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不動産売買取引時の固定資産税と都市計画税の清算について

固定資産税と都市計画税の清算には注意が必要です
不動産売買の取引では、引渡し完了日に合わせて固定資産税と都市計画税の清算をします。
清算方法は個別に取り決めを行いますが、基本となる考え方や慣習があります。
今回は、固定資産税と都市計画税など公租公課等の清算方法について、お話し致します。

固定資産税と都市計画税の「清算方法」

固定資産税と都市計画税の清算は不動産売買の契約に基づくものであって、固定資産税と都市計画税の納税義務とは関係がありません。
固定資産税と都市計画税は、賦課期日(毎年1月1日)時点で、固定資産の所有者が、その資産価値に応じて算定された税額を、固定資産の所在する市町村に納めることとなっています。
したがって、売主と買主で固定資産税を按分して負担するためには、その按分方法を、お互いに話しあって取り決めなければなりません。

公租公課等の清算として、不動産売買の契約書には、例えば下記のように書かれています。

「売主、買主は、本物件から生ずる収益または本物件に対して賦課される固定資産税、都市計画税等の公租公課ならびに管理費および修繕積立金等、ガス、水道、電気料金および各種負担金等の諸負担について、引渡完了日の前日までの分を売主の収益または負担とし、引渡完了日以降の分を買主の収益または負担として、引渡完了日において清算します。なお、公租公課の起算日は表記公租公課の清算起算日とし、売主に管理費および修繕積立金等の滞納があった場合にはその額を売買代金額から控除の上、買主においてこれを支払うこととします。」

一般的に不動産売買契約で、不動産を引き渡す期日を決めます。
売買契約後、売主は、期日までに引き渡す準備を行います。
一方で、買主は、期日までに売買代金等の準備を行います。
売主と買主が、それぞれ取引ができる準備が整い次第、買主は売主に対して代金を支払い、売主は買主に対して不動産を引き渡します。
上記の条文では、その「引渡日の前日までの分」が、売主の収益もしくは負担とされます。
一方で、その「引渡日を含む、以降の分」が、買主の収益もしくは負担とされます。
これが広く行われている方法であり、慣習です。

ただし、必ずしも上記のように清算をしなければならないわけではありません。
たとえば、売主と買主の合意があれば、取引を行う年度分の固定資産税と都市計画税は、売主(もしくは買主)が全額負担するという取り決めを行っても構いません。
どのように清算をするかは、個別の事情を考慮して、お互いに話しあって取り決めればよいでしょう。

参考:固定資産税と都市計画税について【BLOG】

参考:大阪市固定資産税【大阪市】

固定資産税と都市計画税の「清算起算日」

固定資産税と都市計画税の清算を行うためには、起算日を決めておかなければなりません。
そもそも、固定資産税と都市計画税は、「いつからいつまでの期間」に対して課税するものではありません。
では、どのようにして清算の起算日を決めればよいのでしょうか。

例えば大阪市では、毎年4月上旬に大阪市税事務所(固定資産税グループ)から送られる納税通知書により、税額などが知らされます。
知らされた税額を、年4回(4月、7月、12月、翌年2月)に分けて納めていただくことになります(1年分をまとめて納めていただくことも可能です)。

そのため大阪では、上記の4回の支払いのタイミングを考慮して、4月1日から翌年3月31までの年度を1年間期間として考え、清算の起算日を4月1日としていることが多いです。
一方で、関東の不動産を対象として取引を行うときは、上記の4回の支払いのタイミングは考慮せず、清算の起算日を1月1日としていることが多いです。

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日(賦課期日)現在において、固定資産課税台帳に所有者として登録されている方に対して、その年の4月1日から始まる会計年度分の税として課税する年税です。
課税期日(1月1日)を基準にする考え方と、会計年度の開始日(4月1日)を基準にする考え方と、大きく2つありますが、先述しましたとおり固定資産税と都市計画税は、「いつからいつまでの期間」に対して課税するものではありません。
どちらを起算日として考えるかは、お互いに話しあって取り決めればよいでしょう。

大切なことは、起算日を決めておくことです。
起算日を決めておかなければ、下記のような事が発生することが考えられます。
下記の場合、どちらの主張が正しいとは言えません。

= 事例 =
1. 2022年3月、土地売買契約が成立し、2022年7月に決済・引渡しを完了。
“ところが、この契約で、固定資産税と都市計画税の納付分担について、物件の引渡しの日をもって区分すると定めただけで、起算日について定めがなかった。”

2. 買主は、固定資産税と都市計画税については、課税期間が賦課期日と同じ1月1日から12月31日までと考えており、物件の引渡しを受けた7月以降12月までの分は負担するが、翌年の1月1日から3月31日までの分(第4期分)は負担できないと主張。
一方、売主は、翌年の1月1日から3月31日までの分(第4期分)の税分担も、買主がすべきだと主張.
“両者の言い分は平行線を辿る。”

このようなことが起こらないように、固定資産税と都市計画税の起算日を決めておきましょう。

参考:固定資産税【大阪市】

参考:固定資産税はいつからいつまでの税なのか知りたい【西宮市】

新年度の固定資産税と都市計画税の税額が決定されていない場合

固定資産税は、市町村が毎年1月1日現在の土地、家屋等の固定資産の所有者に対し、固定資産税評価額をもとに課税する税金です。
市町村(および東京都)は、毎年3月31日までにすべての固定資産に対し価格を決定し、決定後、遅滞なく「固定資産税路線価」を公表することとなっています。
決定された価格に基づき、1月1日現在の土地、家屋等の固定資産の所有者に対し、固定資産税等を通知され、課税されるようになっています。

このことから、例えば2024年度の固定資産税は、2024年3月31日までは価格が決まっていないことが考えられます。
もし、2024年1月1日から2024年3月31日までに引き渡しを行う取引の場合、固定資産税と都市計画税はどのように清算すればよいでしょうか。

なお、清算の起算日を4月1日として取引をしている場合は難しいことはないように思われるかもしれません。
しかし、2024年の年度分、つまり2024年4月、同年7月、同年12月、翌年2月の4回にわたる固定資産税は、「2024年1月1日現在の土地、家屋等の固定資産の所有者」に対し、固定資産税等が通知され、課税されます。
2024年1月1日から2024年3月31日までに引き渡しを行う取引ですから、2024年4月以降は新所有者である買主が土地、家屋等を使用します。
それにも関わらず、売主は、2024年の年度分の固定資産税を納税しなければなりません。
これでは、売主に不満が生じるでしょう。

つまり、「起算日が4月1日」の場合で、「2024年1月1日から2024年3月31日までに引き渡し」を行うときは、固定資産税と都市計画税について、2つの問題について話しあって取り決めておかなければなりません。
1. 2024年1月1日から2024年3月31日までの清算方法について
2. 2024年4月1日から2025年3月31日までの清算方法について

2024年4月1日から2025年3月31日までの清算については、前年度である2023年度の固定資産税と都市計画税の価格を採用して行うことが一般的です。
しかし、これは一例であり、決まった方法はありません。
お互いに話しあって取り決めればよいでしょう。

参考:固定資産税評価額とは【BLOG】

固定資産税と都市計画税の「清算金に対する消費税」

固定資産税と都市計画税の清算金に関して、消費税が課税されるかどうかについてお話しします。

国税庁のホームページでは、下記のように説明されております。
「不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、または収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります。」

先述しましたとおり、固定資産税と都市計画税の清算は不動産売買の契約に基づくものであって、固定資産税と都市計画税の納税義務とは関係がありません。
固定資産税と都市計画税の清算金に関しては、売主と買主の利益調整のための金銭の授受であるため、消費税については売買代金と同じように取り扱うことになります。

売買代金について、売主が、法人、もしくは個人事業者で取引年度に消費税の課税事業者である場合、事業用の建物には消費税が課税されます。
上記に該当するときには、建物に相当する割合の固定資産税と都市計画税の清算金に対して、消費税が課税されることになります。
清算を行うときには、注意しながら、お互いに話しあって取り決めればよいでしょう。

※ 記事の内容は、掲載時点の法令・情報に基づいています。そのため、最新の法令や情報のご確認をお願い致します。
※ 税金の内容によっては、非税理士により行うことが禁止されている税理士業務に抵触する可能性があります。具体的なご相談は、必ず税理士や税務官公署等にお願い致します。

参考:未経過固定資産税等の取扱い【国税庁】

参考:事業用建物等を譲渡した場合の消費税【国税庁】

固定資産税と都市計画税の「税額の確認方法」

固定資産税と都市計画税の税額は、固定資産の所有者に対して送られる納税通知書に同封されている課税明細書をご覧ください。

また、各市町村には固定資産税台帳が保管されています。
対象の不動産がある市町村に対し、台帳に登録されている内容を証明する書面を請求することによって税額を確認することもできます。

大阪市では、固定資産の評価額が記載された「評価証明」と、固定資産の評価額・課税標準額・税額が記載された「公課証明」と2種類あります。
固定資産税と都市計画税の清算を行うことが目的であれば、固定資産の税額まで記載されている「公課証明」を取得される方が便利でしょう。
必要に応じて取得し、税額を確認してみましょう。

参考:固定資産評価証明書【大阪市】

参考:固定資産税【大阪市】

終わりに

今回は、「不動産売買取引時の固定資産税と都市計画税の清算」について、お話し致しました。

固定資産税と都市計画税の清算は不動産売買の契約に基づくものであって、固定資産税と都市計画税の納税義務とは関係がありません。
固定資産税と都市計画税の清算は売主と買主の利益調整のための金銭の授受であり、売買代金と同じように、売主と買主がお互いに話しあって取り決めなければなりません。

注意しなければならない点は、大きく3つあります。
1. 清算金の起算日
2. 清算の対象となる期間(対象となる年度)
3. 清算金が課税されるか否か

後にトラブルが起きないように、しっかり備えて取り決めを行いましょう。