により施工者に届け出なければなりません。
この届出をした場合には、届出後30日間はその土地建物等を譲渡することができません。

終わりに

今回は、不動産売買に係る行政法規のうち都市計画法の法令に基づく制限について、お話し致しました。

都市計画法では、冒頭の方で先述しましたとおり、区域をまず大きく、都市計画区域(都市計画を定める対象となる場所)とそれ以外である都市計画区域外に分けています。
そしてそのうえで、さらに区域を細分化する構成になっています。
その構成のため、不動産について関連する行政法規の中でも、都市計画法の法令は最初に考慮すべき法令といえるでしょう。
都市計画法を調べていただくことで、対象不動産の地域が今後どのようになっていくか、想像してみると良いでしょう。

次回は、不動産売買に係る行政法規のうち建築基準法の法令に基づく制限について、取り上げる予定です。