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不動産に関する「地図」と「公図」および「地番」について

公図とは?

不動産売却を検討する際、まずは対象不動産について調査をします。

その最も重要な情報の1つが登記情報でしょう。

今回は、登記情報のうち「公図」について、お話し致します。

不動産登記について

登記情報は、法務局が保有している情報です。
なお、登記所と書かれているものもありますが、登記所とは登記事務などを行う国の行政機関のことをいい、法務局や地方法務局などを総称したものと考えてよいでしょう。

もともと不動産登記は、所有権などの権利関係を示すものに限られていました。

江戸時代、貢租は米による物納制度であり、生産者が納税義務者でした。
しかし、農作物の豊凶によって税収が変動するリスクがあったために、明治政府は安定した収入を確保することができるよう、土地の価値に見合った金銭を所有者に納めさせるという地租改正を行いました。

こうしてすべての土地に税金を賦課する地租という税制度が導入されましたが、これは国税であり、税務署に土地や家屋の課税台帳が備え付けられ管理されていました。
不動産の所有権を扱う登記事務と、不動産の価値から租税を扱う台帳事務は緊密な関係にあることから、一元管理されるようになります。

まず、地租が1947年(昭和22年)に国から地方へ移譲されて府県税となり、1950年(昭和25年)に固定資産税となって市町村税となります。
この時に、後述致しますが、土地台帳と土地台帳附属地図は、税務署から法務府(登記所)に移管されました。

そして1960年(昭和35年)に土地台帳法が廃止され、地籍情報は土地登記簿に一元化されました。
地図は、「地図」(「十七条地図」)を備え置くことになり、旧土地台帳附属地図は、「地図に準ずる図面」という規定を与えられ、まだ地図が「十七条地図」に置き換わっていない現状で、一定の役割を担っています。

こうして現在では、登記所(法務局や地方法務局など)で、所有権や地図(もしくは地図に準ずる図面)、土地や家屋を明らかにする資料となる地積測量図や建物図面などを取り扱うようになっています。

参考:土地をめぐる税の歴史~測量・地図とのかかわりあい~【国税庁】

公図とは?

法務局には、土地の位置や形状、地番、隣接地との境界などを確認することができる地図図面が備え付けてあります。

地図図面には、次の2種類があります。
(1)地図に準ずる図面
(2)地図
一般的には、どちらも区別することなく「公図」と呼びますが、2種類を区別する場合には、「(1)地図に準ずる図面」が公図にあたります。
なお、以下すべて「公図」として呼びます。

参考:不動産登記法 第十四条(地図等)【e-Govのサービス・法令検索】

不動産売却で使用する「地図に準ずる図面」とは?

公図(地図に準ずる図面)は、旧土地台帳付属地図とも呼ばれ、明治6年に始まる地租改正事業によって作成された野取絵図(のとりえず)(もしくは改租図ともいいます)をもとに、明治19年の地押調査(じおしちょうさ)によって改正された地押調査図が大半を占めています。
地押調査図は、一般に字図(あざず)、字切図(あざきりず)、字限図(あざかぎりず)などと呼ばれています。

これらは、明治22年制定の土地台帳規則によって、土地台帳付属地図としての位置づけがなされました。
当時、正本を税務署、副本を役場で保管していました。
その後、1950年(昭和25年)に行われた税制改正により、台帳事務が法務局へ移管されました。
それに伴い、付属地図も法務局へ引継ぎされました。

その後、1960年(昭和35年)登記簿と台帳の一元化により、土地台帳法が廃止されました。
その時点で、付属地図は法的根拠を失いましたが、1993年(平成5年)に不動産登記法17条に規定する地図が整備されるまでの間、地図に準ずる図面としての位置づけがなされ、現在でも登記事務に使用されています。

なお、2005年(平成17年)に施工された新しい不動産登記法によって、不動産登記法17条の条文が整理されて第14条となりました。
そのため、旧法17条に規定されていた地図は、現在では14条地図、もしくは法14条地図と呼ばれたりしています。

このような成り立ちから、これらの地図は100年以上も前に行われた測量に基づいています。
そのため、面積や距離、角度などについては、精度(正確性)が低いとされています。
ただし、境界線が直線であるかどうか、あるいは土地がどのように位置しているかについては、比較的精度(正確性)が担保されている場合もあり、後述する地図(地図に準ずる図面ではない地図)が備わっていない場合には資料として重要な役割を果たしています。

もともと、野取絵図(改租図)は、土地に番号を付けて、その図を和紙に、墨で手書きされていました。
その後、ポリフィルム状に改正されマイラー図面を使用されるようになり、現在ではコンピュータ化されて、管理・出力をされています。
全国の法務局に保管されている古い和紙公図(閉鎖された旧紙公図)も、コンピュータ化されるように登録作業が行われています。

参考:公図と現況のずれQ&A【国土交通省】

不動産売却で使用する「地図」とは?

地図とは、地籍調査の成果に基づいて作成される図面のことで、一定以上の精度(正確性)が担保された図面であるといえます。

なお、地籍調査とは、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。
地籍調査は自治事務として、市町村等の地方公共団体が中心となって実施されています。
市町村等により地籍調査が行われる場合には、関係地権者の立ち会い等を経て、地図が作成されます。
地籍調査事業は市町村等が実施するものであり、住民の費用負担はありません。

地籍調査は、昭和26年から行われており、その開始から既に半世紀以上が過ぎています。
しかしながら、令和3年度末時点において約半分の地域で調査が残っています。
地籍調査の状況は、国土交通省が公開している地籍調査状況マップでも確認ができます。
地籍調査は、どちらかと言えば地方では進捗率が高く、都市圏では進捗率が低いといえます。

法務局に地図が備え付けられるまでの間は、先述の「地図に準ずる図面(いわゆる公図)」が、地図に代わるものとして備え付けられています。

参考:地籍調査の概要【国土交通省】

参考:地籍状況調査マップ【国土交通省】

不動産売却で使用する「地番」とは?

公図には、一筆の土地ごとに番号が付せられています。
この番号は「地番」と呼ばれていますが、「地番」は私たちが日常使っている郵便が届く住所の番号とは異なっている場合があります。
では、この「地番」とはどのような番号でしょうか。

「地番」とは、法務局(登記所)が定めた住所のことです。
そして、日常使っている郵便が届く住所の番号は、住居表示に関する法律(住居表示法)により市町村が定めた住所にある番号のことで「住居表示番号」といいます。
「地番」と「住居表示番号」は、別の番号です。

地番について

地番は、住居表示が実施されていない地域でも付せられていますが、国有財産である国有地では登記がされたことがないため地番が付されません。

国有財産には、その性格により大きく行政財産と普通財産の2つに分類されます。
行政財産は、国が行政上の目的のために所有しているもので、庁舎や国有林野のように国がその事務や事業に直接使用するもの、または国道や国営公園のように国民が使用するものなどがあります。
皇居や御所など皇室用財産も行政財産に該当します。

普通財産は、行政財産以外の一切の国有財産のことをいいます。
普通財産は、特定の行政目的に直ちに用いられることのないもので、その多くは旧軍の財産であるとか、行政目的に使用しなくなった庁舎などの跡地、金銭の代わりに相続税として物納された土地、建物などです。
財務省(財務局等)で、これらの財産を公園、学校、公営住宅、福祉施設など公用、公共用の施設の用地として都道府県や市町村に売却したり、貸付けしたりしています。

公図の上で地番が付されていない国有地のことを白地といいますが、白地には長年経過することによって隣接する民有地に取り込まれてしまって、実態として民間建物の敷地になっている場合があります。
この白地の存在が不動産取引にあたって障害となるケースがあります。
売買の対象となる土地に白地が含まれている場合は、売買取引の前に、市町村に対して国有地払い下げの手続きを申請しなければならないことに注意しなければなりません。

また公図(地図に準ずる図面)には着色されている場合があり、赤線や青線と呼ばれることを耳にしたことがある方もあるでしょう。
各色は、次のような意味となります。
「赤」:「道路」
「青」:「水路」
「黄」:「田」
「薄茶」:「畑」
「黄緑」:「原野」

住居表示番号について

従来、住居の表示方法は、慣習的に、住んでいる町名と土地の番号である地番が用いられていました。
現在も、不動産登記における土地建物の所在地の表示だけではなく、戸籍における本籍地の表示等にも用いられています。

だんだんと市街地において急速な都市化現象が起こり土地の需要が高まり、土地の分筆、合筆が増加した結果、連坦する施設の地番が大きく飛ぶなどの現象が起こり、表示された所・番地によって住居等を訪ねあてることが困難になってきました。
郵便物や宅配便の配達に支障をきたすなど、行政事務や経済活動の障害となっていたのです。
そこで1962年(昭和37年)に住居表示に関する法律が制定されました。

なお、住居表示が実施されていない地域もあります。
どちらかというと、先述したような理由から市街地では住居表示が実施されています。
政令指定都市では、京都市は住居表示が実施されておりませんが、ほかの都市では実施されています。

公図の取得方法

公図は、法務局に行くか、もしくはインターネットを利用して取得することができます。

以前は対象不動産を管轄している法務局に行かなければ取得できませんでしたが、最近ではコンピュータ化が進んでおり、一部コンピュータ化されていない古い公図を除けば、管轄する法務局へ行く必要がなくなりました。

コンピュータ化によって、インターネットでも取得することができるようになりました。
インターネットで取得する場合は、登記情報提供サービスを利用します。
登記情報提供サービスを利用するためには、一般的には、あらかじめ一般財団法人民事法務協会と情報提供契約を結び、利用者識別番号(ID)とパスワードをもらわなければなりません。
ただし、一時利用という方法によって、その手続きを踏まずに利用することもできます。

住居表示が実施された地域では、所(住居表示)と地番が異なるため、住居表示の住所や番号では、公図を含む登記事項証明書や登記簿謄本等を請求しても、取得することはできません。
公図を含む登記事項証明書や登記簿謄本等を取得するときには、必ず地番を調べるようにしてください。

地番は、住居表示実施前の住所地番と一致する場合が多いため、旧住所を調べれば地番を明らかにすることができます。
ただし、住居表示の実施に伴い町名が変更されているときは、不動産の所在地は新しい町名に基づいて調べてください。
住宅地図に地番情報を重ね合わせた、住居表示地番対照地図(ブルーマップ)を活用することによって調べることもできます。
ブルーマップと言われる由来は、地番などの内容が青色で表示されているためのようです。

参考:登記情報提供サービス

終わりに

不動産を所有されている方には毎年固定資産税等の支払いがあり、目にされている納付書に日常使っている郵便が届く住所の番号とは異なる番号が表示されていることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。
なお、「〇丁目」の部分の数字は、地番では漢数字で表示されますが、住居表示ではアラビア数字で表示されます。

不動産を売却する際には、対象不動産の全体像を知るところから始まります。
住宅地図は多くがその実態や住居表示の番号に基づいたものから作成されているため、不動産売却で使用する公図とは様子が違うことに気づかれることでしょう。

法務局による調査を行う際には、地番を知る必要があることにご留意ください。
地番を確認する最もたしかな方法は、お持ちの登記識別情報、もしくは権利証を確認いただくことです。
もしくは、固定資産税台帳や納税通知書等をみて確認いただくこともできます。
不動産を売却する際には、法務局に備え付けられている地図を取得し、ぜひ全体像を俯瞰してみてください。