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不動産売却の注意事項・地盤調査や地中埋設物、土壌汚染

土地の不具合とは
前回不動産売却の注意事項として、契約不適合責任を取り上げました。
契約し、引渡し後のトラブルを避けるためには、その趣旨を理解し備えておくことが大切です。
契約不適合責任は、土地および建物が対象となりますが、土地の場合は建物とは異なり、契約不適合の種類を限定していないケースが多く、売主は、すべての契約不適合について責任を負うことになります。
買主保護の重要性は、これからより高まると考えられます。

具体的にどのようなケースについて備えておくべきでしょうか。
今回は、土地に関する不具合として代表的な地盤調査や地中埋設物、土壌汚染について、お話し致します。

物件状況報告書

不動産売買契約では、売主が認識している土地の状況や通常の注意をもってすれば知りえる土地の状況について、売主は、買主に、告知しなければなりません。
トラブル防止や説明義務違反に問われないようにするため、売主が知っている事実を、物件状況報告書へ記入して説明する必要があります。

1つは、物件の状況に関する事項があります。
たとえば、「境界について」、「塀・フェンス・擁壁について」、「越境について」、「地盤の沈下、軟弱等」、「地中埋設物」、「土壌汚染等に関する情報」、「電波障害」、「浸水等の被害」、「近隣の建築計画」、「騒音・振動・臭気等」、「売買等に影響を及ぼすと思われる周辺施設」、「売買物件に影響を及ぼすと思われる過去に起きた事件・事故等」、「近隣の申し合わせ事項等」があります。
ほかには、売買物件に関する資料に関する事項、たとえば「前所有者から引き継いだ資料」があります。

先述の項目には、適切な裏付け調査を行う必要があるものがあります。
その中でも、専門機関としての重要性が高まっているものが、「地盤の沈下、軟弱等」、「地中埋設物」、「土壌汚染等に関する情報」に関する事項です。

地盤調査

地盤は建物を支える基盤となるものであって、例えば土地が谷底や低地、中小河川の流域等にあって地盤が軟弱な場合には、不同沈下が発生するなど、建物の存立に深刻な影響を及ぼす可能性があることから、地盤に関する不具合は極めて重要です。
また、土地が盛土造成地の場合には、軟弱地盤となることもあるため、注意が必要です。

なお、不同沈下とは、敷地の一部のみが沈下したり、敷地の沈下速度が部分ごとに異なったりするような場合には、地盤に追随して建物が不揃いに沈下を起こす(傾く)ことがあります。
このような沈下を不同沈下といいます。
建物が水平に沈下するのではなく、不同沈下する場合は、その基礎や建物の構造を支える部材に、不同沈下に伴う歪みが生じることになり、大きなダメージが生じることになります。
将来的には建物の倒壊を招く危険があり、その資産価値へ大きな影響があります。
不同沈下が生じている場合は、不同沈下の危険の有無を専門機関へ確認するなどの対応が必要でしょう。

土地ががけ地等にある場合には、大雨等による土砂災害や地すべり等の自然災害の発生の可能性もあります。
特に、土地の所在地ががけ地の場合は、「急傾斜崩壊危険区域」や「地すべり防止区域」に指定されているケースが多いでしょう。
役所の土地計画課などで前記区域に含まれていないか確認を行うとともに、建築制限の有無を確認しましょう。

なお、軟弱な地盤であっても、たとえば、地盤補強工事の実施や強固な地盤である支持層まで杭を打ち込むこと等によって、建物を建築することができる場合もあります。
そのため、軟弱地盤であるからといって、直ちに建物建築に不向きな物件であると断言するのではなく、建物建築の発注を予定している施工業者に対して、買主が希望する建物を軟弱地盤上に建てる場合の概算額について確認してもらい、買主に慎重に検討してもらうことが必要でしょう。

参考:地盤サポートマップ【JAPAN HOME SHIELD】

専門家による地盤調査

専門家による地盤調査を行う場合、その調査には相当程度の費用を要します。
誰が調査依頼をして、誰がその調査費用を負担するか、また、仮に地盤調査の結果、軟弱地盤であることが判明した場合の取扱い等について、契約前に売主・買主双方が確認しておく必要があります。

戸建住宅を想定した地盤調査の方法として一般的なものは、スクリューウエイト貫入試験方法があります。
メリットとして、調査時間が半日程度と短く、比較的調査費用が安価であることです。
また、狭小地や傾斜地でも調査が可能です。
スクリューウエイト貫入試験方法は、その沈み方から地盤の硬軟や閉まり具合を調査するものであり、地盤の固さの指標となる換算N値を調べることができます。

スクリューウエイト貫入試験方法のほかには、ボーリング調査や平板載荷試験(へいばんさいかしけん)等があります。
ボーリング調査は、主にマンションやビル建築を行う際に、固い支持基盤を探す目的で行われるものです。
平板載荷試験は、地耐力を導き出すための調査方法です。

なお、地耐力とは、それぞれの地盤が持つ固有の強さを数値化したものです。
地盤には、重いものに耐えられる地盤もあれば、そうでない地盤もあり、地耐力を参考に、土地上に建築する建物の構造及び基礎の仕様(ベタ基礎とするか、布基礎とするか等)を決定する必要があります。
そのため、地盤調査にあたっては、換算N値に加えて地耐力も調べる必要があります。
地耐力を正式に調べるのであれば、平板載荷試験を実施する必要がありますが、実務では、平板載荷試験の実施に代えて、スクリューウエイト貫入試験方法により得られた換算N値と推定される地耐力を推定する方法が採られています。

地中埋設物

売買対象物である土地の地中に、たとえば、従前の建物の基礎が残置されている場合や、土地の造成にあたって建築廃材等の産業廃棄物が埋設されている場合、従前に利用されていた井戸や浄化槽が埋設されている場合など、後日に地中埋設物が発見されるケースがあります。

地中埋設物は、たとえば、埋設物が地表に露出していたり、一見して地中埋設物が存在する可能性が窺われるような場合は別ですが、私たち宅建業者としての物件調査の範囲であるといえないケースもあります。

しかし、従前の建物の基礎が残置されている場合であれば、建物の閉鎖謄本を取得することができれば、以前建築されていた建物の構造や規模を調べることができ、基礎が残置されている可能性を推測することはできるかもしれません。
また、土地の造成にあたって建築廃材等の産業廃棄物が埋設されている場合は、従前の土地方や沼地等で、土地の造成が行われているような場合は、産業廃棄物の埋設を伴う造成がなされている可能性があります。
現実に産業廃棄物の埋設を伴う造成がなされているか否かについて確認する有効な手立ては思いつきませんが、売主や以前から居住している近隣住民に従前の土地の状況を聴取できるのであれば、それらを踏まえて調査を行うことが可能でしょう。

土壌汚染対策

土壌汚染対策法は、「土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする」法律です。

売買契約にあたって、土壌汚染対策法に留意する必要があり、特に、売買契約締結前に土壌汚染の恐れがあることが判明している場合は、区域の指定の可能性を検討しつつ、状況に応じて、売買契約の解除に関する特約や、土壌汚染調査を誰が行うか、その費用負担に関する特約などを定めておく必要があります。

土壌汚染の調査方法には、物件調査と資料調査があります。

物件調査とは、主として実際に現地で確認する調査手法のことをいい、具体的には、当該土地が指定区域に指定されているか否かを台帳で確認するとともに、土壌、地下水汚染の可能性がある場合には現地調査を実施します。
現地調査の際には、現在の所有者、占有者、近隣住民等から、現在および過去の土地利用の状況に関するヒアリングを行います。

また、資料調査とは、資料等から土壌汚染の可能性を確認する調査手法をいい、具体的には、土壌、地下水汚染の可能性がある場合、地図、登記簿、郷土史、航空写真、自治体の環境資料等による資料調査を実施します。
調査の結果、土壌、地下水汚染の恐れがある場合は、事前に指定調査機関などの調査機関に土壌調査を依頼することが望ましいでしょう。

参考:土壌汚染対策法【e-Gov 法律検索】

参考:パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」【環境省】

参考:土壌汚染対策制度【大阪府】

終わりに

今回は、土地に関する不具合として、特に代表的な地盤調査や地中埋設物、土壌汚染について、お話し致しました。

地盤調査や地中埋設物、土壌汚染については、建築土木業界だけでなく、今後は不動産業界の土地流通でも広く認知されていくことになるでしょう。
人の住む環境を調査改善することは、売主と買主の課題に応えるものであり、ビジネスを円滑にして価値の最大化を図るものです。

売主にとっては、調査を行うことによって不都合な事実が明らかになるかもしれないことを不安視される方が多いのではないでしょうか。
しかし、それは買主にとっても同じことです。
しかし、その調査費用が安価でないことは事実であり、売買価格とのバランスもあるでしょう。
売買価格が安い場合は調査費用を買主が負う可能性が高く、安全な取引を行う選択肢が狭まるかもしれません。
理想と現実の問題をどのようにして対処すべきか、我々にも問われています。