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不動産売買契約の前に行われる重要事項説明の趣旨

重要事項説明とは
不動産売却の活動を行い、所有するマンションや土地、戸建などの不動産の買主が決まりましたら、不動産売買契約を締結いただきます。
その不動産売買契約の前に、不動産会社である宅地建物取引業者は、取引を行うに際し、重要な事項について説明を行わなければなりません。

この重要事項説明は、宅地建物取引業者に対して説明を義務付けている事項があり、それに基づき説明を行いますが、取引事情等によって買主等が契約を締結すべきかどうかを判断するのに必要な情報などを加えて適切に説明を行う必要があります。
重要事項説明に取り組む姿勢こそ、その不動産業者の買主や売主に対する姿勢を表しているといってもよいでしょう。

重要事項説明で説明される内容は決められておりますが、取引の安全性の向上や、透明で公正な取引によってトラブルや紛争を未然防止することを目的として行われる、重要事項説明の趣旨を理解いただくことが先決です。
今回は、不動産売買契約の前に行われる重要事項説明の趣旨について、お話し致します。

不動産売買取引の重要事項説明の意義

宅地建物取引業法(「宅建業法」といいます。)31条では、 宅地建物取引業者(以下「宅建業者」といいます。)が取引の関係者に対し、 信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならないことを定めています。
これは、宅建業者の信義誠実の原則を定めたものであり、具体的には、宅建業者は、宅地建物取引に関する調査義務、説明義務を負います。

不動産取引にあたっての不測の損害や紛争の発生を防止するためには、不動産取引の対象者が、対象不動産および取引条件等の重要な事項について、十分に調査および確認を行ない、これらを正確に理解したうえで売買契約等を締結することが非常に重要です。

しかしながら、一般消費者が不動産取引の当事者となる場合には、取引の対象物である宅地建物に関する専門的知識、取引に関する法律的知識や経験が乏しく、また、宅地建物を自力で調査するだけの能力が不足していることが多いため、宅建業者に媒介を依頼するのが通例です。

このように、宅建業者は、購入者等に対して取引物件、取引条件等に関する正確な情報を調査(調査義務)したうえで、積極的にそれらの情報を提供して適切に説明する(説明義務)ことで、購入者等がこれらを十分に理解して契約締結の意思決定ができるようにすることにより、取引紛争を予防し、宅地建物の取引の公正を確保するという役割を果たすことが期待されています。

重要事項説明をすべき事項

宅建業者に対して説明を義務付けている重要な事項は、宅建業法、宅地建物取引業法施行令および宅地建物取引業法施行規則に定められています。
また、これらに加えて、宅建業法の解釈・運用に関して国が定めた包括的なガイドラインである「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方について」(以下「宅建業法の解釈 運用の考え方」といいます。)において、詳細な事項が定められています。

なお、宅建業法35条は、あくまで、宅建業者が説明すべき事項のうち最小限度の重要事項を定型化して列挙しているにすぎません。
そのため、取引事情等によっては、それ以外にも買主等が契約を締結するかどうかを判断するのに影響を与える重要事項があれば、宅建業者は、調査のうえ説明すべき義務を負います。

宅建業法の解釈・運用の考え方

宅建業法35条1項関係から、2つ取り上げてお話し致します。
宅地建物取業者は、重要事項の説明に先立ち、重要事項の説明を受けようとする者に対して、あらかじめ重要事項説明の構成や各項目の留意点について理解を深めるよう、重要事項の全体像について書面を交付等して説明することが望ましい、つまり事前に重要事項を説明することを勧めています。

また、本項各項に掲げる事項は、宅地建物取引業者がその相手方または依頼者に説明すべき事項のうち最小限の事項を規定したものであり、これらの事項以外にも場合によっては説明を要する重要事項があり得ます。
重要事項の説明は、説明を受けるものが理解しやすい場面で分かりやすく説明することが望ましく、取引物件に直接関係する事項であるため取引物件を見ながら説明する方が相手方の理解を深めることができると思われる事項については、重要事項の全体像を示しながら取引物件の現場で説明することが望ましいとされています。
ただし、このような場合でも、説明を受ける者が重要事項全体を十分把握できるよう、従来どおり契約の締結までの間に改めて宅地建物取引士が重要事項全体の説明をすることとされています。

重要事項説明の方法

宅建業法では、重要事項説明を行う者や重要事項説明すべき相手、重要事項説明する時期、重要事項説明の義務違反について、規定しています。

重要事項説明を行う者

宅建業法35条では、宅建業者(売主業者、交換業者、代理業者、媒介業者)に対し、取引の対象となる不動産に関する重要な事項等について、宅地建物取引士に説明させなければならないと定めています。
つまり、宅地建物取引士以外の者が重要事項の説明を行っても、重要事項の説明義務を果たしたことにはなりません。

また、複数の宅建業者が取引に関与する場合には、全ての宅建業者がそれぞれ重要事項の説明義務を負うことになります。
売主と買主双方がそれぞれ別の宅建業者に媒介を依頼して売買契約が成立するような場合にも各宅建業者が説明義務を負うものと解されていますが、取引実務上、いずれかの宅建業者が代表して行えば足り、それぞれが同じ内容の重要事項を説明書の交付・説明を重複して成す必要はありません。

ただし、代表して重要事項説明を実施した宅建業者以外の宅建業者の説明義務を免除するものではなく、説明義務違反があった場合には、買主等は、いずれの宅建業者に対しても責任追及をすることができます。

重要事項説明をすべき相手

宅建業者が重要事項を説明すべき相手方は、買主となる者(取得しようとする者)です。
義務付けられてはおりませんが、近年では、売主側への重要事項の説明内容の確認を得ることを目的として、売主に対しても重要事項の説明を行う形をとっていることが多いです。

なお、宅建業者が買主の場合は、重要事項を記載した書面を交付することで足ります(宅建業法35条6項)。

重要事項説明をする時期

宅建業法35条では、重要事項の説明をすべき時期を「契約が成立するまでの間」と規定しています。

重要事項の説明は、買主等が契約締結するか否かの判断をすることができるように取引物件や取引条件等に関する重要な情報を正確、かつわかりやすく提供して契約締結後における紛争発生を未然に防止することを目的に行うものですから、実務では目的物件が概ね特定された段階で実施することが望ましいとされています。

重要事項説明の義務違反等の責任

宅建業法では、宅建業者に対し、宅地建物取引士に重要事項の説明を行わせるほかにも、宅地建物取引士の記名を義務付けています(宅建業法35条5項)。
なお、重要事項の説明内容については、宅建業者と宅地建物取引士の双方が責任を負います。

また、宅地建物取引士は、重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対して、宅地建物取引士証を提示しなければなりません(宅建業法35条4項)。

宅建業者および宅地建物取引士が説明義務等に違反した場合には、罰則があります。
この罰則は宅建業法による責任(公法上の責任)ですが、私法上でも対依頼者との関係で善良なる管理者としての注意義務(善管注意義務)を負い、その内容の1つとして重要事項の説明義務を負います。
その結果、宅建業者や宅地建物取引士が民法上の損害賠償責任を負うことがあります。

重要事項説明書の電磁的方法による提供およびITを活用した重要事項説明

かつては、重要事項説明を行うにあたっては、宅地建物取引士が買主と直接面会し、重要事項を記載した書面を交付したうえ、重要事項説明書の内容を順次説明するという対面方法で行われることが必要とされていました。

もっとも、今般では、令和4年5月18日施行された宅建業法の改正に伴い、重要事項説明書の電磁的方法による提供およびITを活用した重要事項説明(いわゆるIT重説)が可能となりました。

重要事項説明書の電磁的方法による提供とは、重要事項説明書について紙に代えて、電子的に作成した書面を電子メールやWebからのダウンロード形式等を活用して電磁的方法により提供することを指します。
また、IT重説とは、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明を指します。
なお、IT重説を実施する場合、パソコンやテレビ、タブレット等の端末の画像を利用して、対面と同様に説明を受け、あるいは質問を行える環境が必要となります。

重要事項説明書の電磁的方法による提供およびITを活用した重要事項説明を実施する際のルールや留意点等については、「重要事項説明書の電磁的方法による提供およびITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課 令和4年4月作成)に定められています。

参考:ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について【国土交通省】

終わりに

今回は、不動産売買契約の前に行われる重要事項説明について、お話し致しました。

先述しましたとおり、宅建業者に対して説明を義務付けている重要な事項は、宅建業法、宅地建物取引業法施行令および宅地建物取引業法施行規則に定められています。
しかし宅建業法35条は、あくまで、宅建業者が説明すべき事項のうち最小限度の重要事項を定型化して列挙しているにすぎません。
取引事情等によっては、決められた事項以外でも買主等が契約を締結するかどうかを判断するのに影響を与える重要事項があれば、調査のうえ説明すべきです。

しかし、一方で、大量の事項を盛り込んで説明を行う場合は注意が必要です。
一般消費者の方が、一度の説明で理解・注意できる事項には限りがあると考えるべきでしょう。

どのように説明を行うべきか、宅建業者としても判断は難しいものですが、重要事項説明は、宅建業者が、購入者等に対して取引物件、取引条件等に関する正確な情報を調査(調査義務)したうえで、積極的にそれらの情報を提供して適切に説明する(説明義務)ことで、購入者等がこれらを十分に理解して契約締結の意思決定ができるようにすることにより、取引紛争を予防し、宅地建物の取引の公正を確保するという役割を果たすことが期待されていることを、忘れてはいけないでしょう。